蓮香の部屋
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雅楽たちも明日に備えて、それぞれ自室に帰ろうとしていた。そんな中、おとなしいカグヤが珍しく口を開いた。
「蓮香の部屋見てみたい」
あまりに突拍子もない提案に雅楽たちの頭にはてなマークが浮かぶ。
「い、いやよ! 絶対に見せないわ、恥ずかしいし……。って、あれ? カグヤ、そんな流暢に喋れたかしら。いつも単語しか言えてなかったわよね」
「さっき急に言葉がスラスラ出てくるようになった。自分でも段々と自我が芽生え始めているのが分かる……。自分の部屋を自分らしくしたいって思うようになってきた。多分これが個性……」
「へー。ちゃんと個性があるんですねー」
「だからみんなの部屋を参考にする。つららの部屋も気になるけど、普段クールな蓮香の部屋が気になる。だから最初に見たい……」
「妾も気になるのお。蓮香は何故か自室を厳重にしておるし。守られれば守られるほど覗いてみたくなるというものじゃ」
「私も気になりますねー」
「い、いやよ! 自分の部屋見られるなんて恥ずかしいじゃない! 雅楽もそう思うでしょ?」
蓮香は訴えかけるような瞳で雅楽を見た。
蓮香のことを考えれば、彼女のことを庇うように反応してあげることが一番良いことなのは分かっていたのだが、雅楽も蓮香の部屋を見てみたいという気持ちがあり、その思いに嘘をつくことはできなかった。
「僕も見てみたい……かも」
「なんでよ!」
「決まりじゃの。これもカグヤの成長のためじゃ。早う見せるが良い。減るもんでもないし、いいであろう」
話は完全に蓮香の部屋を見るという方向で固まってしまった。蓮香は肩をガックリと下げている。相当嫌なようだ。
悪いことを言ってしまった、と雅楽は反省して、彼女に話しかけた。
「れ、蓮香。さっきはああ言っちゃったけど、嫌だったら見せなくていいんだよ?」
「いいわよ、別に! これもカグヤのためだと考えることにするわ!」
蓮香は少し怒りながら早歩きで自分の部屋へ向かった。四人はワクワクしながら、その後ろについている。
「蓮香の普段のイメージから考えると、結構質素な部屋っぽいですよねー」
つららは頭の後ろで手を組みながら、のほほんとそう言った。雅楽もつららと同じく、クールな蓮香の部屋は必要最小限のものと家族写真しか置いていなさそうな簡素な部屋だと考えていた。
そんな部屋を妄想されていると察した蓮香は「はあ」と、また大きなため息をついた。
「ここが私の部屋よ」
蓮香が自室を開けると、想像と全く違う部屋が広がっていた。
まず雅楽たちが思った感想は、「ピンク」だった。壁紙はピンク地に可愛らしいお花がペイントされていて、ベッドも棚も机も全てがピンク色で統一されていた。部屋の至る所に熊やウサギの人形が置いてあった。どれも丁寧に扱われていて、埃は一切なかった。
小学三年生の子供部屋。一言で表すならば、そんな表現が似合った。
普段冷静な蓮香のイメージとは違い、あまりにも女の子過ぎる部屋に全員絶句していた。
「だ、だから嫌だったのよ……! こんな可愛いものがたくさんある部屋なんて、私らしくないでしょ?」
「あ、あれでしょ? 小さい時の部屋をそのまま変えていないとか。そういうことでしょ」
雅楽は蓮香に助け舟を出した。雅楽の言う通り、昔の部屋のまま変えずにいるとなればこの部屋の可愛らしさも納得である。
「違うわよ! こういうのが好きなのよ! わざわざ言わせないで! 昔から性格の割に可愛いのが好きで、よくからかわれていたのよ」
「なるほどのう。蓮香の心の奥底に、女性らしさがあるのは感じ取っておったが、まさかここまでとは……」
千草は喋りながら鼻をつまんでいる。ピンク色の棚の上には、アロマスティックが置かれており、部屋中が胃に落ちるような甘ったるい匂いに包まれていた。元が猫の千草は嗅覚が鋭いため、それを敏感に感じすぎていた。
「で、でもすごい親しげもあって、可愛いと思うよ!」
「意外だった……。蓮香がこんなにふぁんしーな部屋を使ってるなんて。参考にする……」
「いつファンシーなんて言葉知ったのよ。いいわよ、フォローしなくて」
「もしかして寝巻きもピンクなの……?」
「そうよ」
今更恥ずかしいことなどない、といった様子で蓮香はパジャマもピンク色であることをカグヤに教えた。
見たことないので分からないが、蓮香のパジャマには花柄か、もしくは女児アニメのキャラクターがプリントされているのだろう。
「今、少し心を読んだのじゃが、パンツと乳バンドもピンクらしいぞ」
「こんなところで無駄に力を使わないでよ! あとブラを乳バンドっていうのもやめて」
「しかもパンツは毛糸のイチゴ柄じゃ」
「もうやめてってばぁあ!」
蓮香は艶やかな黒髪を両手で掻きむしると、そのままベッドに突っ伏した。一度に許容できる羞恥心の量を大幅に超えたようで、うめき声をあげている。頭からはシューと蒸気をあげていた。
「千草。それは流石に可哀想だよ。パンツとかブラとかの話するのは。一応、男の僕やつららもいるし。余計に恥ずかしくなっちゃうよ」
「今の雅楽殿の一言でまた羞恥心がましたの」
「ううう……」
「もう蓮香ちゃんは再起不能ですねー。今日は明日に向けて寝ましょー」
「ん。よく考えたら私は自分の部屋を持ってないから、他の人の部屋を見たところでなんの参考にもならなかった」
「じゃあなんで私はこんなに恥ずかしい目にあったのよ!」
彼女の声はピンクのベッドの中に吸収され、こもっていた。声は弱々しく、耳は真っ赤だ。
普段は大人びている蓮香だが、この時ばかりは年相応、もっといえば年下に見えた。
「しょうがないのう。明日には元通りで頼むぞ。ヒダル神を倒すのだからな」
「誰のせいでこうなっていると思ってるのよ。まあ、明日は心配しないで」
キリッとしている声だが、相変わらずベッドにうなだれている。
雅楽たちは各々自室へ戻ると、すぐに床についた。寺子屋の庭でカラスが一鳴き、わずかに花が揺れた。
作者の紫 凡愚と申します!
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