雅楽の覚醒......?
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「残りの半分は雅楽と千草に任せるわ。一応、あなたたちの修行だしね」
「千草はともかく、僕は何もできないよ!」
雅楽は涙目になりながら訴えた。たくさんのあやかしを見て、すでに気が滅入っていた。
一反木綿たちは先ほどの天狗たちを警戒しているのか、空に浮かびながら雅楽たちを睨んでいる。その視線には仲間を殺された恨みか、明確な殺意が込められていた。
「雅楽殿、よく聞くが良い。お主には力がある。あやかしが使える不思議な力だ」
「力? そんなのあるわけないじゃん!」
「人の気配を深く感じ取ることができる妾がいうのじゃ、間違いない。あのつららという少年や、治郎など、あやかしの力が使える人間からは独特の雰囲気を感じるのじゃ。同じ雰囲気を雅楽殿から感じる」
「あったところでどうやって使うの!」
「丹田……、へそのしたに意識を集中させるのじゃ。温かいものを感じたら、それを全身に張り巡らさせる。そうしたら、自然とあやかしの力を使えるようになる。息を吐くようにな」
雅楽には到底出来る気がしなかったが、目の前に大量のあやかしがいる以上、やるしかない。
目を閉じて、深呼吸する。千草の言うとおりに丹田に意識を集中させた。確かに温かいものを感じる。それを血液とともに全身に運ぶイメージをすると、体全体がポカポカと温かくなった。
「とはいえ、あやかしの力を解放するには早くても十年ほどはかかる。つららのような天才は数年で才能が開花することはあるかもしれないがの。だから残りはこの妾が……、む?」
雅楽に頼れるところを見せようと意気揚々と一反木綿を倒そうとした千草だったが、すぐに眉をひそめた。雅楽からあやかしの力を感じたのだ。
その証拠に黒くて禍々しい霧が雅楽を包み始めた。
「なんと……。さすがは妾の夫だ」
「嘘でしょ。こんな短時間で能力の解放なんて」
雅楽は丹田に感じた温かいものを全身へ行き渡らせた。体の全体が温かいという範囲を超え、熱くなっている。すぐに力を解放せねば、燃え尽きてしまいそうだった。
「すぐにその妖力を外に出せ! 力は人によって違うが、なんとなく使い方がわかるはずじゃ!」
「これほどの妖力……、一体どんな力なの……?」
「ぐっ!」
雅楽は力強く拳を握ると、妖力を手に集中させ、地面に放った。妖力が一体どうなるのか、雅楽自身にもわからなかった。千草も蓮香も興味深そうに何が起きるのか見ている。一反木綿たちも距離をとり、警戒しながら妖力が地面につく瞬間をを見守っていた。
ぽこっ。
妖力が放たれた場所にタケノコが生えた。雅楽も、蓮香も、千草も、一反木綿たちも目を点にしている。
「タケノコ?」
あれほど禍々しい力を放ったのにも関わらず、起こったことはタケノコが一本生えただけだった。
「ギャギャギャギャ!」
一反木綿たちは空を大きく飛び回り、凧のように宙を舞った。確実に雅楽のことを馬鹿にしている。
雅楽は馬鹿にされていることが分かったのか、恥ずかしそうに顔を赤らめている。
「ギャギャッ!」
雅楽ならば簡単に殺すことができると思った一反木綿は一目散に向かってきた。事実、タケノコを生やすことしかできない雅楽に対抗する手段はなかった。
「妾の夫に手を出すでない! 『青月』」
千草は勢いよく地面を蹴り上げると、空中に飛び上がった。大量の一反木綿たちは雅楽に触れることすらできず、千草の三日月のような爪で切り裂かれていった。彼女は凄まじい速度で移動し、その軌跡は青い月のような形をしていた。
「ま、妾にかかればこんなもんじゃの」
「流石は猫又ね」
千草はたった数秒で五十もの一反木綿を一掃した。彼女は息切れもしておらず、汗すら流れていなかった。
百体の天狗が倒した一反木綿の数を、数秒で片付けた千草は明らかにあやかしの中にも別格だった。
「そんなに落ち込むなて、雅楽殿よ」
「落ち込むよ! あやかしを追い払える能力が手に入ったと思ったら、タケノコを生やす能力だったんだよ! こんなんでどうやってあやかしを除霊するの?」
「まあまあ。能力を開花させるだけでも凄いのよ? 普通だった十年以上かかるもの。流石にこんなに早く習得できるのは何か理由がありそうだけど……」
「あー、いたいた。皆さーん、一反木綿は倒しましたかー」
遠くから間伸びしたつららの声が聞こえた。この異常な空間で彼は全く緊張感のない声をしていた。
緊張感のなさもそうだが、つららにはもう一つ驚くべき点があった。
彼は三百をゆうに超えるほどの布を繋ぎ合わせ引きずっていた。
「そ、そんなに倒したの!」
「あんまりいなくて、いつもよりも少ないくらいですよー」
この一言でつららがいかに強いかということを雅楽は実感した。少なくともタケノコしか出すことができる自分よりかは遥かに強いだろう。
作者の紫 凡愚と申します!
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