第六十五話 桔梗ちゃん、友達とテスト結果を見る
桔梗視点です。
中間テストが終わった週の土曜日。今日は順位が発表される日です。実はもう答案が返却されているので、各教科の点数及び合計点は出ています。ただ、先に色々とわかってしまうと面白みが半減するという理由でかん口令が敷かれています。
(はぅぅ、自分以外の結果がわからないのって、すごく心配です)
私自身は今回かなりいい結果でしたので順位にも期待しているのですけど、しーちゃんやお友達の点数がわからないため、どちらかというと不安な気持ちの方が強く、そわそわしながら授業を受け結果が貼り出される時間になりました。
「では桔梗ちゃん、行きましょうか」
「はい。鈴菜さん達も一緒に見に行きませんか?」
「いいよ。冬木くん、勝負しよっか」
「ああ」
しーちゃんから誘われ、四人で順位表を見に行きます。順位表には上位三十名の点数と名前の他に、赤点を取ってしまった生徒の名前も書かれていますが、うちのクラスにいる人の名前はありませんでした。
「とりあえずひと安心かな?」
「クラスに赤点取ったのがいると担任にも迷惑かかるから、御影は特に心配だったよな」
「うん。お姉ちゃんオロオロしてた」
クラス内に誰も赤点を取った人がいないと知って、鈴菜さんも冬木くんも安堵のため息を漏らします。お二人はクラス委員ですから、そちらも心労の種だったのでしょう。一つ肩の荷が下りたみたいで、表情が明るくなりました。
「さてと、本番の順位確認だね」
「お前ら二人も、クラスメートの名前を見付けたら言ってくれると助かる」
「「――あっ!!」」
改めて順位表の確認を始め、早速一番端によく知る名前を、私としーちゃんが同時に見付けました。順位は三十位とギリギリで、得点も三百七十二点と決して高得点では無いですけど、そこには確かに私の名前が載っていました。
「は、はぅぅ~」
「よかったですね、桔梗ちゃん♪」
「やったね桔梗ちゃん!」
「よくやった」
「あ、ありがとうございます。皆さんのおかげです」
ひとまず鈴蘭お姉ちゃんに恥じない順位だったことにホッとしている私を、しーちゃん達が祝福してくださいました。ここにいるお三方のおかげで、入試よりもさらにいい結果を出せたので、改めてお礼を告げます。
「いえ、一番は桔梗ちゃんが頑張ったからですよ。あとでご褒美をあげますから、何でも言ってください」
「わ、わかりました」
「では、他の方の順位を見ましょうか」
私より上の順位にいたクラスメートは、男子は二十六位の杉山くん、女子は二十位の岡添さんがいました。二十三位でもうすでに四百点を越えていて、上位はかなりハイレベルな争いが予想されます。
「ここで四百点越えか。うちの学校じゃなかったらもう少し上だったかもしれないな」
「そうかもね」
冬木くん達が話しているように、他の学校ではもっと上位にいそうな点数が並んでいて、鈴菜さんが四百三十六点で十一位にいました。
「十一位、惜しいけど何とかクラス委員の面目は保てたかな?」
「それでもすごいですよ! 先生もきっと喜びます」
「だったらいいけど、あと二問合ってたらとも思うよね」
十位が四百三十八点と、たった一問が勝敗を分けた形なので、鈴菜さんはちょっと悔しそうでした。そうして次に名前があったのは冬木くんでしたが、先ほどの鈴菜さん以上の激戦区だったみたいです。
「僕は七位だ。しかし、四位から七位まで十点以内にひしめき合ってるの凄くないか?」
「確かにそうだね。冬木くんの四百五十二点から始まって、四位が四百六十一点だもんね」
「その分、三位の近衛くんの点数が際立ってますけどね」
「癪だが、詩恩の言う通りだな」
三位に入った近衛柊という生徒の点数は四百七十二点と、四位の人と十点以上離れていますので、確かに際立って見えます。ですけどそれすらも霞んでしまうような点数が――あれっ?
「あの、近衛くんより上の点数、一つしか無いんですけど?」
「奇遇だな。僕にもそう見える」
「というか順位も一つしか無いね。名前は二人分あるみたいだけど」
「ええ、僕と紫宮さんの名前が並んでますね」
近衛くんよりも上にある順位は、二位が無くて一位だけで、点数も四百九十点と一つしか書かれていません。ですけど名前は紫宮理良と桜庭詩恩と、二人並んでいました。つまりそれは、お二人が同点で首位というわけでして――。
「「「「えっ、えぇぇぇぇっ!!」」」」
まさかの結果に、私達は揃って驚きました。狭い廊下で大声を上げたため、他の方達から怪訝な顔をされてしまったので、頭を下げつつその場を離れ、人気の無いところに場所を移し会話を再開します。
「おい、何故詩恩まで驚いたんだ?」
「普通驚きますよ。僕としては紫宮さんに勝ったか負けたかの二択だったので、同率一位なんて思いもよらず」
「多分紫宮さんも、あと近衛くんも驚いたと思うよ? 入試のときの点差ってどのくらいだったの?」
「近衛くんより八点高くて、紫宮さんより十二点低かったですね」
今回の紫宮さんと近衛くんの点差は十八点ですから、入試のときとそこまで差がありません。ということは、純粋にしーちゃんが紫宮さんに追いついたことになります。私くらいの成績で十二点向上させるのと、しーちゃんの成績で同じことをするのとでは難易度が全然違うため、私達は全員目が点になりました。
「しーちゃん、すごすぎます」
「本当、桜庭くんどれだけ頑張ったんだよ。でも、さすがだよね」
「まったくだ。ただ、友人としては詩恩のこと、誇りに思えるな」
「皆さん......ありがとうございます♪」
「はぅぅ!!」
私達三人から褒められ、はにかんでお礼を言うしーちゃん。そのお顔が可愛くて胸がキュンとしました。綺麗で可愛くて、その上頭もいいしーちゃんは、私の自慢の幼馴染です。ですけどそんな彼に私は、一体どんなご褒美をあげればいいのでしょうか。
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