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第五十話 桔梗ちゃん、詩恩くんとお休みの予定を話す

桔梗視点です。

 放課後になり、一時間ほどクラスの皆さんとお勉強したあとで、しーちゃんのお家でも二人で勉強会をしました。教科は現国で、教科書とノートをひたすら読み込むという、シンプルな内容でした。お互い無言で紙をめくる音だけが部屋の中に響き、私が三回読み終えたのと同時に、しーちゃんは教科書を閉じました。


「今日はこのくらいでいいでしょう」

「あの、もう終わりですか?」

「他の教科は学校でやりましたし、詰め込みすぎもあまりよくありませんからね。あとは家に帰って教科書とノートを流し読みするだけで留めましょう。勉強も大事ですけどそれ以上に体調管理は重要ですからね」


 しーちゃんの言うとおりで、私も彼も体力がある方ではないため、無理は出来ません。実際私は寝不足だけで心配されるほど、体調が顔に出てしまいます。


「わかりました。お疲れ様でした、しーちゃん」

「桔梗ちゃんこそお疲れ様です。では鈴蘭さんと彩芽さんの誕生日会の準備をしましょう」

「そうですね」


 お互いの頑張りを労ったあとで、お誕生日会の準備を始めました。雪片お兄ちゃんのお誕生日会で使った飾り付けを再利用するため、今回手作りするものはそれほど多くありません。


「そういえば雪片先輩の誕生日に画用紙で作った白い花がありましたけど、あれって何だったんでしょう?」

「あれはスノーフレークのお花で、雪片お兄ちゃんのお誕生日のお花なんです」

「確かに和訳すると雪の欠片ですから、先輩にピッタリですね。それで、白と紫の画用紙を用意してるってことは」

「もちろんスズランと菖蒲のお花を作ります」


 スノーフレークは初めてでしたけど、スズランと菖蒲は去年作った見本を持ってきましたのでそれを元に二人で作り、当日までしーちゃんのお部屋に保管することにしました。


「こんなものですね。あと肝心のプレゼントですけど、まだ用意してないのであとで買いに行きます」

「はい。あの、プレゼントですけど、パパの分は要らないそうですよ?」

「それは雪片先輩から聞きましたので、大丈夫ですよ。桔梗ちゃんはもう用意してますか?」

「その、はい。当日まで秘密ですけど」


 一緒に暮らしていますから、鈴蘭お姉ちゃんが欲しいものは大体わかっています。その中で他の方が渡さないと思われるものを選び、私のお部屋の中に隠しました。


「そうですか。でしたら今日のうちに買わないと、桔梗ちゃんに秘密に出来ませんからね」

「わかりました」

「そういえば秘密で思い出しましたけど、母さんが来る日をやっと吐いてくれましたよ」

「本当ですか!?」


 前にこっそり来られたことを根に持っているのか、しーちゃんの言い方にはトゲがありました。私としては歌音さんが来るのは嬉しいですけど。


「ええ。事前に五日は無理だと伝えたので、三日と四日の二日にしたそうです」

「えっと、今回はお泊まりなんですか?」

「頑張って連休を取ったみたいで、前回と同じで仕事が終わってからすぐ移動し、三日の朝にこっちに来て四日の昼までいるそうですよ」

「しーちゃんの実家からその日程だと、かなりハードですよね?」


 話を聞いているだけでも疲れそうなスケジュールで、それをパパよりも年上の女性がこなそうとしているのですから、歌音さんのバイタリティは驚きです。


「僕も意見したんですけど、当人がノリノリなので止められませんでした。その時期父さんも一週間ほど家に帰れないので、一人でいるくらいならと」

「そうだったんですね」

「ただ泊まる場所についてどうするか、母さん何も言わなかったんですよね」

「ええっ!?」


 一泊二日の旅行をするのに、泊まる場所を決めていないという事実に、驚きを隠せませんでした。確かこの周辺に泊まれる場所は無かったと思います。


「伯父さんの家はここから徒歩一時間くらいで遠いですし、近くにホテルとかも無いですので、泊まるとすればあとはここくらいです」

「やっぱりそうなりますよね」

「もしそうなら床で寝て、蒲団は母さんに使わせます。長旅で疲れてるでしょうから」

「あの、歌音さんの性格上、疲れていてもしーちゃんのお蒲団は取らないと思います」

「ですよね......」


 私の指摘にしーちゃんは頭を抱えながら同意しました。強引に見えて子煩悩な方ですから、しーちゃんが体を壊しかねない行動は容認しないでしょう。困っている彼に、私は一つの選択肢を提示しました。


「あの、パパやママに頼んで、私のお家に泊まっていただくのもありですよ?」

「いくらなんでもそれは図々しいですって。けど、あの人達なら普通に歓迎しそうなんですよね」

「ですね。雪片お兄ちゃんやしーちゃんにも、いつでも泊まっていいと言ってるくらいですから」


 年頃の娘二人がいる家に、男の子を泊まりに誘う両親というのも珍しい気がします。その娘二人も反対するどころか、来るのを楽しみにしていますけど。


「桔梗ちゃん、もしご家族がいいと仰ったなら、母さんに話してみます」

「お願いします」


 あとで確認してみましたが、家族全員が歓迎するという答えで一致しました。特にママが乗り気で、歌音さんとじっくりお話ししてみたいと言っていました。そうして、歌音さんがうちに泊まることが正式に決まりました。

お読みいただき、ありがとうございます。

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