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第三十五話 桔梗ちゃん、友達に占われる

桔梗視点です。


遅生まれの意味を勘違いしていたため、修正しました。

 身体測定で測った数字が出る度に、先生やお医者さんに健康を心配されてしまいました。結果的に数ヶ月に一度病院に行くことで落ち着いたのですけど、どうもしーちゃんも似たようなことになっているみたいです。


(病院に行くのは好きじゃないですけど、しーちゃんが一緒なら頑張れます)


 入院していた頃の思い出はよくないものも多いですけど、それでもしーちゃんが一緒だったら楽しいのではと思えます。そうして測定が終わった今、私は教室で鈴菜さんをはじめとしたクラスの女子達からほっぺたや髪を触られています。


「桔梗ちゃんのほっぺ、柔らかいね」

「お肌もプルプルで、本当に子供みたい」

「髪の毛も綺麗だよ。天使の輪っか出来てるもん」

「はぅぅ」


 たくさんの女子に囲まれもみくちゃにされて困惑している私ですけど、こういうマスコット扱いはそこまで嫌じゃ無かったりします。少なくとも悪意は感じませんから。


(無視されたり腫れ物を触るように扱われたり――いじめられるよりはずっといいです)


 同じ髪を触られるのでも、撫でられるのと引っ張られるのでは全然違います。そんな過去があるので実はちょっと触れられるのは怖かったですけど、最初に撫でてきたのが鈴菜さんでしたから安心出来ました。


「桔梗ちゃんの身体測定の数字、大体九歳くらいの標準だったよね」

「私もそのくらいの年頃の妹がいるけど、全然触り心地変わらないよ」

「高校生でこれって、いろいろと反則だよね」

「はぅぅ、そう仰いましても」


 私としてはせめて鈴蘭お姉ちゃんくらいにはなりたいのですけど、ままならないものです。お隣のしーちゃんも、女の子みたいなところをいじられているみたいですし。


(何だか、今のしーちゃんはちょっと見たくないです)


 同性からいじられている私と違って、しーちゃんは数名の女子に囲まれ体を触られています。そんなしーちゃんを見ていると、何となく胸の奥がモヤモヤしてきました。


(はぅぅ、どうしてでしょうか)


 いつもならしーちゃんのお顔を見ると幸せな気持ちになるので、はじめての感覚に戸惑います。そんな私を見て何か思うところがあったのか、鈴菜さんがこう言い出しました。


「ねえ桔梗ちゃん、ちょっと席移ろうか?」

「いいね。せっかくだから私の席にしよう」

「どうせ移動するなら、桔梗ちゃんを膝に乗せてみようよ」

「はぅぅ!?」


 鈴菜さんの意見に賛同した女子数名により、私は森谷さんの席まで連れて行かれ、席に座った彼女の膝に乗せられることとなりました。


「桔梗ちゃん、軽っ!!」

「ちっちゃくても女子の膝の上に乗せられるってよっぽどだよ? ちゃんと食べてるの?」

「はぅぅ、食べてます」


 食べる量が少ないため、昨日の親睦会でもしーちゃんから心配されるほどでしたけど。それでもママと変わらないくらいの量食べていることを説明すると、なんとか納得してくださいました。


「ならいいけど。身長もそうだけどそもそも細すぎるのよね」

「桜庭くんくらいの体型なら羨ましいと思うけど、桔梗ちゃんのは先に心配になるよね」

「はぅぅ」


 しーちゃんの名前を出され、また少し胸の奥がモヤモヤしました。本当に私はどうしたのでしょうか。


「あはは、桔梗ちゃんはわかりやすいよね。よし、桔梗ちゃん、相性占いとか気にならない?」

「相性占いですか?」

「そう。桜庭くんとの相性を占ってあげようかと思――」

「しーちゃんとの相性、すごく気になります!」


 恋愛とかそういうのはわからないですけど、しーちゃんのことを好きなのは事実ですから、相性がいいのか悪いのかは気になります。食い気味に話す私に、鈴菜さんは苦笑しました。


「そっか。じゃあまずは桔梗ちゃんの誕生日っていつになるのか、教えてくれないかな?」

「九月一日です」

「意外。もっと遅いかと思った」

「うんうん、三月くらいだと思うよね」


 私のお誕生日を知ると、どうしてか驚かれることが多いです。恐らく見た目から早生まれ(一月一日から四月一日生まれのことらしいです)だと思われているのでしょう。


「はぅぅ、これでもしーちゃんよりも早くに生まれてるんですよ?」

「そうなんだ。ちなみに桜庭くんの誕生日はいつなの?」

「九月九日です」


 昨日しーちゃん本人に確認したので間違いありません。ちなみにその際、雪片お兄ちゃんや鈴蘭お姉ちゃんのお誕生日が近いこともお伝えしました。


「思った以上に近いんだね。でもそうなると星座が同じになるね」

「そうですね。確か血液型も一緒だったと思います」

「じゃあほとんどの占いで一緒の結果になるじゃん」

「......そうですね」


 結果が一緒なのは嬉しいですけど、占いを話題にするとすぐにお話が終わってしまうのが玉に瑕です。


「でも大丈夫。この占いは生年月日と名前を使って占うからね。そういうわけだから、森谷さん、よろしく」

「わかったって。えっと、ふーん」

「どうですか?」

「うん。二人の相性はとてもよくて、関係も離れるくらいじゃ切れたりしない」

「本当ですか! 嬉しいです♪」


 森谷さんから伝えられた結果を聞いて、私は手放しで喜びました。占いでも保証されたのなら、別れることはまずないでしょう。ただ、まだ終わりではないみたいで、森谷さんは続きを話しました。


「ただ問題が一つあって、これ以上親しくなるのなら、自分達の気持ちとしっかり向き合うことが大事だって」

「私としーちゃんの気持ち、ですか?」

「そう。どういう関係でいたいのか、それをハッキリさせないとたとえ傍にいても心がすれ違うことになるって」


 森谷さんから告げられた、傍にいても心がすれ違うという言葉が、とても印象に残りました。昨日鈴蘭お姉ちゃんが言っていた、幼馴染のままでは傍にいられないという言葉と重なります。この日からことあるごとにしーちゃんとどういう関係になりたいのか、私は悩み続けることになるのでした。

お読みいただき、ありがとうございます。

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