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第三十三話 詩恩くん、鈴蘭ちゃん達を友達に紹介する

 鈴蘭さん達と登校し、そのまま僕達の教室へと向かい窓から中を確かめると、御影さんと冬木くんが二人で掃除していた。鈴蘭さん達に内側から見えない場所で待機するよう伝えてから、僕と桔梗ちゃんは教室へと入った。


「おはよう、二人とも早いね」

「お、おはようございます。鈴菜さんも昨日よりお早いです」

「まあね。でも冬木くんはもっと早かったよ」

「昔からの習慣で、日の出前には起きているからな」

「早起きなんですね。僕も見習わないとですね」


 自分達の机に荷物を置きながら、御影さん達と挨拶を交わす。規則正しい生活をしている冬木くんに僕は感心した。


「それで、昨日聞いた話では先輩方も連れてくると言っていたな」

「ええ。ちょうど外で待って貰ってます」

「だったら呼んでくれ。待たせるのは失礼だからな」

「わかりました」


 鈴蘭さん達をいつ教室に呼ぼうか悩んでいたところ、冬木くんの方からその話題を振ってきた。なので僕は廊下にいる二人に合図をし、教室に入って貰った。


「えっ!?」

「......意外だ」


 御影さんも冬木くんも、桔梗ちゃんほどではないけれど年下にしか思えない鈴蘭さんと、逆に体格がよくて大学生と言われても納得しそうな雪片先輩という、両極端な二人の姿を見て目を丸くしていた。二人とも黙り込んでしまったため、鈴蘭さんと雪片先輩は声をかけ挨拶する。


「桔梗ちゃん達から話は聞いてるよ。わたしは佐藤鈴蘭。桔梗ちゃんの一つ上のお姉ちゃんだよ」

「千島雪片だ。こう見えて鈴蘭とは同い年だ。鈴蘭の彼氏で詩恩の隣の部屋に住んでいる」


 人懐っこい笑顔で自己紹介する鈴蘭さんと、ぶっきらぼうに告げる雪片先輩。こういうところも真逆なのだなと内心思っていると、御影さん達も自己紹介を始めた。


「あ、はい。ウチは御影鈴菜です。桔梗ちゃんと桜庭くんの友達をやってます」

「冬木明日太です。この二人とはクラスメートで、友達です」

「御影さんに冬木くんだね。これからも二人のことをよろしく頼むね」

「わかりました。『友達』として、仲良くやっていくつもりです」

「あはは、御影さんはいい人だね♪」


 やけに友達という部分を強調する御影さん。僕にはわからなかったけど、鈴蘭さんにはその意図が伝わったようで楽しそうに笑っていた。


「ありがとうございます。それとウチのことは鈴菜でいいですよ?」

「わかったよ。代わりにわたしのことも鈴蘭でいいよ」

「あの、もしよろしければですけど、蘭先輩って呼んでもいいですか? ウチが鈴菜で姉が清白と、響きが似ているので」


 お互いの呼び方について、御影さんの方からあだ名呼びを言いだした。鈴蘭さんも正論だと思ったのか、その提案に乗っかった。


「いいよ。じゃあわたしも、なっちゃんって呼ぶね」

「あははっ、昔お姉ちゃんからそう呼ばれてました」

「お姉ちゃんって、天野先生のことだよね? 清白って名前だったし」

「そうですけど、よくわかりましたね」

「昨日偶然ウチのクラスで現国があって、担当が天野先生だったから覚えてたんだよ」


 サラリと鈴蘭さんは言うものの、その記憶力の高さにここにいる全員が舌を巻いた。学年主席を一年間守り続けたのは伊達ではないみたいだ。


「天野先生って綺麗なお姉さんだよね」

「ちょっとポケポケさんですけど、あれでも自慢の姉です」

「なんか親近感湧くかも。わたしもどっちかって言うとボケだから」

「桔梗ちゃんもボケなのに、大丈夫なんですか?」

「「はぅぅ」」


 御影さんからのツッコミに、姉妹仲良く鳴き声を上げた。ちなみにこの鳴き声は楓さんから移ったものらしく、佐藤家では稀に三人同時にハモることもあるそうだ。


「そういうところは、やっぱり桔梗ちゃんのお姉ちゃんですね」

「はぅぅ、ほっといてよ!」

「でも、最初に知り合った先輩が蘭先輩で、よかったと思います」

「うん......ありがとう。わたしも桔梗ちゃんの友達がなっちゃんでよかったと思ってるから」


 鈴蘭さんと御影さんの仲だけど、特に何もする必要もなく上手いことまとまったみたいだった。一方雪片先輩と冬木くんの方だけど、お互い口下手だからかひと言も発していなかった。


「雪片先輩、冬木くん、僕達もお話しましょうか?」

「そう言われても、俺達だけで話すような話題も無いだろう?」

「それはそうですけど、冬木くんはどうなんですか?」

「千島先輩と同じだ。あるとすればお前に関しての相談事を先輩にしたいくらいだ」

「僕に関する相談事ですか? 当人が言うのもなんですがとりあえず話してみてください」

「わかった。千島先輩、今日身体測定があるんですけど、教室以外に着替えられそうな場所って無いですか? 桜庭が男子に混じって着替えたらそれはそれで問題が起きそうなので」

「ちょっ! そういう質問ですか!?」


 確かに今日は身体測定があるため、体操服に着替えないとならない。自分でも女にしか見えない自覚はあるけど、それでも男に違いはないので、普通に教室でみんなが着替え終わってから着替えるつもりだったのだけど、冬木くんからノーが突きつけられた形となる。


「なるほど話はわかった。この近くに空き教室があるから、そこにコイツをぶち込んでおけ」

「雪片先輩!?」

「わかりました。千島先輩、おかげで犠牲者が出ずに済みそうです」

「冬木くんまで!? もう、二人とも酷いですよ!!」


 腫れ物どころか危険物扱いされたので、僕は抗議した。ただ、これをきっかけに二人が打ち解けたみたいなので、この際よしとしよう。なお、このあと本当に空き教室に連行され、一人で着替えることになったのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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