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文化祭編 エピローグ 桔梗ちゃん、詩恩くんとキャンプファイヤーを眺める。

桔梗視点です。

 文化祭が無事に終わって、制服に着替えた私はしーちゃんと後夜祭に参加しました。グラウンドの中心ではキャンプファイヤーが煌々と燃えさかり、その周りでは音楽に合わせてフォークダンスをしている人達がいて、私達はその光景を少し離れた場所から眺めていました。


「文化祭、終わっちゃいましたね」

「そうですね。桔梗ちゃんと初めて過ごす文化祭、楽しかったです。欲を言うなら丸一日二人で過ごしたかったですけど」

「そこは仕方ないと思います。クラスのお仕事とかふーちゃんのこととかありましたし」


 イタズラっぽく笑うしーちゃんですが、何だかんだ真面目なので色々投げ出してデートしたとしても結局楽しめなかったと思います。かくいう私も同じタイプなので、どのみちこうなったでしょうけど。


「もちろんわかってますし、ただ言ってみただけですよ」

「そうですか。ならよかったです」

「桔梗ちゃんの方は今日の文化祭で、やり残したことや不満はありませんか?」

「特にないですね。ふーちゃんにドレスを着せて、しーちゃんとの姉妹コーデも出来ましたし」


 挙げるとすれば着せるのに思った以上に時間がかかってしまい、撮影会の時間があまり取れなかったことくらいですが、その辺りはあまり高望みしても仕方ありませんし今後いくらでも機会はあるでしょう。


「婚約者から女子扱いされて思うところはありますが、確かにあれは自分で見ても姉妹としか言いようが無かったですね。母さんに写真送ったらどっちがアンタなのか迷ったって言われましたよ」

「あ、あはは......」


 確かに撮影した写真ではお二人の身長差がわからないようにしてましたし、ほとんどの人が写真だけだとしーちゃんとふーちゃんの区別が付かないと言ってましたけど、そこは母親として迷わず即答して欲しかったです。


「まあ、結局正解したのでいいですけど。それと冬休みに楓花さんをうちに連れて来いとも言ってました」

「あれっ、歌音さんつい先日、こちらに来てふーちゃん達とお話ししてませんでした?」


 しーちゃんとふーちゃんが親戚と判明した後で親族内のゴタゴタを解決するために三日前に歌音さんがこちらに来ていたので、その際ふーちゃんとも顔を合わせていたはずですけど。


「あのときしてたのは真面目な話でしたから、母さんだって多少空気を読むくらいしますよ。それにあちらの方々が負い目を感じていたみたいなので、下手なこと要求してたら大事になりそうでしたし」

「負い目ですか?」

「ええ。祖母の駆け落ちの原因が曾祖父にあって、その影響で祖母の葬儀に大伯母さん達が参列出来なかったんです」

「それは、負い目に感じても仕方ないかもしれません」


 勘当されたとはいえ血の繋がった妹に最後のお別れも言えなかったなんて、心の傷としていつまでも残って当然だと思います。


「なので母さんから何を言われても受け入れるつもりだったらしいんですけど、当の本人が『伯母さんが母さんの墓の前で謝ることと、今後この件を蒸し返さないこと。それで許してあげるわ』なんて言ったので、あちらの方々が呆気に取られた顔してましたね」

「そ、そんなの当たり前です!!」


 恨み言の一つくらい覚悟していた相手から、自分は気にしてないのでちゃんとケジメをつけてくれたら許すなんて言われたら誰だってそうなります。


「しかもその後『親戚同士でいつまでも揉めるなんて馬鹿みたいじゃない』と続けたものですから、大伯母さんが泣き出しまして。まあそれから色々あって今に至るわけですが、やっぱりすぐに負い目を気にせず普通に接しろと言われても難しいみたいですね」

「そういえばふーちゃん、たまに申し訳なさそうなお顔してましたね」

「ええ。さすがに彼女は産まれてすら無かったんですから、気にしなくてもいいと思うんですけどね」


 その辺りは私もそう思いますけど気にする人は気にするみたいで、雪片お兄ちゃんなんかは父親の生前の罪をパパに懺悔していましたし。


「まあ、その辺りは時間が解決するということで。話を戻しますが、冬休みに楓花さんを地元に連れて行きますので、年末も夏休みみたいに移動が多くなりますけど、構いませんよね?」

「大丈夫です。元々そういう予定でしたし」


 冬休みも夏休みと同じように帰省するつもりだったので、そこにふーちゃんが加わるのは全然構いません。二人きりの旅行デートにならないのはちょっとだけ残念ですけど。これはこれで楽しそうでありだと思います。


「ふふっ、今年の年末は忙しくなりそうですね。もっとも、その前に期末テストがありますけどね」

「はぅぅ、気が重いです」


 成績優秀なしーちゃんや鈴蘭お姉ちゃんに恥じない程度の点数を取らないと、今度入学予定のふーちゃんに笑われてしまいます。ふーちゃん、割と成績いいみたいですし。


「ふふっ、勉強ならいつでも見てあげますよ。いい加減紫宮さん――じゃなくて、理良さんに勝ちたいですし」

「名前呼び、慣れませんか?」

「ええ。そういう桔梗ちゃんだって、明日太達のことちゃんと名前で呼べてなかったじゃないですか」

「はぅぅ、そ、そうですけど!!」


 ふーちゃんのことを紹介する流れで、クラスの皆さんから『知り合ったばかりの楓花さんのこと名前やあだ名で呼んでるんだから、いい加減自分達のことも名前で呼べ』という要望が出されました。私もしーちゃんも同性の方はすんなり呼べたんですけど、異性の方は中々慣れずに言いよどんでしまいました。


「そちらも慣れていきませんとね。これからも彼らとは長い付き合いになるわけですし」

「そう、ですね」

「そのためにも、なるべく病気せずに健康でいないとですね。一緒に頑張りましょう、桔梗ちゃん」

「は、はい!!」


 これから冬になり、元々体の弱い私達はよく体調を崩すことになるかもしれませんが、それでも弱気にならずに頑張ろうと、今も燃えさかるキャンプファイヤーの前で私達は誓ったのでした。

お読みいただき、ありがとうございました。

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