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文化祭編 第六話 楓花ちゃん、文化祭に遊びに行く

楓花視点です。

 私、日比谷楓花はつい先日、自分とよく似た親戚の先輩である桜庭詩恩さんと知り合い、その縁で彼らの学校で開かれている文化祭を見に行くこととなった。今年受験生でもう十一月に入っているにもかかわらず志望校すら決まってなかった私にとっては渡りに船の提案で、下見も兼ねて彼らの学校を訪れた。


「わざわざ送っていただき、ありがとうございました」

「別にいいって。どうせ行き先一緒だったし」

「それに、詩恩くんの親戚ならわたしたちにとっても親戚みたいなものですから」

「あ、ありがとうございます」


 詩恩さんの幼馴染兼婚約者(私と一つしか違わないのに婚約してるなんて凄い!)である桔梗お姉ちゃんのご両親、佐藤彩芽さんと楓さん夫妻にお礼を告げ車から下りる。この二人と初めて会ったときはその容姿に驚かされたけど、自分そっくりの異性の親戚がいるという事実に比べたら割とすぐに受け入れられた。


「さてと、そろそろ詩恩達が迎えに来る頃だけど」

「あっ、あっちから来てるの、そうじゃないですか?」

「えっ、ええええっ!?」


 楓さんの指し示す方を向き、彼らの姿を目の当たりにした私は思わず驚愕の声を上げてしまった。着物姿の桔梗お姉ちゃんについてはまだわかる。問題は金髪ドレス姿の詩恩さんだ。元々の容姿が女の子だから違和感ないどころか似合ってるけど、一体どういった経緯でドレスを着ることになったのだろうか。


「皆さんお待たせしました。これから僕達の教室に案内しますね?」

「その前に詩恩さん、何でドレス姿なんですか!?」

「僕達の出し物がファッションの歴史についてで、ドレスを用意したのが僕だからですかね」


 問いかけられた詩恩さんは、ため息をつきながらこう私に返答してきた。一応筋は通ってるし言い出しっぺの法則でドレスを着ていることについても理解は出来た。でもばっちりお化粧までしてるのはどうなんですか?


「その辺はその、私を含めクラスの皆さんがノリノリでしーちゃんをドレスアップしたからです」

「......まあ、気持ちはわかります。あとでこのメイクどうやったのか教えていただけませんか?」

「私のクラスに行ったら教えていただけると思いますよ」

「本当ですか!?」

「はい。むしろしーちゃんと同じ顔の女の子なんて見たら、クラスの人達は絶対に放っておかないですから」

「女子はもちろんですが、男子も僕に性癖狂わされてますからね」

「それを自分で言う辺り詩恩は罪深いよね」

「あやくんだって人のことは言えないというか、同じ顔の女子を連れて来ただけ詩恩くんの方が責任取ってる気がします」

「かえちゃん!?」


 あっ、やっぱり詩恩さんや彩芽さんみたいな男の娘が身近にいると性癖狂うんだ。しかも二人ともノーメイクでも美人だから余計にそうなってもおかしくないんだろう。


「ま、まあ僕の過去の話は置いておくとして、いつまでもここにいても邪魔になるし移動しようか」

「そ、そうですね。何か見られてる気もしますし」

「傍から見ると双子が二組いるとしか思えないですからね。とりあえず僕達のクラスに案内しますね」

「あっ、わたしとあやくんは先に鈴蘭ちゃんのところに行ってから向かいます」

「わかりました」


 そうして私達は校門から離れ校舎内へと足を踏み入れた。途中で彩芽さん達と別れ詩恩さん達の教室に向かう間、桔梗お姉ちゃんから受験について聞かれた。そういえば受験生ってことは話したけど志望校については言ってなかったなと思いつつ、この学校を第一志望に考えていると伝えたところとても喜んでくれた。


「本当ですか!? でしたら来年は私達の後輩ですね♪」

「まだ気が早いですって。そもそも受かるかどうかすらまだわからないんですから」


 昔から私は転校続きだったこともあり、転校先で苦労しないよう予習復習は欠かさないようにしているし、この間の中間テストでもそこそこ上の方の成績だったけど、それで大丈夫かと言われると不安が残る。


「でしたら親戚のよしみで僕が勉強を見て差し上げましょうか?」

「いいんですか?」

「ええ。これでも他人に教えられる程度の学力はありますからね。ただ、親戚とはいえ年頃の女の子の家に男一人で行くのもあれですから、桔梗ちゃんも同席させていただきたいのですが」

「桔梗お姉ちゃんもセットなんですか!? そんなのいいに決まってます!!」


 詩恩さんの一言に食い気味に返事をする。勉強を教えて貰える上に疲れたら桔梗お姉ちゃんを愛でていいなんて、それこそ願っても無いご褒美だ。


「決まりですね。さてと、真面目な話はこのくらいにしてそろそろ僕達の教室に着きますが、心の準備はいいですか?」

「は、はい」

「桜庭くんに桔梗ちゃん、そろそろ休憩終わりだから呼びに来た――えっ、桜庭くんが二人?」


 多分詩恩さんのクラスメートなのだろう、大正時代のハイカラ着物に身を包んだ美少女が声をかけてきたのだけど、私と詩恩さんの顔を二度見していた。やっぱり同じ顔の人間が二人並んでいるとビックリするよね。


「僕は一人ですよ。こちらは僕の親戚の日比谷楓花さんです」

「ああなんだ親戚だったんだ――って、桜庭くんにこんな可愛い親戚がいるだなんて初耳なんだけど!?」

「ええ僕もこの間知ったばっかりですから」

「鈴菜さん、私から説明しますね」


 鈴菜さんと呼ばれた美少女に私と知り合った経緯を説明する桔梗お姉ちゃん。話を聞き終わった鈴菜さんはとりあえず納得したようで、一度頷いてから私の方へと向き直った。


「日比谷さん、でよかったのよね? ウチは御影鈴菜、桔梗ちゃん達の友達でクラス委員やってるから、困ったときは遠慮なく相談してね」

「は、はい。私は日比谷楓花です。遠慮せず楓花と呼んでください、鈴菜先輩」

「じゃあ楓花ちゃんで。それと今から楓花ちゃんのことをウチのクラスの子達に紹介するつもりだけど、色々聞かれると思うから覚悟しておいてね?」

「わかりました」


 何というか、鈴菜先輩ってすごく頼りになる人だなと感じた。こういう人がまとめ役だから詩恩さんや桔梗お姉ちゃんがクラスに馴染めているのだろうななんて考えながら、彼らの後をついていき教室へと入ったのだった。

お読みいただき、ありがとうございました。

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