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文化祭編 第三話 詩恩くん、文化祭の準備を行う その二

割り込み投稿の設定を間違えたので再投稿します。

 クラスメート達と弁当を食べたあとで女子に混じって衣装合わせを行うこととなり桔梗ちゃんに採寸して貰った。その結果去年とほとんど体型が変わっておらず、そのままドレスを試着するという結論に至った。


「それではしーちゃん、私がお手伝いします」

「お願いします。それと桔梗ちゃん、採寸のときから言おうとずっと思っていましたが、着物がとてもよくお似合いでお姫さまみたいで可愛いですよ」

「はぅぅ、ありがとうございます」


 落ち着いた色合いの着物の上に華やかな打掛を纏った桔梗ちゃんは長い黒髪も相まって、まるで時代劇に出て来るお姫さまのように見えた。それも天下太平の世に生きる、穏やかで領民から親しまれるような姫。そんな彼女に手伝って貰って白を基調としたロココ様式のドレスに袖を通していく。


「しーちゃん、これで完成ですよ。お疲れ様でした」

「ふぅ、やっとですね。ありがとうございます桔梗ちゃん」

「いえいえ。しーちゃん、お姫さまみたいですっごく綺麗です♪」


 背中を締めた後、正面に回り込んで僕のドレス姿の感想を口にする桔梗ちゃん。男として姫と評されることに思うところがないわけでもないけれど、目の前の彼女と並んで絵になるのならそれでいいと自分を納得させた。


「ありがとうございます。ただその、やっぱりお腹の辺りがちょっと苦しいですね」


 食後かつ体のラインを美しく見せるためコルセットを巻いているため少々ウエストがキツい。ただこれでも多少現代風にアレンジされてあるので、当時の貴婦人達がどれだけ苦労していたかが偲ばれる。


「そこは仕方ないです。いくらしーちゃんが女性の体型に近い体でも、男性でそのドレスを普通に着られていること自体が凄いなんですから」

「そういうものですか」

「あの、他に苦しいところはないですか?」


 冗談で人前で女装して心が苦しいと返そうかなと一瞬だけ思ったが、今更だし何より桔梗ちゃんには冗談が通じないので素直に何も無いと答えておいた。


「でしたらいいですけど、無理しているのでしたら遠慮せずに仰ってください」

「大丈夫ですよ。お腹がキツいことを除けば以前の雪女コスや女子の制服を着るよりも楽なくらいです」


 これに関しては心の底からそう思う。同じ女装でもこちらはスカート丈が長くさらにパンチラ対策にドロワーズも穿いているため、安心感がまるで違うのだ。


「しーちゃんは長いスカートの方が好みなんですか?」

「捲れても下着が見えるリスクが低いですからね。本音を言いますと下着さえ見えなければホットパンツでも全然いいくらいです」

「でしたらしーちゃんに似合うのを今度探しに行きましょう!! しーちゃんの脚綺麗ですからもっと見せるべきです!!」

「脚を見せるのはいいですが、ルーズソックスは履きませんよ?」

「はぅぅ!! ど、どどどどうしてバレたんです!?」


 彼女にしては珍しいくらいの推しの強さに疑問を抱いて、カマをかけてみたところわかりやすいくらい目が泳いで動揺していた。やっぱり僕に例の靴下を履かせてお揃いにしたかったのか。


「当たり前です。というかいくら桔梗ちゃんの頼みでもアレは履きませんから」

「どうしてですか?」

「桔梗ちゃんが履いてるのを見るのが好きなだけで、僕が着用するのは解釈違いだからです。桔梗ちゃんだって僕に着て欲しい服を自分で着るのはちょっと違うなと思ったりしませんか?」

「それはありますけど」

「つまりそういうことですよ。納得したならこの話は終わりにして、皆さんのところに行きましょう」


 着替えが終わったらメイクするから自分達のところに来るように中宮さん達から仰せつかっているし、明日太を含む男子達へのお披露目も控えているのだからあまり待たせるのもよろしくない。桔梗ちゃんを伴い女子達が待つ空き教室に足を踏み入れた瞬間、黄色い歓声が湧き起こった。


「わぁ、桜庭くんお姫さまみたいで超綺麗~~♪」

「確かに可愛いよりは綺麗寄りよね。桔梗ちゃんが一緒なのも影響してると思うけど」

「ええ。二人でいると東西のお姫さまって感じでちょうどいい対比になるし、その方向でメイクするのがいいんじゃないかしら?」

「いいと思うけど、まず当人の希望を聞いてからだと思うよ。桜庭くん、どういった方向性のメイクをして欲しいかな?」


 大正風のハイカラファッションをした御影さんから希望を聞かれて、桔梗ちゃんと並んで自然に見えるなら特に拘りはないですと答える。化粧に対し門外漢な僕が下手に意見するより詳しい彼女達に任せるべきだろう。


「じゃあ桔梗ちゃんが純和風の黒髪ロリ姫だから、桜庭くんは金髪ブロンドの大人エレガント姫なんてどうかな?」

「悪くないわね。素材を活かしつつ新たな一面を開拓するって感じね。眉も薄めだから髪型である程度誤魔化せるし」

「じゃあ早速始めよっか」


 誰かの号令と同時に、ゴスロリやギャル系にパンクファッションなど思い思いの扮装をした女子達に囲まれ化粧させられる。メイク中はただ彼女達にされるがままで、正直何されたか全く覚えていない。ただ一つ言えることがあるとすれば、


「しーちゃん、凄くお綺麗で、ティアラ乗せたら女王様みたいです......」


 桔梗ちゃんが見とれるあまり違う世界にトリップする程今の僕は綺麗だということだ。いつか女装以外でこの反応を引き出せるくらい格好良くなりたいとこっそり決意する。


「確かに見とれるのもわかる美人だわ。桜庭くんってエレガント系本っ当に似合うよね」

「うん。大人っぽすぎてお姉様って呼びたくなるよね」

「あはは、確かに気持ちわかるかも」

「御影さんまで......まあ、普段と印象が変わっているならいいですけど」


 いつもの僕でもいいのだけど、別人に思えるくらいの方がより明日太達を驚かせられるのは確実だ。そうして桔梗ちゃんがこちらに戻ってきてから皆で教室に向かい、男子達にコスプレ姿をお披露目したところ非常に大盛況だった。なお、後日この姿でプーフ(頭に船を乗せる髪型)を再現してみたら天野先生を含めたクラス全員から不評を買ってしまった。解せぬ。

お読みいただき、ありがとうございます。

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