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文化祭編 第一話 詩恩くん、文化祭の出し物を決める

割り込み投稿の設定を間違えたので再投稿します。

 体育祭が終わり、今回もまた紫宮さんと引き分けに終わった中間テストを経て文化祭の準備期間が始まり、僕達というか一年生の出し物はおおよその予想通り研究発表に決まった。桔梗ちゃんと文化祭デートするつもりの僕としては当日暇になりそうな出し物なのはありがたいけど、一方で少々物足りない気もするのも確かだ。


(何にしても決まった以上は真面目にやりますし、出来る範囲で楽しむつもりですが)


 どのような出し物だとしてもクラスメート達と一緒に文化祭で何かすることに変わりは無いので、少しでも楽しみたいし想い出に残るものにしたい。そのために見る側はもちろん準備する側も楽しめるような研究テーマを考えているのだけどこれといって浮かばず、何かアイデアは無いかと思い桔梗ちゃんに話を振ってみた。


「桔梗ちゃん、文化祭で何かやりたいことはありますか?」

「......その、去年鈴蘭お姉ちゃん達がやっていたような展示をしてみたいです」


 話を切り出された桔梗ちゃんは少し考える素振りをしたあとで、意外としっかりした方向性の答えを僕へ返してきた。確か去年の鈴蘭姉さんのクラスは制服の歴史についての展示を行い、当日も様々な時代の制服を着て文化祭を過ごしたと聞いたことがある。


(うん、単純に面白そうですからこの方向で行きましょうか)


 準備するのは大変だろうけど普通に研究発表を行うよりずっと楽しそうだし、桔梗ちゃんのコスプレ姿も見られるとなれば反対する理由が無いので彼女の意見に賛同した。


「いいと思いますよ。単に結果を文章と写真で見せられるよりは実際に着た姿を見ていただいた方がわかりやすいですし、見せる側も普段着られない服を着る楽しみもありますからね」

「しーちゃんもそう思いますか?」

「ええ。ただ去年と全く同じテーマをするのはあまりよろしくありませんから、少し外したものにしましょう」


 研究発表のテーマが過去のものと被るのは仕方ないにしても、さすがに去年のそれと丸被りするのはよろしくないだろう。ましてや実の姉のクラスがしたのとまったく同じだと却下される可能性は高い。


「外したもの、ですか?」

「ええ。例えば日本と世界のファッションの変遷を歴史の年表に沿って展示するとか」


 鈴蘭姉さん達の発表内容と同じ方向性で、かつ差別化するならこの辺りが妥当なところだろう。去年行った展示の範囲を制服から拡大しただけと言われたら否定出来ないし拡大した分手間が増えるのは確実だけど、やりがいはあるだろう。


「それ、いいと思います」

「ふふっ、決まりですね。では早速明日太や御影さんに相談して――あれっ?」

「も、もう黒板に書かれてます!!」


 文化祭実行委員も兼任している二人に相談しようとしたところ、いつの間にやら僕達が話し合っていた内容がそのまま黒板に板書されていた。いや今は昼休みなんだけど。


「決めるなら早い方がいいからな。それにどうせ僕達に相談するつもりだったんだろう?」

「......まあ、そうですけど」

「じゃあ細かいことは気にするな。鈴菜、頼む」

「わかってるよ。みんな、ちょっといいかな?」


 教壇に立ち、クラスメート達に呼びかける御影さん。自身に注目が集まったところで彼女が本題を切り出す。


「ありがとう。文化祭の研究発表だけど今黒板に書いてる内容で行こうと思ってるんだけど、どうかな?」

「普通に面白そうだしいいんじゃね?」

「どうやって必要な衣裳を用意するのって問題はあるけど、そこさえクリアすればありだと思う」

「去年制服でやってたやつの拡大版だよね? だったら合法的にコスプレ出来るしやってみたい」

「準備が大変そう。でも他のいい案も思い浮かばないから保留かな」

「面倒臭いから反対。これまでの適当な発表内容のコピペでよくね?」


 問いかけられた彼らの反応は賛否両論ではあるもののどちらかというと賛成が多く、どうせなら自分達が楽しめるような研究をやりたいという考えが主流派のようだった。


「聞いた感じだと賛成の方が多そうだし、とりあえずこの案を第一候補として提出してみるね」

「通らなかった場合は普通に郷土史にするつもりだが、コピペで妥協するつもりはないからな」

「「ええ~っ!?」」

「当たり前だ。楽をした結果自分達にしわ寄せが来るからな」


 反対派の生徒達からのブーイングに正論で返す明日太。実際去年雪片兄さんのクラスが研究をコピペで終わらせたことで、あからさまに他のクラスと内申点に差をつけられたそうだ。事前に警告された上でそうしたのだから自業自得でしか無いのだけど。


「そういうわけだからとりあえずこれで提出してくるね。早かったら明日には決まると思うからそのつもりで考えてね」

「ファッション史についての詳細は発案者に聞いてくれると助かる」


 そう言って御影さん達が教室から出て行くと、僕と桔梗ちゃんはクラスメート達から取り囲まれ質問攻めにあった。基本的にコスプレファッションショーを歴史紹介というガワで包み込んだ企画のためか、衣裳に関する質問が多かった。


「ねえ、ロリータ服とか持ってきても大丈夫かな?」

「いいと思いますよ。実際に流行った服である程度来歴も書けますからね」

「ならゴスロリもありだね。そう考えると用意しないといけない衣裳のハードル下がるかも」

「一応着物やドレスとかも用意しないと、真面目な研究ですという建前が崩れるよね?」

「ドレスはともかく、着物なら桔梗ちゃんが用意出来ますよ。ですよね?」

「は、はい」


 桔梗ちゃん達に合ったサイズの着物だと普通の女子には小さめだと思うけど、いざとなったら重ねて十二単みたいにすればいい。それに最悪実家に問い合わせれば着物やドレスくらい用意出来るだろう。そしてこの数日後、正式に研究テーマがファッション史に決まったのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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