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閑話 詩恩くん、クラスの男子達と駄弁る

 体育祭が終わったとある日の昼休み。僕と明日太はクラスの男子達に話があると告げられ、人気の無い空き教室に呼び出されていた。お昼は食べ終わっていたから話すのは別に構わないけど、わざわざ場所を変えたのは何故だろうか。


「悪いな。ちょっと教室というか女子が聞いてる前では話せない話題だったから」

「構いませんけど、それより話って何ですか?」


 江波くんから男だけの密談だと聞かされ、僕は食い気味に続きを促した。明らかに声が弾んでいるのが自分でもわかるほどで、周囲の男子は皆一様にコイツ結構チョロいなと言わんばかりに口元を歪めていた。どうせ僕はチョロいですよ。


「単刀直入に聞くがお前らって彼女とヤッたのか?」

「ヤッたって......そ、そんなのまだに決まってるじゃないですか!!」


 あまりにもド直球な質問に、僕は真っ赤になりながら正直に返答した。桔梗ちゃんとしたい気持ちはあるけれど、彼女の気絶癖や両親との約束のこともあって、そういうのは卒業してからと二人で相談して決めているのだ。ちなみに雪片兄さん達も全く同じ立場である。


「わかりやすいよな桜庭は」

「まあ佐藤はもちろん桜庭も大概お子様だから、大人の階段登ってないって言われても納得しかないけどな」

「悪かったですねお子様で」


 我ながら子供っぽいところがあるのは否定出来ないけど言われっぱなしでは悔しいので、頬を膨らませながら彼らに抗議した。ちょっとあざといかなと思ったけど意外と効果があったみたいで、


「ちくしょう、ガワが美少女だからサマになってやがる」

「男なのにふくれっ面が可愛いのズルくね!?」

「ズルくないです。少なくとも質問に答えてない明日太よりは」

「そういやそうだった。冬木、お前は御影とヤッたのか?」

「残念ながら僕も童貞だ」


 杉山くんからの問いかけに真顔で即答する明日太。下手にリアクションして弄られるのを避けたみたいだけど、答えた内容が意外だったのか周囲の男子達の目が点になっていた。


「......マジ?」

「ああ。知っての通り僕の家では弟達が常にいるから鈴菜と二人きりにはなれないし、だからって鈴菜の家でするのもちょっとな」

「そういや実姉の天野先生だけじゃなく御影のお袋さんも教師だったよな」

「ご両親には御影と付き合うこと伝えてねえのか?」

「普通に話して了承貰ってるが、そういうことをするならバレないところでしてくれと言われてるんだ」


 正論だった。教師という立場上身内の不純異性交遊を黙って見過ごすわけにはいかないが、だからといって娘とその彼氏のことを信じないのもよくないという板挟みの末にご両親が出した結論がそれなのだろう。


「そりゃそうだ。両親公認の仲だったとしても親の目の前で彼女といちゃつける奴なんていないよな」

「僕は普通にラブラブしてますけど?」

「「「「お前らが少数派なだけだろ!!」」」」


 うん、わかってる。両親の前でいちゃつくどころか家族でトリプルデートに出掛けるなんて、普通の家庭ではまずあり得ないだろう。今度はうちの両親も誘ってデートを画策しているそうだけど、あの二人が忙しいこともあってさすがに実現しないと思われる。


「話を戻すが、家が駄目だったらラブホとか外でしたらいいんじゃね?」

「いやその方が駄目だろ。野外でもラブホでも出て来たところ誰かに見られて、学校にタレコミされたら一発で責任問題だって」

「そういうことだ。だから基本的には詩恩達と同じで卒業までは節度ある付き合いに留めるつもりだ」

「冬木達も中々に不自由なんだな。じゃあうちのクラスの男子は童貞しかいねえのか」


 そう橘くんは嘆くけど、僕達の年代なら未経験が多くてもおかしくないのではと思う。


「そういうお前はどうなんだよ? 最近彼女出来たんだろ?」

「本当ですか!? おめでとうございます!!」

「ああ、何というか早く彼女作らねえと桜庭に性癖狂わされるって感じて一念発起したんだ」

「僕のせいですか!?」


 まさか橘くんが彼女を作ろうと思った理由が僕にあるだなんて。そんなに性癖を狂わせるようなことをした覚えがないのでちょっとショックだった。しかしそう思っていたのは僕だけだったようで、


「わかる。桜庭がたまにする仕草が下手なグラビアアイドルよりエロいことあるよな」

「クールに澄ましてるように見えて意外と表情豊かだから、コイツ可愛いなって思ったことが何度あるか」

「そんな中、生足を出したミニ着物姿を見せられれば誰だって危機感抱くよね。冬木くん、親友的にはどう思う?」

「ぶっちゃけもう少し自重すべきだと思ってる」

「明日太!?」


 いくつも具体的な事例を挙げられた上、明日太からも裏切られまさかの孤立無援となってしまった。いや着物の件はともかく他は不可抗力じゃないかな?


「むしろ無自覚なのが問題なんだ。気を付けないと男子から告白される羽目になるぞ?」

「その辺はあしらい方含めて中学時代で慣れてますけど了解です」


 知らない相手や知ってても小さい子供相手ならまだしも、知人の男子に告白されるのはさすがに遠慮したい。


「賢明な判断だ。大分脱線したが、話はこれで終わりでいいんだよな?」

「ああ。聞きたかったことは聞けたし、何より桜庭がエロ談義出来るくらいには男だってわかったから満足だ」

「そうですか。でしたらこの時間も無駄では無かったみたいですね」


 話が一段落して、昼休みもそろそろ終わりそうなので全員で連れ立って教室へと戻った。内容自体はグダグダな会話だったけど、今回の昼休みでクラスの男子達と親しくなれた気がした。

お読みいただき、ありがとうございました。

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