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第百十話 桔梗ちゃん、両親のラブラブを目の当たりにする

桔梗視点です。


たとえラブラブであっても、何のトラブルも起きないのかと言われればそうでもなく。

 水族館でのトリプルデートを終え、私達は自宅に戻りました。しかし、手は繋いでいてもあまり恋人らしいことが出来なかったので、ここから延長戦が始まりました。購入したぬいぐるみをお部屋に置き、着替えたあとで冷房の効いた和室に全員集まりました。


「じゃあ、ここで思う存分ラブラブしよっか」

「「「は~い♪」」」

「いや、わざわざ全員で集まる必要あるっすか?」

「そうですよ。別にそれぞれの部屋でしてもいいじゃないですか」


 家族で仲良くしたい私達と違い、あまり乗り気ではない様子のしーちゃんと雪片お兄ちゃん。そんな二人にパパはため息交じりにこう告げました。


「二人とも、本当に何の考えも無しにこんなことしてると思ってる?」

「考えっすか?」

「普通にいちゃつきたいだけだと思ってました」


 お二人の答えに私達も同意します。ですが、パパには別の目的もあったみたいでした。


「もちろんそれも否定しないよ。でもちゃんとした目的もあって、鈴蘭ちゃんや桔梗ちゃんの気絶癖がどこまで改善したか確かめるのも兼ねてるんだ」

「「えっ!?」」

「まあ、そういう理由ならお付き合いします」

「大事な婚約者のためっすからね」


 パパの語った内容は私達にとって寝耳に水でしたが、彼らが納得してくれたので結果オーライでした。それにしても、どうやって気絶癖がよくなったか確認するのでしょうか。


「よかった。じゃあまずは自分のパートナーを膝に乗せて頭を撫でてみよっか」

「わかったっす。鈴蘭、座れ」

「桔梗ちゃん、どうぞ」


 好きな人に促され、膝の上に乗せられたあと頭を撫でられました。しーちゃんに撫でられ心地よくなった私ですが、ふと気になって鈴蘭お姉ちゃんやママを見ると、まったく同じ顔をしていたので、私もそうなのだと思い知らされ、途端に顔が赤くなってきました。


「「「はぅぅ///」」」

「なるほど。このくらいなら恥ずかしがるものの、誰も気絶しないみたいだね」

「俺らも恥ずかしいっすけど」

「気持ちはわかりますけど、我慢しましょう」


 恥ずかしがりながらも彼らの撫でる手は止まりません。このままでもいいかなと思っていたところに、更なる燃料を投下するパパ。


「なら次は後ろからハグだね。二人とも気絶癖が出そうな心拍数、把握してるかな?」

「「何となくは」」

「「はぅぅ///」」

「じゃあ、大丈夫そうか申告してくれると助かるかな」

「あやくん♪」


 そう言いつつママを抱きしめるパパ。ママはお顔を赤くしながらも、しっかりとパパに甘えてます。あんな風に甘えられたらと思いながらしーちゃんに抱きしめられますが、何も出来ずされるがままになっていました。


「桔梗ちゃんはそろそろ限界っぽいです」

「鈴蘭はもう少し余裕がある感じっす」

「そっか。じゃあここから四人は何もしなくていいよ」

「「「「えっ?」」」」

「ただ僕とかえちゃんがすること見て、自分達がやってると想像してくれるだけでいいから」


 パパの意外な発言に疑問符を浮かべながら、私達は両親の行動を固唾を見守りました。するとパパがママの頬にキスをしました。


「「はぅぅ!!」」


 お二人のキス自体は割と見慣れていますけど、それを自分達に置き換えて想像すると、一気に心拍数が上がり頬が上気するのを感じました。


「すごく、どきどきするね」

「き、気絶しちゃいそうです」

「してるところを見られてると思うと、なんか照れるな」

「ええ。よく堂々と出来ますよね」


 照れているのはしーちゃんや雪片お兄ちゃんも同じみたいで、私達ほどではありませんが頬が赤くなっていました。


「このくらいは序の口だよ。かえちゃん、次行くよ」

「あやくん、わかりました。んっ......」

「んっ......」

「「「「~~~~!!!」」」」


 ママが目を閉じ、パパにキスをせがみます。パパとママの唇の距離が縮まっていって、ゼロになると同時に私の意識は闇へと落ちていきました。


 目を覚ますと、私とパパ以外の全員がとても顔を赤くしていました。どうも私が気絶した後もお二人のラブラブは続けられ、それを目の当たりにして鈴蘭お姉ちゃんも気絶して、つい先ほど目を覚ましたそうです。


「鈴蘭お姉ちゃんが気絶するって、何をされていたのですか?」

「その、桔梗ちゃんが気絶してる間に、彩芽さんと楓さんがディープキスを」

「デ、ディープキスって///」


 キスして舌を入れ合うお二人を想像しただけで、また気絶しちゃいそうなくらいどきどきしました。


「普通のキスまではまだ大丈夫だったけど、わたしと雪片くんがディープキスしてるって思ったらもう///」

「あんなに激しいキスを見たら、普通照れますよ。それで彩芽さんに楓さん、気絶癖の改善について、お二人の見解をお聞かせ願えますか?」

「詩恩の言うとおりっす。協力したからには結果を聞かせて貰わないと納得しないっすよ?」


 まだ顔の赤いお二人が、パパとママに詰め寄ります。そんな彼らを落ち着かせるように手のひらで制するパパ。


「もちろん真面目に答えるけど、まずは離れてくれないかな? 実はかえちゃん気絶ギリギリなんだよ」

「「えっ!?」」

「ふ、普通にキスを見られるのはまだ大丈夫ですけど、ディープキスはちょっと」

「だったら何でやったんっすか?」

「その、結婚式のときに大勢の人の前でキスしたのも、同じくらい恥ずかしかったですから」

「「はぅぅ!!」」


 そうでした。結婚式では誓いのキスをするんでした。もしも晴れ舞台の見せ場で私達が気絶してしまっては、式全体が台無しになります。ママが気絶しそうなリスクを背負ってでも私達にディープキスを見せたのは、そうならないよう耐性を付けておくためでした。


「学生時代に友達数人と結婚式の予行演習をしたんだけど、そのときかえちゃんが気絶しちゃってね」

「それでもどうにか慣れてお友達の前でキス出来るようになったんですけど、知らない人も含めた多数の人の前ですると思うと」

「それで、もっと恥ずかしいことしてるのを見せて、無理矢理慣れさせたと」

「そういうことだよ。だからみんな、結婚するまでに気絶癖をかえちゃんと同程度まで改善すること。いいね?」

「「はぅぅ、わ、わかりました」」


 パパから出された条件に同意しますが、私としーちゃんの場合その前にファーストキスすら済ませていないので、まずはそこからです。とはいえこの場でする勇気も持てず、普通にいちゃいちゃして過ごして終わりました。はぅぅ、私駄目な子です。

お読みいただき、ありがとうございます。

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