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妄想の帝国

妄想の帝国 その46 感染拡大防止サブリミナル?広告

作者: 天城冴

某極東の島国では、政府の後手後手の、利権がらみの対策で、ウイルスの蔓延を防げず、場当たり的な緊急事態宣言を引き延ばし。今度こそはと宣言解除の秘策が、サブリミナル効果を狙ったCMだったのだが…

「首相、新型肺炎ウイルスの感染者が下げ止まりです。一応、宣言解除の目安にはかろうじて達しましたが、今解除で感染拡大の第四波がきますと、その国際大運動大会は完全に中止。その、旅行キャンペーン再開も不可能と。専門家は延長すべきと」

「むむむ、緊急事態宣言再延長せざるを得ないのか」

某極東の島国では新型肺炎ウイルスのパンデミックのさなか、時の政権の意味不明の旅行キャンペーンに、無理矢理にでも開催しようともくろむ国際大運動大会の準備のため、基本的な検査やら国民の救援対策が疎かになりまくり。場当たり的なロックダウンモドキの緊急事態宣言も小出しにしすぎて、国民はもはや真面目にとりあおうとさえしなかった。そもそも

「まあ、我が与党の議員でさえ、会食だの、繁華街のクラブだので連れ立って飲み食いしていたわけだし」

「首相、その、ご家族と官僚の会食とか、そういった件でも影響も…」

「わ、わかっている、官僚の接待など、その、大したことでは、確かにないんだが、うー、あの件がバレたのは痛いな」

「その件だけではなく、あの件も、その…」

「わー、言うんじゃない!補佐官!隠蔽体質だの、誤魔化しだの、私の答弁が迫力もなく、論理性もなく、笑いすら取れないと揶揄されているのは、わかってるんだー!」

「(わかっているなら、どうにかしてくださいよ、ふぅ)とにかく、宣言延長となりまして、感染拡大防止のための対策を何か打たねばなりませんが、その」

「あーワクチンは不足、病床も不足、医療従事者も不足。検査やれやれといっても、国の研究所が民間と大学などの研究施設との連携に難色示すし。専門家同士も…」

「省庁同士、国家お抱えの専門家たちの縄張り意識がすごいですからねえ。国民の命より利権が大事というのでは、その」

「い、嫌味か、それは!と、とにかくだな、何かの対策。や、やはり若者への事態宣言、マスク会食他感染対策の周知徹底を!無症状の若者が原因なんだ!多分…」

「(いや、マスクしてない高齢者とか、公共の場所で酒飲んで大声で騒ぐオッサンとかいますけど)若者への周知とはネットなどの広告ですか」

「も、もちろん!便通に依頼して大規模なものを!国際大運動大会が取りやめになったら、あの会社も、その、かなり不味いから、今のうちにだな」

「(それって利権ですよね、ハア)では、広告をつくってもらうとして、どのような」

「そ、そうだな。あ、そうだ!一見何でもないように見えて、その訴えかけるヤツ!えっと、さ、さ…なんとか、サブリミナルか!ああいう効果を使ったのはどうだ!」

「認識できるかできないかの刺激を与えて、見たものの行動に影響を与えるというアレですか。あの効果は否定する研究もありますが…」

「でも、ポップコーンだか、コーラだかを飲んだのもいるんだろう!とにかくだな、表向きは柔らかな口調、爽やかで明るいが、サブリミナルでは言うことを聞かなければ政府が酷い目にあわせるぞと強弁な感じでだな」

「(暗に罰則をにおわせて、相手に忖度させるなんて、いつもやってるじゃないですか)はあ、では、そのように担当者に伝えます」

「た、頼むぞ」


「首相、主に若者向けの感染防止サブリミナル広告ができました」

「か、完成か!これで感染がおさまるぞ、きっと」

「はあ、ご覧になりますか、首相。他の幹部の方々も」

「う、こ、これは完ぺきだ。一見爽やかな感じだが…。なんかマスクしないと外出してはいけない感が漂っているというか。うん、外に出るのに躊躇する」

「(ほんとかねえ、何もわかんないですけど、私)まあ、首相直々の依頼とのことで、幹部の方々が再三チェックをいれて、完成させたとのことで」

「よし、さっそく流すぞ!」


「ど、どうしてだ、補佐官!若者の外出が増加とは、い、一体…」

「それが、その、首相、あのCMでかなり反発が出たようで。“政府の奴等は感染を俺たちのせいばかりにして、従わなきゃどうなるかわからないだと!ふざけんな!”とか“大人の、しかも偉いはずの人が不正やってるのに、そんな連中になんで命令されなきゃなんないの!だいたいアンタたちが検査をきっちりやって、生活をちゃんと保証してれれば、私たちだって協力するわよ!いうとおりにしてたら生活できないってわかんないの!”などなど、ネットでも実社会でも抗議続出でして、その」

「な、なぜ?あくまで無意識のレベルで、強い命令を出したはず…」

「そのう、試聴したのが、我が党の幹事長とか、便通の幹部ばかりだったのが、原因のようで」

「は?」

「つまり、その、ご年齢が、かなり、若者と離れてまして。聴覚、視覚などの感受性と申しますか、その…」

「ま、まさか、我々が老人だから、わからなかっただけで、若者は裏のメッセージをばっちり認識したというのか!」

「まあ、そうです。サブリミナル効果は微妙な閾値の下で感知するということになってますから。閾値は人によって違う可能性がありまして、その。若者は高周波音に敏感とか、そういったデータもあるそうですし」

「ぎゃー、で、では、我々の命令はバレバレ」

「まあ、そうなりまして、その、た、ただ、感染拡大は抑えられそうで」

「は?」

「若者が“駄目な大人のせいでバカな政府やら会社に好き勝手させてるんだ!”と親だの、教師だの、上司だのに抗議の声をあげまして。その勢いに負けて、ウイルスをなめていた中高年が外での飲酒を控え、高齢者もマスクを常に着用。孫や子供に言い負かされて、不要不急の外出を大幅に控える高齢者も増えました。若者同士もアホな政府にふりまわされたくないと様々なリテラシーがあがりまして」

「か、感染拡大が止まったということか。しかしリテラシーがあがったということは、まさか…」

「は、はあ、今までの政府のウイルス対策失敗の原因徹底追及。ひいては旅行キャンペーンや国際大運動大会の即時中止と、それに絡む会社や団体に不正につぎこんだ金を回収して国民に金を配れと、若者をはじめとして国民の間で大運動が…」

「ひいい!わ、私も、その」

「あ、首相のリコール、および我が党はじめ与党の大落選いや辞職運動が、その。便通本社はもちろん、経済界で癒着をいわれた会社の本部周辺でも大規模な抗議集会が行われ、警察内部でも抗議に賛成する声があがりまして。あのCMで、国民全体が、ある意味注意喚起というか、尻をたたかれたというか」

「わー、感染だけ防止してくれればあ!」

嘆く首相の耳に、“首相退陣!利権がらみの無駄政策は即時中止!まともに感染防止やれ!”という抗議の声がかすかに聞こえてきた。


どこぞの国では、緊急事態宣言だかが再々延長というわけのわからないことになっているようです。このままずるずると永遠の事態宣言になるかもと懸念されておりますが、政府自ら宣言解除の目安を破りまくっているので、利権が危うくなったら解除するんですかねえ。宣言自体意味ないんでは、国民もそろそろ呆れかえりそうですが。

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