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Grim ReaperⅡ:コードネームはダークエンジェル(Code name is Dark Angel)  作者: 湖灯
★★★Showdown with a black masked man黒覆面の男との対決★★★
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【illusion②(幻影)】

 暗い森の中を駆け抜けて、建物に戻る。

 さっき通たばかりだと言うのに、まるで違う森の中を走っているように思える。

 森ばかりでなく時間や体の感覚も怪しい。

 なんだか違う世界の時間を彷徨っている様だし、走るために確かに地面を蹴っているはずなのに、宇宙を流れている様にフワフワとしている。

 周りの景色も驚くほど速く鮮明に、まるで渦を巻く様に俺を中心に螺旋状に流れて行く。

 まるで生と死の2つの世界のはざまを、縫うように進んでいるみたいに。


 建物の入り口は森と反対方向に向いていると言うのに、俺の記憶では森以外の所を通らないまま建物の中に入っていた。

 灯が消えて薄暗いはずの建物の中が、エメラルド色に輝いている。

 その中を、大量の熱風が階段を煙突代わりにしてヒューヒューと不気味な音を立てながら駆けあがっていた。

 1階の階段を駆け上がり、踊り場に来たところで一旦足を止めた。

“誰かに見られている……”

 ゆっくりと足を進めながら「Is there anyone?(誰か居るのか)」と2度尋ねた。

 2度目に声を出した後、何か返事の様なものが返ってきた気がした。

「Who…… Where are you.(誰……どこに居る)」


「Sergeant, leave this man to me.(軍曹、この男は僕に任せて下さい)」


 声はしない。

 だが、心には確かに聞き覚えのある懐かしい声が届いた。


「Miyan. Why are you here……?(ミヤン、何故ここに)」


「Sergeant Natow, long time no see.Last time, thank you for coming to Lyavonpal.(ナトー軍曹、お久し振りです。この前はレオンポリまで来てくれて有り難うございました)」


「Do you know……(知っているのか)」


「In general......,It is different from knowing. I feel.(大体の事は……知ると言うよりも、感じるのですが)」


「Why are you here?(何故、此処へ?)」


「I came to pick you up.(迎えに来ました)」


「Is me? (俺を?)」


「No way. Sergeant does not die. Right.(まさか、軍曹は死なない。そうでしょ)」


「Why this guy(この男を何故)」


「For people who like me, I'm curious. Even in appearance. And this person has added flowers to my grave, so it's even more so. (自分に似た奴は気になるものです。たとえ外見だけだとしても。それにこの男は僕のお墓に花を添えてくれました)」


「Flowers? (花を?)」


「So leave this to me. The next explosion will come soon. Please escape as soon as possible. (この男の事は僕に任せて下さい。直ぐに次の爆発が起こります。さあ早く逃げて)」


「Yes. I entrusted you. (わかった。君に任せる)」


 ミヤンに促されるまま、階段を数歩駆け下りて足を止め振り返る。


「When can I meet next? (次はいつ会える?)」


「anytime. (いつでも)」



 階段を降り切った時、レイラが居て手を掴まれた。

「ナトちゃん無茶しないで! どうしても彼を連れて帰るなら、私手伝うから」

「……レイラ、いつからここに居た?」

「バカね。貴女が走って行った直ぐ後ろを追いかけて来たのよ」

 そう言うと、レイラが階段に足を掛けた。

「もういい」

 レイラの腕を取り、引っ張って外に連れ出した。

「どうしたの? いつも強情なナトちゃんが、珍しいわね」

 1階の玄関ホールで改めて階段を見上げた。

 そこにはもうエメラルド色の輝きはなく、ほんの少しの間に、まるで見た事も無い廃墟のように色のない物に替わっていた。


“Please leave the building soon. I can't support it anymore.(さあ早くビルから離れて下さい。もう僕の力では支えきれません)”


 ミヤンに言われ、レイラの手を引いて、ビルから離れた。

「なに? 聞きたい事って」

「俺は階段を登った?」

「まさか。登る前に、ようやく追いついたのよ」

「登る前……に」

「そう。――なにか、おかしなことでも?」

「いや、特に――」

 その途端、ゴーっと言う凄い音と共に建物が崩れ出した。

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