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Grim ReaperⅡ:コードネームはダークエンジェル(Code name is Dark Angel)  作者: 湖灯
★★★Showdown with a black masked man黒覆面の男との対決★★★
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【Showdown with Fake Miyan①(偽ミヤンとの対決)】

 ミヤンも背は高くて細かったが、ナカナカ良い体格をしていた。

 いわゆる”細マッチョ”

 手足も長くて打撃系の格闘技向きだけど、人を殴るには気が優し過ぎて格闘技の成績は余り良くなかった。

 顔も体格もミヤンと瓜二つの偽ミヤンの方は、少しでも隙を見せると危険なほどの腕前。

 コンゴに派遣されたとき、ミヤンは少年兵たちの潜む小屋に入り、そこで銃を持つ少年に撃たれて死んだ。

 この様な建物へ侵入する場合の危険は、日頃からの訓練で飽きるほど何度も繰り返して条件反射的に敵に対応できるようにしていたにも拘わらず、ミヤンの持つ優しさが邪魔をして彼は命を落とした。

 ミヤンが撃たれた後、遅れて小屋に入ったトーニがパニックを起こして気が狂ったように部屋の中に居た少年兵たちを撃ち殺してしまったが、気を失っていたミヤンはメントスに治療を受けながら消えていく息の中で子供たちの心配をしながら死んでいった。

 もしもミヤンにこの偽ミヤンの様な汚い心がホンの少しでも有ったなら、死なずに済んだだろう。

 この偽ミヤンたちの組織が掲げる『平和な世界の構築』のためには、ミヤンの様な優しい心の持ち主こそ必要とされるべきで、偽ミヤンの様な心の汚れた人間は要らない。

 いくら格闘技が強くても、いくら銃の腕が良くても、平和な世の中では“見世物”としての価値でしかないのだ。

 つまり、必要のないモノ。


 奴の裏拳が飛んでくる。

 俺はそれを受け止めて投げようと思っていたが動作に入った途端、嫌な予感がして無理やり手を離して慌てて離れた。

「どうしました?裏拳を受け止めてからの投げ技は、得意中の得意だったのではないですか?」

「貴様、今、何をしようとした?」

「さあ、何のことだか……」

 偽ミヤンは嘯いたが、奴は明らかに何かを企んでいたに違いない。

 普通なら手を掴まれれば、少しなりとも抵抗が有って然るべきはずなのに、奴の腕は抵抗するよりも先に手首を返そうと動いた。

 これは赤十字難民キャンプに居た頃、サオリが良く使っていた“空気投げ”。

 投げようとする相手の動きを利用して、逆に投げる技。

 しかし相手の力や体重移動の向きや癖を完璧に読み切る必要があるため、実戦では殆ど見る事がないし使われる事も無い。

 つまり、奴は俺の返す技や方向を読んで、仕掛けて来た。

 いや、おそらく読んだのではない。

 知っていたのだ。

“何故?!”

 サオリと何か深い関係でもあるのか……。


 一瞬考えている間に、右のミドルキックが飛んでくる。

 あの、軌跡の読み難い蹴り。

 脇に1発食らいそうになり、それを肘でガードしたが、体重の掛かった良いキックだったので少し横に体を持って行かれてしまった。

 ホンの小さな隙だったが奴はそれを見逃さず、立て続けに左の後ろ回し蹴りから右のハイキック左からのフックに右のストレートとラッシュして来た。

 俺は一旦傾いてしまった体を修正できないまま、それらの攻撃をただ避けながら逃げるしかなく、ビルの壁際迄追い込まれてしまった。

 ようやく体勢が戻ったのは、崩れ残った塀に背中が当たった時。


「さすがに元グリムリーパーと恐れられただけあって、実力もさることながら幸運にも恵まれているな。1m隣だったら下まで真っ逆さまだ」

 確かに1m横にズレた所の塀は、さっきの水蒸気爆発で崩れていた。

“こいつは、格闘技での俺の癖を良く知っている!”

 何故知っているかは分からないが、不利になった時に無理に踏ん張らずに体勢を立て直すために逃げる癖を。

 最近では、入隊の格闘技試験の時にハンスの攻撃を受けたときに出たくらいで、その癖を知るものは居ない。

 もっとも赤十字難民キャンプに居た時は、サオリと合気道の試合をするたびに負けそうになるとパニックになり逃げていた。

 手合わせもしたことが無ければ、デパートの駐車場や園芸店でも俺は不利な立場に追い込まれてはいないから、見ていたとしてもこの癖はわからないはず。

 しかし、知っていたから、一瞬の隙を見逃さずにラッシュしてきたのだ。


“でも……何故……”

 サオリ……。

 いや、ミラン……。

 この場所を教えてくれたのは、サオリ。

 この偽ミヤンの脱出を助けるために飛んできたヘリに乗っていたのはミランに似た人物。

“どっちだ?”

 いや、どっちにしても答えは直ぐ出るはず。


 追い詰められた俺は、カクンと膝の力を抜き、その場に座り込む姿勢から回転して奴の足を払った。

 咄嗟に避けた奴が少しバランスを横に崩す。

 直ぐに起き上がった俺は、奴がバランスを崩した方向に側転しながら、上がった脚で奴の首を蹴る。

 威力はないが奴は更にバランスを崩した。

 側転からの立ち上がりで、奴の動く方向を塞ぐようにドロップキックをお見舞いすると、面食らったような顔をして後ろに仰け反った。

 あとは体を高速回転させながら、様々なカンフーキックを連発して奴をさっき俺が背負った塀まで追い込んだ。


「1mズレていたら、下に落ちて死んでいたな」

「舐めやがって!」

 今度は奴が反撃して来た。

 あの膝から先の奇跡が読めない自由自在な蹴り。

 最初は面食らったが、今は冷静に対処できる。

 結局この技は最初に振り上げられた角度の時のみタイムラグのない蹴りを放つ事が出来るが、撃つ場所を切り替えた所で必ずタイムラグが発生してしまう。

 特に致命的なタイムラグではないし、おそらく今までこれで上手く行っていたのだろう。

 だが、今度は違う。

 俺は奴が脚を振り上げる角度を見て、先ずその角度から放たれた場合の防御態勢を取ったうえで、奴の上げられた脚のハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)に狙いを定めて蹴る。

 このハムストリングスという部位は、大腿四頭筋と連動しながら膝を曲げたり伸ばしたりする動作を助ける役目があるため、蹴り続けているうちに奴の蹴りの脅威は除かれる。

 脚にきてしまったのか、それとも俺の攻撃の意図を知り脚にダメージを受ける前に止めたのか定かではないが、奴は攻撃を変えた。

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