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Grim ReaperⅡ:コードネームはダークエンジェル(Code name is Dark Angel)  作者: 湖灯
★★★Showdown with a black masked man黒覆面の男との対決★★★
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【Steam explosion②(水蒸気爆発)】

 ゆっくりと用心しながら歩いていると、足元に針金が落ちているのを見つけて拾う。

 これを少し細工して、拳銃のトリガーに取り付けて高く放り投げた。

 少し危険は伴うが、確率は低い。

 カチャリと床に落ちた音がした後、細工通りパンと銃声が鳴り、その場所へ向けて偽ミヤンが自動小銃を乱射した。

 俺がしたかったのは奴に銃を撃たせることではない。

 もう一つ、つまり三つ目の音が聞きたかったから。

 偽ミヤンの足音は、さっきから聞こえているが、濃い水蒸気の中で待ち伏せている奴は動かないまま。

 恐らく物を投げても、それは変わらない。

 あの男の事だから、物音に反応せずジッと相手を待つように言っているに違いない。

 だが、銃声となれば話は違う。

 命への危険度が高過ぎる。

 だから驚くか身構える、または伏せる。

 どうしても瞬間的に何かしらの行動をとってしまうため音を出してしまう。


 カツン。

 自動小銃の銃声の鳴りやまぬ中、予想通り靴の音が鳴った。

“意外に近い!”

 こいつに手こずる訳にはいかない。

 何故なら偽ミヤンとの距離が近すぎるから。

 奴なら自分が助かるために、仲間ごと撃ちかねない。

 俺は四つん這いになって男の居る位置へ近づいた。

 水蒸気の場合、姿勢を低くした方が遠くまで良く見える。

 男を発見すると、その後ろに回り、直ぐ傍まで近づいた。

 前の男同様に、この男も手強いはず。


 前の男には後ろから締技を仕掛けたが、投げで返され反撃に遭った。

 今度もたつく様な事が有れば、俺ばかりではなく、この男の命も危ない。

 真後ろに立った俺の気配を、このサウナのような暑さが消してくれている。

 こいつは背が高い。

 だけど、足の長さは、そう変わらない。

 真後ろに立った俺は膝をくの字に曲げて突き出し、男の膝の裏を突いた。

 いわゆる膝カックン。

 ズーっと緊張した状態で突っ立ったままの男には、案の定面白い様に効いた。

 膝が折れ、後ろ加重になった男の口を手で塞ぐのと同時に、その口に当てた手で思い切り後ろに倒す。

 後頭部を思いっきり床に押し当てると結構な音がするばかりか、この男の命さえも危ぶまれるので、その前に膝枕を用意してあげた。

 ズボンを脱いだままの20歳の生足。

 さぞ、良い夢が見られる事だろう。


 気を失った男を静かに床に寝かせて、大回りに偽ミヤンに近付いて行く。

 奴は動き回っているので位置は簡単に掴める。

 背後から近づき、先ずは持っている自動小銃を高く上げた足の踵で叩き落す。

 パンッ。

 指に掛かって1発が発射されたが、銃はそのまま床に落ちた。

「貴様!」

 背後からの蹴りで銃を落とされた奴は、振り向く首の動作と同時に右のエルボーに続いて左のフック、更に左の膝蹴りを間髪なく放って来た。

 右のエルボーをスウェイでかわし、右のフックを手で受け止めて投げの体勢を取ろうとしたところで左の膝蹴りを食らい、飛ぶように離れた。

 当てずっぽうで放った攻撃にしては割と威力があり、これがまともに狙われた蹴りだと思うとゾッとする。


“ナカナカ、やるな”

「甘く見るなよ、他の奴らとは違うぞ」

 ミヤンは寡黙だったのに、この偽ミヤンは良く喋る。

 奴の動きの素早さは、空手家特有のもの。

 しかも、奴が自分で言うように、相当な腕の持ち主。

 動きを封じるために放った俺のローキックも、空手特有の足さばきで返された。

「ほう、思った通り健康的で色気のある好い脚じゃないか。どうだ月12,000ユーロで仲間にならないか」

「もう断ったはずだ」

「勿体ない」

 奴が右から回し蹴りを放つのを見て、その足を取りに行って慌てて後ろに飛んで距離を取った。

 奴は回し蹴りの体勢から、俺の膝を狙って踵を落としてきた。

 余程膝と股関節が柔らかいらしく、一定の位置に上げた膝から様々な角度で蹴りが放てるのだ。


「よく気が付いたな。大したものだ。どうだ13,000で」

「うるさい!」

「おやおや、俺のキックを見ても未だ逆らう気か?気付いているだろ、お前は俺のキックに反応が遅れるって事くらい」

 確かに奴の言う通り。

 膝がどの様に上がって来たとしても、その後の脛の動きを見るまでは、足の軌跡が掴めない。

 攻撃を仕掛けようと思えば奴の攻撃を見切れずにまともに喰らってしまい、見切ってから動いたのでは奴の言う通り一呼吸遅れてしまう。

 まともに動けるのは膝が動いた瞬間に逃げる動作だけだが、それにしても正確な逃げる位置までは当てずっぽうになってしまい、結局な所前に出ようが後ろに引こうが俺の不利な状況が変わる事がない。


 次に飛んできたのは左足。

 これも右足同様に器用なキックを繰り出すのか注意深く見ていると、いきなりシャツの胸元を掴まれた。

“キックはフェイクだったのか!”

 飛び散るボタンと共に胸が開き、グイっと手繰り寄せられるように引かれた。

 俺は素早く体を横向きにして、引かれた方の袖から手を抜くと、そのまま背を向けて大きく回り服自体を外した。

「ほう……ナカナカやるな。つまり俺が掴んだのは、服と言う名の皮一枚って事か?それにしても良いスタイルだ。どうだ20,000で」

 下着姿になった俺を見て、いきなり値を上げて来たが、それに応えるほど馬鹿じゃない。

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