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Grim ReaperⅡ:コードネームはダークエンジェル(Code name is Dark Angel)  作者: 湖灯
★★★Showdown with a black masked man黒覆面の男との対決★★★
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【Battle on the Rooftop①(屋上での戦い)】

「これからどうするつもりだ」

「コードを抜いて、廊下に降りてから階段を使って屋上に上がりますか?」

「いや階段を使うと、電圧が切れていることが敵に分かり、無駄に怪我人を増やしてしまう」

「でも階段を使わずに、屋上には上がれないわよ」

「いや、4人いれば上がれる」

「どうやって?!」

「まっ、まさかお前、俺たちを踏み台に使おうって訳じゃ……」

「さすがハンス。その通り」

 トイが外に出ていれば、それを使って登れなくはない。

 だが最近は、その手口で泥棒に入られる事もあり、登る手助けになるような突起物やパイプ等が剥き出しになっている建物は極端に少なくなっている。

 見かけは古い廃棄物処理場の建物だが防弾使用の防火シャッターや扉など、この建物は敵のフランス拠点として相応しいように手が加えられているから、簡単に侵入できるような作りにはなっていない。


 そこで俺の取った作戦は、先ず、ハンスが窓枠に摑まり外に身を乗り出す。

 身を乗り出したハンスを土台にしてブラームがその肩の上に立ち、そのブラームの体を使って俺が更に上に登る。

 ハンスの肩に乗っただけでは、いくら身長の高いブラームと言っても屋上の外壁には未だ手が届かないだろうが、そのブラームの肩の上に立てば手は届くはず。

 エマは用心のための見張り。

 一応電機は切らないが、これで敵が一切来ないと言う保証はない。

 窓枠を掴んで踏ん張るハンスはまるで無防備になるし、万が一ハンスに何かあると、その上に乗るブラームと俺も真っ逆さまに落ちてしまう。

 いくら鍛えていると言っても、4階建てのビルから転落したのでは命の保証はない。

「よし、行くぞ。ハンス頼む!」

「まったく、お前にかかると、どっちが上官だか分からんな」


 窓枠に手をかけて思いっきり外に身を投げ出したハンスが俺を睨む。

「俺が変わってもいいが、それでは2人の体重は支えきれん。モンタナとフランソワを支えるよりはマシだと思ってくれ」

 その体を踏み台にして登り始めたブラームがフッと笑い、そのブラームの体を使いながら敵から奪った自動小銃をたすき掛けに担いだ俺が登る。

 ブラームの肩に足をかけて背を伸ばすが、屋上の塀に手をかけるまで20㎝程まだ足りない。

 おそらくこれは屋上にヘリコプターが発着できるように改造された分、背が高くなっているのだろう。

 たかが20㎝程ならジャンプしてしまえば良いが、そうするとハンスの肩に乗っているだけのブラームはバランスを失ってしまう。

「ハンス、持ち上げろ!」

「持ち上げろだと?」

「ああ。あと20㎝足りない」

「20か……」

「慎重にな」

「この体勢で、慎重にだと」

 文句を言いながら、ハンスがゆっくりと体を持ち上げる。

「あと7!」

「あと7上げるのは出来るが、それだとブラームのバランスが難しくなるぞ」

 ハンスが体を上げると言う事は、ビルから遠ざかっていた突起物がビルの近くに寄って来ると言う事。

 手足の長さは変わらないから、外に突き出した菱形の形が鋭角的になり、やがて一本の線になってしまう。

「ブラーム、ハンスの頭に足をかけろ」

「た隊長の頭にですか? 靴のままで?」

「ああ隊長は日頃から鍛えているから、俺たち2人の体重くらいは首で支えられるから心配するな」

「……でも」

「気にするなブラーム。ナトーの言う通りにしろ!これは命令だ、俺の頭に足を掛けろ!」

「じゃ、じゃあ失礼します」

 ブラームがハンスの頭に足をかけ、ゆっくりと体を伸ばすと、指が屋上の塀に掛かった。

「掛かった。もういいぞ」


 手に力を入れ、塀から顔を出すと、屋上には偽ミヤンの他に5人の部下が居た。

 まさか階段を使わずに屋上に上がって来るとは思っていないらしく俺に気がついていなかったが、登りきる前の無防備な時に気付かれるとマズいので敵の死角に入るように、そのまま塀にぶら下がったまま横に移動してから登った。

 さて、これから、どうするか。

 屋上に上がったはいいが、もうヘリは直ぐ傍まで来ている。

「トーニ。準備は?」

「死人が出てもいいのなら直ぐにでもOKなんだが、まだ捕虜にした奴らを安全な所に移動しきっていねえ。すまねえがもう少し待ってくれ」

「了解した、何とかこっちで時間を稼いでみる」


 時間を稼ぐと言ってみたのはいいが、近づいてくるヘリのシルエットを目の当たりにすると、1人ではかなりマズいと思った。

 てっきり小型ヘリだと思っていたが、敵のヘリはアグスタウエストランド AW139。

 15人乗りの中型双発ヘリ。

 世界での需要の多くは救命救急や要人輸送、捜索救難や海上油田への人員輸送などが多く、民間用の割には堅牢な作りで搭載している2基のエンジンのうち1基が使用不能になったとしても、残りのエンジンだけで全備重量を支えて飛び続けることができる代物だ。


※全備重量:航空機が、燃料・乗員・乗客など規定された搭載物を全部搭載したときの総重量。

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