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Grim ReaperⅡ:コードネームはダークエンジェル(Code name is Dark Angel)  作者: 湖灯
★★★Open Sesame(物語の始まり)★★★
4/53

【At the department store②(デパートで……)】

 昼過ぎに、屋上にあるテラスでパリの景色を見ながら珈琲ブレイクをした。

 俺はカフェオレにサラダ、エマはカプチーノにパスタにオムレツ。

 相変わらずよく食べる。

「はあ、歩き疲れたわ」

「すまない。それにしても良く買ったな」

 何一つ買わなかった俺とは反対に、エマは店員に煽てられると直ぐに買ってしまい結構な荷物になっていた。

「そんなに買って、全部着られるのか?」

「まあ、着ない服もあるだろうね」

「勿体ない」

「気分よ、気分。買うことでストレス発散になるし、服だってその日の気分によって違うでしょ。着なきゃ着ないで良いの、要は手元にある持ち駒が勝負だと思うの。必要な時に必要なものが有るか無いかで局面や気分は凄く変わってくるでしょ?」

「そうか?」

「そうよ。だって、もしもよ。もしも戦場に自分1人、拳銃しかなくて周りには10人の敵が居たらどうする?」

「先ず、1人目の敵から装備を奪う」

 エマが天井を見上げて両手を上げる。

「そりゃあアンタはね。でも普通は手元にグレネードランチャーとか手榴弾、散弾銃、機関銃に自動小銃なんか有ったら敵から奪う手間も省けるでしょ」

「それだけ持っていたら、動けなくなり逆に敵の的になってしまうぞ」

 エマがまた天を仰ぐ。

「だったら兵! 10人の敵兵に囲まれたとき、こっちに20人居たら絶対に有利でしょ!」

「兵の質に依るんじゃないか?」

「じゃあ、ナトちゃんの護衛にハンスが20人!」

 どや顔で腕組みをするエマ。

 思っても居なかったハンスの名前を出されて、焦ってしまう。

「ま、まあな……で、でもハンスなら1人で良いよ」

「1人で良いって?」

「だって、敵は10人だろ。それならハンスと俺で充分だ……」

「んっ?」

「それに10人もハンスが居たら、どれが本当のハンスなのか分からなくなるだろ」

「どれがハンスって、全員ハンスよ」

「わかった。その話はもう止そう」


 平静を装っているが、ハンスの名前が出てから、何故かドキドキが止まらない。

 だから強制的に話を打ち切り、外の景色に顔を向けた。

 秋風が、火照った頬を撫で、気持ちいい。


 パリの爆弾テロの舞台となったノートルダム大聖堂は今も健在だし、その向こうに広がるブローニュの森ではレイラ護送作戦で敵のアジトにレイラを送り込むことに成功した。

 もしも、この作戦が失敗していたら目の前に見えるノートルダム大聖堂は木っ端微塵に吹き飛ばされているだろうし、リビアで助けたレイラもこの世にはいない。

「思い出すわね」

「ああ」

「あの時、LéMATの仲間たちやハンスの活躍が無ければ、作戦は実行される前に空中分解して失敗に終わっていたわね」

「ああ」


 トーニが扇動してモンタナやフランソワたちとDGSI本部に乗り込んで大暴れをしていると知らせを受けたハンスと俺が止めに行ったのだが、ハンスは止めるどころか逆に大暴れして本部に立て籠もり俺を……いや、俺たちを見下していたDGSIの担当課長の責任を追及した。

 確かにあの事件が無かったら、チームワークはギクシャクしたままで作戦はスムーズに運ばなかっただろう。

「その後、ハンスにお礼は、したの?」

「いや……」

 ザリバンとの決戦、そしてそのあとの軍法会議が終わり、部隊に帰ってきた日の夜の事を思い出してしまい、またカァーッと頬が焼けるように火照った。

 それを見られたくなくて、またエマにそっぽを向いて答えた。

「そう?」

 疑っているのか、鎌をかけているのか分からないエマの言葉。

 こういう時は、余計な事は言わず、黙っているに限る。

 だから、何も答えずに遠くの空を飛ぶ飛行機を目で追いながらカフェオレを口に運んだ。

「SEXした?!」

 唐突なその言葉に、思わず口に運んだカフェオレを吹き出しそうになった。

「エマの馬鹿!」


 少し遅い昼食を終えて、駐車場に向かう。

 結局お茶しか買わなかった俺は、手一杯に買い物をしたエマの荷物を半分持ってやった。

 店内の喧騒とは打って変わり、静かな駐車場。

「静かすぎるな」

「満車でゲートが閉められているんじゃない?店内は人でいっぱいだったもの」

「なるほど……」

 気配を窺いながら、止めてある車の脇を通る。


 エマと俺の靴の音だけが、広い駐車場に、やけに冷たく響く。

 エマの車の数台手前に、黒のワゴン車が2台並んで止めてある。

 通路の向かい側には、フロントガラスにスモークを貼ったスポーツカー。

「来るぞ」

 小さくエマに呟く。

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