【Preparation for intrusion Complet(侵入準備完了)】
監視カメラの赤いLEDライトが付いた。
敵のアジトまで辿り着いたフランソワがインカムでエマに連絡した。
「エマ、こちらフランソワだ。敵のアジトに着いた。これから行くぞ!」
『待って、イカかないで!んっ、んっ』
「行くなって、モンタナ達はまだ到着しないのか?」
『んっ、んっ、まだ。でももう直ぐよ。だから、まだイッちゃ駄目よ。んっ』
「いつまで待てばいいんだ?」
『もう直ぐよ。んっ、もう直ぐイクから……待って頂戴。んっ、イク時は一緒よ!んっ、んっ』
「了解、早く来いよ。こっちも、そう待てねえ」
フランソワは不思議な顔をして通話を切った。
「兄貴、踏み込みますか?」
「いや、エマたちを待つ……なのは良いが、アイツ一体何やっているんだ?」
『エマ、聞こえる』
「んっ、んっ、レ、レイラ……き、聞こえるわよ。なに?んっ」
『ハッキングに成功したわ。そのままの調子で、胸をガラスに押し当てるようにして服を脱いで。音声もイコライザーで合わせて、そっちの音声は殺したから大丈夫よ。じゃあ、胸が出る直前で映像を入れ替えるから。ついでに廃棄物処理場の監視カメラも、画像を止めたままにしておいたよ』
「あっ、んっ、り、了解よ。んっ」
エマは言われるまま、胸をガラスに押し当てて、服を捲り上げた。
「おおぉぉぉぉーーー!!!でたぁ~~~!!」
「今、一瞬、画面が変にならなかったか?!」
「そりゃあ、機械だって変にもなるぜ。見なよこの巨乳。突かれるたびに、たっぽんたっぽん揺れてやがる」
「ニルス、いいわよ。んっ、キ、キースもご苦労さ・まっ……んっんっんっ」
ところがキースはエマの腰を掴んだまま離そうとしないばかりか、今までよりもより激しく早く力強く揺らす。
「ちょ、ちょっと、な・なに?んっ、はっ激しいぃ~。んっんっん~っ!」
腰を掴んだままキースがグッタリとエマの上に圧し掛かる。
その横をブラームが何事も無かったように、走り抜けて行く。
「ご苦労さんキース。オメーの名演技にゃ、敵さんも目が釘付けになっただろうよ」
モンタナが、まだエマにしがみ付いたままのキースの尻をペチンと叩いて通り抜けて行く。
「キース直ぐに着替えて追い付け」
ニルスが声を掛けて通る。
ハバロフは顔を真っ赤にして、まだ離れないエマたちを横目で見ないようにして通る。
「もういいでしょ。名演技だったよキース君、さあナトちゃんを助けに行くから離して頂戴」
グッタリしているキースを振りほどいたエマが、乱れた服を整える手を止めた。
「えっ、なにこれ?!」
エマが、手をクンクンしてみせる。
「す、すみません……」
まだ呼吸の荒いキースが謝る。
「キース君……いいわ、いい度胸しているじゃない」
セキュリティールームに向かって、通路を歩く偽ミヤンとその部下。
「仲間は……」
「いえ、まだ来ていません」
「変だな、もうそろそろ奴らの仲間が網に掛かってもよさそうなんだが」
カチャ。
ドアを開けた偽ミヤンが目にしたのは、いかがわしい映像と音と、それに群がる部下たち。
「お前ら、何をしている!持ち場に付け!!なんだこれはTVか?!」
「いえ、丁度ライトバンの所に来たカップルが行為をはじめまして……」
「まったく。監視カメラを付けていりゃあ、そんなこともタマにはあるだろうが、それをいちいち見ていたんじゃ何のためのセキュリティー要員なんだ?さあ、皆持ち場に付け!それと一応念のために5人ずつ2組で外を巡回させる」
「承知しました」
「こらっそこのカメラ、いつまでドアップでエロ映像見せるつもりだ。さっさと切り替えろ!」
「すみません……」
「どうした?早く切り替えろ」
「それが、カメラを横に向けても上に向けても……」
「変わらない――正面玄関の映像に偵察に出て行く者たちは映ったか?!」
「まだ、映っていません!」
「おいっ、出たかどうか確認しろ!」
命令されて直ぐに携帯を取った副官だったが、相手はコールに応じない。
「2組共、連絡が取れません」
「なに!?」
<……そのしばらく前>
『こちらフランソワ、事務所棟の正面玄関から5人出て来たぜ』
「あら、偶然ね。丁度こっちにも5人出て来たわよ。ところでキースは無事そっちに合流した?」
『ああ。奴らの始末はどうする?』
「フランソワ、そっちは1人少ないけれど、音を立てないで処理できる?」
『相手の練度にもよるが、まあ問題ない。出来るぜ』
「まあ、頼もしい。じゃあお互いに無音作戦で行きましょう」
『了解!』
廃棄物処理場の倉庫の中に入って来たのは、スーツ姿に自動小銃と言った似合わない取り合わせの5人。
倉庫の中には圧縮されて四角い塊になったペットボトルや、同じく圧縮して固められた発砲スチロールの塊が積み上げてあり、誰が見ても稼働中の廃棄物処理場だと思える様にしてある。
「来たぞ……」
「せーの!」
敵が細い通路に入って来た時を見計らって、高く積み上げられたペットボトルの塊を何個も一斉に落とした。
ペットボトルの寄せ集めと言っても、圧縮機で固められたものだから、1個当たり軽く80㎏は有るだろう。
それが頭上から落ちてくるのだから、身を守る行動をするのが精一杯で、とても自動小銃を撃つ余裕なんてない。
案の定5人全員が銃を手から離して、頭を守るようにして屈んだが、容赦なく落とされるペットボトルの塊に直ぐに埋もれてしまった。
中で何か声を出しているみたいだけど、殆ど聞こえない中、えまが水道のホースを隙間から突っ込み閉じ込めた奴らと話しを始めた。
「大丈夫?」
『助けてくれー!』
「捕らえられた仲間を助け出したら、直ぐに助けてあげるわ。仲間は何所に捕らえられている?」
『さ、3階の予備品質って札が掛けられた部屋だ』
「ありがとう。 正直に教えてくれたお返しに良い事を教えてあげるわ。そこで絶対に銃を撃っちゃだめよ。プラスチック類は凄く燃えやすいからね」
言い終わるとエマは上から飛び降りてきて、先に降りていた4人に合流した。
「さあ行くわよ!」
「誰か見張りを置かないのか?」
「中が、どうなっているか知らないけれど80㎏の4段重ねよ。ここから出られるとしたらモンタナくらいでしょ」
ニルスの問いに答えたエマの声に、モンタナが後ろ頭を掻いていた。




