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Grim ReaperⅡ:コードネームはダークエンジェル(Code name is Dark Angel)  作者: 湖灯
★★★Showdown with a black masked man黒覆面の男との対決★★★
32/53

【Natow gets caught.①(ナトー捕まる)】

「おい、お前らそこで何をしている!」

 敵のアジト、廃棄物処理場が見える場所まで来て、そろそろ肩に掛けていた武器を手に取ろうかという時に、不意に声を掛けられた。

 周囲を見渡すと、既に自動小銃を持った完全武装の敵10人に囲まれていた。

 ひとりの敵がホイッスルを鳴らすと、更に5人の敵が直ぐに来た。

「赤外線反応は?」

「ない。おそらく集音機かマイク」

「古典的だな……」

 かつての第二次世界大戦時、ガダルカナル島の戦いでヘンダーソン基地を占領した米軍はジャングルでゲリラ戦を展開する日本兵に苦しめられていた。

 その対策として基地周辺のジャングルにマイクを仕掛け、日本兵が通過する足音を拾う事で敵を待ち伏せて撃退した。


「さすがにLéMATの隊長だ。理解が早い」

「ミヤン!!」

「偽のなっ」

 ハンスが驚くのも無理もない。

 彼はミヤンに瓜二つ。

「今から肩の物を手に取る余裕はないでしょう。まあ、もし既に手に取っていたとしても、取り囲まれていてはどうしようもないでしょうが。さあ武器を置いて降伏しなさい。ここまで辿り着いた事に敬意を表して、手荒な事はしませんからどうぞお気楽に」

「仕方ないな……」

 ハンスが肩に担いでいたHK416と腰に差していたSIG SAUER P320を静かに足元に置く。

「ナトー。従え」

 ハンスに言われ、俺も肩に担いでいたFR‐F1を足元に置いて手を上げた。

「おっと、ナトー軍曹。装備はそれだけでは無いでしょう。拳銃も出してもらわないと困りますね」

 仕方なく腰の後ろに差していたワルサーP22を抜くために背中に手を回し、密かに安全装置を外しハンマーを引いた。

“ナトー!”

 俺の様子に気付いたハンスが、目で睨み注意した。

「ちっ!」

 悔し紛れに舌打ちをして、手に取った拳銃を下から上に偽ミヤンの方に高く投げた。

 大きく弧を描いて偽ミヤンの近くに落ちたワルサーP22が地面に落ちたとき暴発した。

「パンッ」

 敵がその音に一瞬怯んだところで、地面に置いたFR F1を取ろうとしたときタタタと自動小銃が近くに撃ち込まれ泥が顔に当たった。


「茶番は無しにしましょう軍曹。アンタは戦略家だ。ザリバン高原では一杯食らいましたが、もうその手には乗りませんよ」

「やはり、お前があの時の黒覆面の男か」

「そう。でも負けたなんて思っていません。私にしてみれば、別にどちらが勝とうが、どうでも良かったのです」

「どうでも良かった?」

「そう。私は……いえ、私たちは、いたって平和主義でね。実は中立的な立場なのですよ」

「ザリバンの味方じゃなかったのか?」

「ザリバの味方?滅相もない。あんな馬鹿げた奴らは、核で消えて無くなればいいと思っているくらいですよ」

「……」

「まあ、詳しくは私のオフィスで御説明しましょう。先日はお断りされてしまいましたが、詳しく聞けばナトーさんも屹度気に入ってくれると思いますよ」

 偽ミヤンは、“さあ”という風に手を広げ、俺たちに進むように促した。



 パーンと言う拳銃の音の後に、タタタと言う自動小銃の音が聞こえた。

「兄貴!いよいよ戦闘が始まったようだぜ。俺たちも急がねえと」

 ジェイソンとボッシュが促したが、フランソワは止まったまま耳を澄ませていた。


 もしもジェイソンとボッシュの言うように、戦闘が始まっていたとしたら必ず続きがあるはずだが、その後何の音も聞こえない。

 自動小銃の音は5.56mm弾のものだが、敵が撃ったのかナトー達が撃ったのかは分からない。

 だが先に聞こえた拳銃の発射音が45ACPや40S&W、9mmParabellumではない事だけはハッキリと分かる。

 あれはナトーのワルサーP22。

 22口径の発射音だ。

 前々から疑問に思っていた事がある。

 ナトーが何故22口径の、ワルサーP22を使うのか。

 部隊で使っているSIG P320の9㎜弾の方が威力はあるしベレッタPx4やグロック17などはマガジン収弾数も多く、より実践的だと思っていたが、今日ようやく分かりかけた気がする。

 ナトーは自分の声を聞き分けて貰いたいのではないのだろうか?


 と、言うことは、この1発には何かのメッセージが込められているのかも知れない。

 それは何だ……。


「兄貴、早く行かねえとナトーと隊長で敵が一網打尽にされてしまって、俺たちの出番が無くなっちまうぜ」

「それか逆にナトーたちが敵に捕まっちまう」

 ボッシュの後でジェイソンが言った。

「なんだと、テメー今、なんて言った!」

 思いっきりジェイソンの胸倉を掴んでいた。

「す、すまねえ兄貴。も、もしかしたらって思ったんだが、ナトーや隊長に限って、そんなこと――」

「やかましい!俺は、今何と言ったか聞いているんだ!」

「ナ、ナトーたちが敵に……」

「敵に?!」

「つかまる」

“捕まる……”

 フランソワは掴んでいたジェイソンを離した。

“捕まる……”

 そうだ。おそらくナトーと隊長は待ち伏せに合い、敵に捕まったに違いない。


 大勢の敵に囲まれて何の抵抗も出来ずに2人共捕まったからこそ、無茶を承知で1発撃ち、それを後に続いている俺たちへのメッセージとして残した。

 しかし、メッセージは捕まった事だけだろうか?

「おい、お前ら、ナトーと隊長が捕まったとしたら、どう思う?」

「あの2人が敵に捕まるわけがねえ、だいいち隊長は赤外線感知センサーを持ち出していたとエマが言っていたぜ。だからセンサーには掛かりっこない」

「それにナトーはジャングルの中を歩いていても、自分に近付いて来る足音や物音を聞き分ける能力があるから、敵の不意打ちには合わねえ」


「不意打ちに合わない……もしも、敵が待ち伏せていたとしたら」

「そりゃあねえぜ、だってさっきも言ったように隊長はセンサー探知機を持っているし」

「だから、赤外線センサーじゃない何かに捕らえられていたとしたら、それは何なんだよ!」

「ドローン?」

「バカ、ドローンだと音で直ぐに分かっちまうだろ」

「あっ、そうか……」

「音だ!!」

「音?」

「部隊の授業で聞いた事がある。どこかの島の戦いで敵のゲリラ戦に苦しめられたアメリカ軍が、ジャングルのあちこちにマイクを仕掛けて敵の通る音を拾って待ち伏せして撃退したと」

「じゃあ、ナトーたちは、やっぱり」

「そうかも知れねえ……おいジェイソン。オメーいつも小型のラジオを持っていたよな。今も持っているか」

「ああ、でも何で?」

「貸せ!」

 フランソワは、ジェイソンのラジオを取り上げてニヤッと笑う。


“ナトー。お前の託したメッセージ、確り受け止めたぜ”

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