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Grim ReaperⅡ:コードネームはダークエンジェル(Code name is Dark Angel)  作者: 湖灯
★★★Royal Soap Great Operation(石鹸大作戦)★★★
29/53

【Infiltrate the enemy's hideout①(敵アジトへの潜入)】

 800m進むと十字路があった。

 ここを左に曲がって、次は300m先の壊れたライトバンの所をまた左……。

 ところがハンスは、その十字路を曲がらずに真直ぐ通り過ぎた。

“ハンス”

 ハンスが、こんな簡単な事を忘れる訳がない。

 バックミラーを見ると、エマも気が付いている様子だが黙っている。

“いったいどういう事?”

 十字路を過ぎて300mほど行った所に、道路脇に数台分の車が置けられるスペースがあり、そこでやっと車を止めた。

「どうした?」

「敵の人数も分からないのに、ノコノコ車で突撃する度胸のある奴はお前くらいなものだ。それに――」


「それに、壊れた車が何故置いてあるか、よ」

「……監視カメラか」

「そう。壊れた車は屹度捨ててあるわけじゃないわ。車にはバッテリーと言う電源があり、車種にもよるけれどバックモニターと言うカメラも付いているわ」

「それにWiFiを加えれば、簡単にセキュリティーシステムの完成と言う訳か」

「そう。さすがナトちゃんね。さあ行きましょう」


「エマは、残れ」

 ライフルを肩に、たすき掛けにして出発の準備をしている時、ハンスの口から意外な言葉が飛び出して振り返る。

「どうしてよっ?!」

 言われたエマが、ハンスに噛みつく様な声で聞き返す。

 敵のアジトを目の前にして、1人でも人数が欲しいはず。

「これからは道路じゃなく、森の中を進む。君の服装は、その行程にそぐわない」

 言われて見れば、ハンスの言う通り。

 エマの服装はミニスカートのスーツだし、靴に至ってはクリスチャン・ルブダンのピンヒール。

 しかも新作。

 確かに、これで森の中を歩くのは色々な意味で難しいだろう。

「替えのシューズは持って来ていないの?」

 俺の問いに、エマはプジョーの中だと答えた。

「残念だな」

「……まさか、私を置き去りにして、ナトちゃんとイチャイチャするつもりじゃないでしょうね!」

「バカ」

 怒ったエマが捨て台詞を吐くが、ハンスは動揺もしないで歩き出し、俺は動揺を隠しきれず気まずい気持ちでエマに軽く手を上げた。

 怒っているはずのエマが、ニッコリ微笑んで手を振り、揶揄われたことを初めて知りハンスに続いて森の中に入った。


 ハンスはHK416を肩に下げ、手には赤外線感知器を持っていた。

「用意周到だな」

「敵のアジトに潜入するのに何も持たずに突っ走るお前とは違う」とハンスは、そっけなく言う。


 森の中は暗くて斜面もキツイ。

 おまけに道じゃないから、当然足場も悪い。

 コンゴのジャングルを歩いていた時の事を思い出す。

 それに、あの夜の事も……。

“!”

 余計な事を考えていたら、急斜面で迂闊に石を踏んでしまい、踏んだ石が転がりバランスを崩してしまった。

“落ちる!”

 思わず手を伸ばすと、ハンスがその手を掴んで強く引いてくれた。

 強く引っ張られた俺は、成すすべもなく引かれるまま、その広く逞しい胸の中に納まりハンスもそれでバランスを崩してしまい斜面に尻もちをついてしまった。

 もちろん引っ張られた俺を抱いたまま。

「バカ!斜面で石を踏んでしまうなんて、初心者の犯すミス……」

 深い森の斜面で重なり合ってしまったのが恥ずかしくて、慌てて起き上がろうとして地面を蹴ると、また滑ってしまい倒れた。

 倒れた先に有ったのは、余りにも近すぎるハンスの顔。

 そしてお互いの心臓の鼓動を、肌で感じてしまうほど触れ合う体と体。


“まさか、私を置き去りにして、ナトちゃんとイチャイチャするつもりじゃないでしょうね”


 森に入る時に、エマの言った言葉を思い出してしまい、顔がカアーっと熱くなる。

「気にするな」

「……?」

「エマの言葉。揶揄っているだけだから」

「うん……」


 ナトーが腕を付いて四つん這いになり、斜面を登り出す。

 シャツ越しの胸が俺の両頬を撫で、捲れ上がった裾から細いウェストと、その真中にある“えくぼ”の様に可愛いおへそが通過する。

 足場は悪い。

 ナトーはナトーなりに気を使ったのか、体の最後の部分が通り過ぎるときに無理をして腰を高くした。

 こういう斜面を登るときは、身を低く這いつくばるように上る方が安定するのは知っているはず。

 腰を高く上げると爪先に体重が集中してしまい、滑るとバランスを崩しやすい。

 ズルッ!

 案の定、足を滑らせた。

「おっと!」

 咄嗟に支えるために腕を回したが、掴んだのは見た目よりもボリュームのあるお尻と太もも。

 下半身は良く鍛えているのは知っていたが、俺たちのように筋肉で硬くなっていなくて柔らかい上に弾かれるほどの張りがある。


 いや、俺は一体何を考えているんだ。

 ナトーとの事は、あの一夜の過ちだったはず。

 正気を取り戻そうとした手に襲い掛かって来た刺客、それは顔の上に押し付けられたお尻の表側の何もない部分。

“こっ、これは……”

 無意識にお尻を掴んでいた手に力が入った。

「〇✖■▽◎◎▲◇~~!!」

 ナトーの悲鳴を初めて聞いた代償に、俺は頬に蹴りを食らってしまった。

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