【Sergeant Nato and her friends②Ema(ナトー軍曹と仲間たち、エマ篇)】
「エマー!」
エマと言うのは俺の女友達。
DGSE(フランス対外治安総局)の中東・北アフリカ担当の優秀なエージェント。
身長は俺よりも高い182㎝。
階級は少佐。
リビアでのバラク捕獲作戦の時に、一緒に組んで敵地に潜入して以来の親友だ。
頭脳明晰で、スタイルもボリュームがあって男好きする体型。
しかし男性関係にだらしなくてフラれてばかり。
31歳になった今でも、王子様探しに余念がない。
「ナトちゃ~ん!遅れてごめんねっ」
「大丈夫だ。俺も今来たばかりだ」
「じゃあ乗って!」
「ありがとう」
車に乗り込むナトー。その後ろ姿を分隊の仲間たちが遠くから見ていた。
「ナトーの奴、明るくなったな……」
トーニが呟く。
「やっぱり、そう思うか?実は俺も最近そう思っていたんだ。なんて言うか。丸くなったって言うか」
「ジェイソン。オメ―それってエロ目線で見てねーか?」
「いやいや!兄貴、そういう意味じゃねえから」
フランソワに睨みつけられ慌てるジェイソンだが、ボッシュも同じ意見だったのかジェイソンと同じように慌てていた。
「いや。エロ目線じゃねえ、入隊した頃は性格も身体つきもギスギスと尖っていたけれど、最近丸くなってきたのは確かだぜ。特にザリバンとの決戦が終わってからは……なあトーニ」
モンタナに話を振られたトーニは、いつものお喋りを封印したかのように黙ったままナトーを乗せ、今まさに出て行こうとする車の後ろ姿を見送ったまま見つめていた。
「どうしたトーニ」
気になったブラームが聞くとトーニは「なんでもねえ」と返し、今度は事務所の方に向かうハンスを目で追っていた。
トーニの視線に気が付いたハバロフが、ハンス隊長が最近訓練に顔を出さない事を言うと、キースが「中隊長になったから、もう分隊の面倒を見る暇がないんだろう」と寂しそうに呟いた。
「そうですね……」とメントスも、その意見に同調し皆も頷く。
急に、しんみりした空気が彼らを包む中、一つだけ違う空気が漏れる。
「それだけだろうか……」
一同が振り向くと、そこにはドローンを抱えたニルス少尉が道路の向こうに視線を投げかけたまま立っていた。
「“それだけ”って?」
不審に思ったボッシュが聞き返すと、他のメンバーも慌てた顔でニルスの方を振り返る。
いや、トーニだけは振り向かないでハンスの去った後を見詰めたまま。
そしてブラームは黙ったまま、無表情な目でニルスの表情を探っていた。
「いや。ほら、あるだろう第2成長期って」
「それって、女子の場合10歳前後から始まるものですよ」
衛生兵のメントスに突っ込みを入れられ、頭を掻くニルス。
「いや、ナトーは18で入隊してきた頃、まるで栄養失調の様にやせ細っていたからあり得るぜ」
モンタナが真面目な顔をして言うと、一同が一瞬静まり返った後、大騒ぎになった。
「馬鹿かモンタナ。いまでも痩せてはいるが、あの頃から胸はBIGだったぜ!胸がぺちゃんこなら考えられなくもねえが、あれだけの胸で第2次成長期が終わってないなんてあり得ないだろう」
「それに、ケツもプリップリに丸いし」
「そうそう、痩せているけど太ももなんてプニプニで絶妙の触り心地だぜ」
「おい!お前ら、どこでそれを!?」
「ザリバンとの決戦で、兄貴とブラーム兵長がトーチカ表面爆弾処理を手伝ったあと、俺たちでトーチカ底部の爆弾処理するナトーの足を支えたとき……」
「お前等、なんちゅう役得を!」
怒ったフランソワから逃げるジェイソンとボッシュ。
当然フランソワは2人を追う。
喧嘩や騒ぎは、娯楽のない部隊では最大のリクレーション。
殆どのメンバーがフランソワたちを追い、残ったのはトーニとブラームだけ。
ブラームは、ほんの少しだけトーニに目を向け「俺は、走るがお前はどうする?」と声を掛ける。
「俺も走る。だがそれは今じゃねえ」
「そうか、頑張れよ」
「ああ。ありがと、なっ!」