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46 予言の魔導師

 まず書かれていたのは、『シュエットが信じているジンクスは、誰かにかけられた呪いだ』ということだった。


 シュエットには、『思い込まされたジンクスを実行する』という魔術が行使された形跡があるらしい。

 その魔術は、とある一族だけが使える特殊な魔術だ、とも書いてある。


 その魔術のせいで、シュエットの体は本来魔力を保有することができる体質であるにも関わらず、魔力保有量がゼロだった。

 三人きょうだいの一番上はうまくいかないというジンクスを実行するために、彼女の体は常に魔力を放出し続けていたのだ。


 魔力保有量によって人生が左右されるこの国で、魔力保有量ゼロが成功する見込みはまずない。

 ミリーレデル家が裕福だからシュエットは不自由なく暮らしていたけれど、そうでなかったら、ただ生活するだけでも苦労するレベルなのだ。


 この国は魔力に頼りきっている。

 魔導式のアイテムで溢れ便利ではあるが、シュエットのような人には生きづらい国だ。


 ページをめくると、その魔術を使ったのが、ムウェト・レヴィの父親であるトログロディット侯爵である、と書いてあった。


「伯父様の父親が、トログロディット侯爵様だっていうの?」


「ああ。ムウェト・レヴィは、トログロディット侯爵がよそで生ませた子供だ。認知していないから、非嫡出子なのだが……しかし侯爵は、彼のことをかわいがっていたようだな。どうにかして貴族にしてやりたくて、ジャキャス・レヴィと婚姻を結ばせた」


「伯母様と……」


「それだけで満足すれば良かったのだが……ジャキャスの方が、な。彼女は自分が叶えられなかった王族との婚姻を娘にさせようと、あれこれ画策していた。そんな時に、事件が起こったんだ」


「事件?」


「ああ。だが、その前に……シュエット、君の母上はレヴィ家の出身だろう? レヴィ家の特徴は知っているか?」


「ええ、占星術に長けていると聞いているわ。でも、何代も前から力が衰えてきているって」


 予言とも言われていた精度の高い占星術。王族に頼りにされていた時代もあったらしいが、それも昔のことになりつつある。

 レヴィ家は間も無く取り潰されるだろう。

 魔力が全てのこの国で、ろくな魔導師を輩出できない貴族家は不要だ。


「そのはずだったのだけれどね。他でもない君が、その才能を開花させたらしい」


「……え?」


「覚えはないかい? 君が八歳くらいの頃だとジャキャスは言っていたが……」


 八歳の頃。

 エリオットに言われて、シュエットは記憶を掘り起こす。

 前に思い出そうとした時は過呼吸を起こして、エリオットに優しく介抱してもらったが──、


(って、違う。思い出すのはそれじゃない。八歳の頃の、話よ)


 改めて、思い出す。

 以前はあれほど困難だったというのに、なぜかすんなりと記憶は戻ってきた。


 それは、シュエットが八歳くらいの時のことだ。

 その頃はまだ、シュエットとグリーヴはそれなりに交流があって、遊ぶこともあった。


 八歳の女の子同士。

 おまじないだとか占いだとか、そういうものに興味を持つ年頃である。

 二人は無邪気に、当時はやっていたカード占いで遊んでいた。


『ねぇ、シュエット。私が王子様と結婚できるか、占ってよ』


『うん、いいよ!』


 シュエットの占いは、よく当たった。

 夕ご飯のメニューとか、来年ツバメはどこに巣を作るのかとか、子どもらしい無邪気な内容だ。


 王子様と結婚するのが夢であるグリーヴの願いを、シュエットは快く引き受けた。

 だけど、何度占ってもグリーヴは王子様と結婚できるという結果にならなかった。

 最初は微笑ましく見守っていたジャキャスもだんだん苛立っていき、「じゃあ一体、誰が王子と結婚できるのか占え!」となったのだ。

 その結果、相手はシュエットだと出た。


 子どものお遊びだ。

 真に受けるのはおかしい。


 だけど、レヴィ家は占星術に長けていた一族。もしかしたらシュエットは本物なのかもしれないという話になった。


 そこでジャキャスは、検証することにしたらしい。

 シーニュは渋ったが、わがままな姉に逆らうと面倒になることはわかっている。了承するしかなかった。


 直近で起こるであろうことをシュエットに占わせて、その結果を確かめる。

 一年にわたって検証した結果、シュエットの力は本物だと証明された。


 つまり、王子様と結婚できるのはシュエット・ミリーレデルであり、グリーヴ・レヴィではないということ。

 そして同時に、次期レヴィ家の当主の座は能力に目覚めたシュエットへ渡されるということである。


『そんなこと、許せない!』


 怒り狂ったジャキャスは、息子同様に孫娘も溺愛していたトログロディット侯爵に泣きつき、侯爵はシュエットへ呪いをかけた。


 三人きょうだいの一番上は、うまくいかない。何かあれば長女が真っ先に、それも手酷く失敗するのだから、と。


読んでくださり、ありがとうございます。


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