2学期始まる第4話
やっと話が動きそうです。
レイ編とはなび編より時間が進んでいます。
2学期が始まった。
そう、楽しかった夏休みはあっという間に過ぎていった。
俺は夏休みの最後を奇妙なことに費やしてしまったが、それでも名残惜しい。
「おはようございます」
「ああ、ナナちゃん。おはよう」
俺の後輩の七瀬ナナもどうやらちゃんと登校してきたようだ。
まあ流石にいつまでも夏休みだと思っている訳も無いか。
俺は昇降口でそんなことを思った。
「カイ、何してるの?急ぐわよ!」
「あ、ああ。分かった。それじゃあまたな、ナナちゃん」
「はい」
俺はナナちゃんと別れてはなびの後を追った。
このあと俺に壮絶な再会が待っていようとは思いもしなかった。
その日の放課後……
生徒会室内は静まり返っていた。
原因は俺だ。
「……」
さや先輩を始め、あの賑やかなナナちゃんですら沈黙を守っていた。
「あの……」
俺が言葉を発した瞬間にみんな一斉にこちらを向いた。
何だこの空気は。
俺は心の中で嘆息したが、言葉を紡ぐことにした。
「トイレ行ってきます」
俺は誰とも目を合わせずに部屋を出た。
この空気に耐え切れないというのもあるが。
「はぁ……」
俺は廊下を歩きながらため息を吐いた。
もちろん行き先はトイレではない。
俺は適当にぶらついて帰る予定だ。
そのとき、目の前から俺をこんな風にした張本人…まあ悪いのは俺だけど、その人がやってきた。
「あ」
俺と彼女の目が合った。
「……」
彼女は無言を保つ。
彼女の名前は美作咲。
一応俺の元カノである。
いろいろ理由があって俺は彼女に恨まれている。
そんな彼女がどうしてこの学校に来たかは不明である。
まあ訊いても教えてくれないと思うけど。
「・・・…」
それよりこの空気を何とかしたい。
俺は話しかけることすら出来ないし。
そんなことを考えていたらいつのまにか彼女が視界から消えていた。
どうやら俺がモタモタしているうちに横を通り過ぎたようである。
「はぁ……」
何というか複雑な気分。
今日はどこかパーッと遊んでみるか。
俺はぶらぶら歩いて時間を潰した後、生徒会室に戻っていった。
ガラガラ
「あれ?」
部屋にはレイ一人しかいなかった。
「他のみんなは?」
「帰ったわよ。それよりあなた酷いことやらかしたのね」
「へ?」
俺は目を丸くした。
一体俺のいない間に何が?
「美作さんだっけ?彼女に手紙を返さなかったんだって?」
「え……」
俺は思案した。
……ああ!そういえばはなびには咲から必ず返信して、と言われた手紙を返信しなかったから嫌われた、ということにしておいたんだった。
「はなびから聞いたのか?」
「そうよ」
どうやら当たったらしい。
「でもそれって本当?」
「それは……」
俺は少し俯く。
「まあいいわ。どちらにせよ嫌われることをしたのは確かなようだし」
「う」
レイは小さくなる俺を一瞥した後、仕事に戻って行った。
「ええとじゃあ……」
俺は帰ろうとしたが、レイ一人残して帰るのも……
「……私と帰りたいの?」
「いやその、お前を一人帰らせるのもなんかな……」
俺は少し思案する。
「ま、好きにして」
「……」
結局俺はレイを待って一緒に帰った。
レイと別れ、俺はどこかパーッと遊びたかったので、ゲーセンに入った。
しかし……
「あの覆面の人は一体何がしたいんだろうな……」
俺はゲーセンで出会った謎の覆面少女について考えた。
どう考えても普通の精神をしている人じゃない。
「う〜ん……」
俺は考えながらゲーセンをぶらついていたが、結局何もする気が起きない。
グ〜
「あ」
俺の腹が鳴いた。
「腹減ったな……」
俺は空腹感を突然感じた。
考えすぎたからかな?
咲のこととか覆面少女のこととか……
お、そういえばこの二人が同一人物の可能性は……ないない。
咲はそんなことするわけ無いよな。
俺はゲーセンを出てどこか食べれる場所を捜すことにした。
「おっ。いい匂いがするな」
俺の目の前には中華料理店。
現在時刻は午後8時。
客とか大勢いそうだ。
俺は匂いに導かれるまま店の中へと足を踏み入れた。
「ん?」
何か店の中は熱気に包まれている。
しかも大量の人間が何か騒いでいる。
「出迎えも無しってどういうことだ?」
俺は店の奥へと進む。
「あの〜」
しかし誰も反応してくれない。
というかみんな何かに夢中のようだ。
「何やってるんだみんな?」
俺はみんなが見ている厨房を見た。
そこには二つの人影が……
「!?」
その中の片方に俺は見覚えがあった。
「覆面少女……!!」
とうとう見つけたぞ覆面少女。
俺は彼女を見つめる。
そして……俺と彼女の物語はここから始まったのだ。
やっと話が始まった感じです。