エピローグ ~彼と彼女の虹の架け橋~4
「俺、ぶっちゃけ和泉は結婚しないつもりなのかと思ってたけど」
「失礼ね!」
光に答えたのは、七輝ではない。彼の人生の相方、一香。
「叩いちゃって」
七輝は笑いながら、一香に言った。
「叩くくらいじゃ生温くないです?グーを入れておきます」
「こらこら君たち。女の子が物騒な相談するものじゃないよ」
自分で種を撒いておきながら、光は言った。
「お前もそう思うだろ?慎也」
「……」
「何故黙る」
「確かに物騒だけど、まあそう言うのも致し方ないかと」
「男は男の味方をするものだろー?」
慎は困ったように笑いながら、曖昧に首を傾げて見せた。
「お前、和泉と知り合ってから本当に可愛いげが減ったな」
光は慎のこめかみにあてた拳を、くりくりと回転させた。
「昔は『光兄』って抱き着いてくれたものを。今や、呼び捨ての光だしな」
昔の癖で、ついつい『光』と何度か呼んでいるうちに、そのままになってしまった。
光自身、呼び名にはこだわるタイプではないし、気さくで文句を言わなかったからかもしれない。
「先輩としての威厳が落ちたんじゃない?」
「こら一香。何てことを言うんだ、お前は」
「きゃー」
つかまえようとした光の腕をかわして、一香は逃げ出した。
お互いに、子ども並の遊び心を持ち合わせた二人。
光が一香の後を追うことで、鬼ごっこと化していた。
「元気ね」
「……明日、人生の記念とする結婚式会場で、何やっているんだか」
慎は七輝と笑った。
「でも楽しみね、慎。ダブルウエディング」
「……そうだな」
来たる明日、慎と七輝は光と一香カップルと一緒に合同で結婚式を上げる。
慎たちが招待する人が、光と被っていたこともある。
でもどうせならうんと忘れられない日にしようと、七輝と光の意見が一致したことから始まった。
七輝と再会してから早いもので、もう三年の月日が経っていた。
慎はまだ若いから両親に結婚を反対されるかと思ったが、そこまで苦労もせずに着々と計画は進んだ。
七輝の両親は娘が結婚の意志を持ってくれたことに感激し、慎の両親は二人が頑張るならとあっさりしていた。
「慎。あそこに入らない?」
彼女が示したのは、式場にあるドアが半開きになった教会だった。
「いいよ。七輝が行きたいなら」
慎と七輝は自然と手を絡み合わせ、石畳の道を歩いて行った。戸を開けたら、正面の左右にいるイエスとマリア像に迎えられる。




