Rem:21 交差
早めの夕食が済み、順番に風呂に入ることになった。
今は一番先に七輝の父が入っている。終わったら、若葉と里津だ。
自分の番までは間があるので、慎は部屋に戻って携帯をとり居間に下りた。
「ちょっと散歩に行ってくる」
「はい。気をつけてね」
皿洗いをしていた七輝の母が顔を上げた。
「うん」
家に置きっぱなしにしていたサンダルを履き、外に出た。
ドライブでも行かなかったし、近いから小学校に行こうと思った。
明日行ける、実家の方の道を選ぶ。
(母さん、父さんは、元気にしてるかな?蒼も社会人になっているし、頼もしくなっているかもな)
時間が経つのは早い。懐かしい我が家を見上げ、また歩き出した。
(昔、ここに犬が捨てられていて、飼い主が出て来るのを待ってたっけ。翌日は、光に追いかけ回された)
ついつい思い出し笑いをしながら足を進めていたら、すぐ小学校に着いた。
あの頃長く感じたこの距離も運動場も、改めて見ると大したことがない。
遅い時間だが、まだ真っ暗になっていないから、少年たちが遊んでいた。その中に、大の大人が一人。
「いいか。あまり力みすぎるなよ。ボールは友達だと思え?」
「……光」
近づくと、光が気付いて振り返った。
「あれ?和泉。また会ったな」
「うん。散歩に出て来た。光は何してるの?」
「俺も同じ。ぶらぶらしてここに来たら、こいつらがサッカーをしてたから乱入してみた」
「そっか」
跳び箱代わりに、地面に半分だけ埋まったタイヤの列の中の一つに腰を下ろす。
「行くぞ!お前ら!」
光の掛け声に、わーわーと子ども達が寄ってくる。
(いつまでも、子どもみたいにはしゃいで……)
ガキ大将のような彼をくすくすと笑いながら見守った。




