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七つ色SHINE ー絆ー  作者: Mayu
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Rem:16 優しくも残酷な嘘3

その点、七輝は至って普通に話してくれるし、フィルターもない。最初は友達だった。

でもそれがいつの間にか別の感情に変化したのを知ったのは、噂を耳にしたからだ。

七輝が告白された現場を誰かが見たと。

相手は丁重にお断りされたらしいが、光はその事実自体がショックだった。

その瞬間、自らの気持ちを悟った。


それでも告白しなかったのは、臆病になったわけでも恥ずかしいわけでもない。

七輝の目線が追う先を、知っていたから。

まだ二人が恋人以前の友達になる前から、七輝の目は慎を追っていた。

でも、彼女も想いは伝えていない。

彼女は賢いし、常識もわきまえているし、空気も読める。


初対面なのに慎に攻め入ったら、きっと嫌がるということが分かっていたからだ。

七輝が慎を好きで、そこに慎を引き合わせれば、完全に繋がりが出来る。

それによっていずれは慎と恋人になるかもしれないという、可能性が生まれる。

だけど、光は承知で二人を引き合わせた。


七輝が喜ぶと分かっていたから。

一瞬の笑顔の為に、二人を引き合わせたくないという自分の気持ちを引き換えた。そして。


「和泉のことが、好きなの?」


軽く聞いたことが、己に傷を作ることになる。


「うわ。そうだ……。おれ、そうなのかも……」

「え?」

「いや、だから。光の言う通り、好き?……なのかも。でもわかんねえ。うわー……」


慎も光と同じ感情に辿り着いてしまった。

他人と距離を置きたがる慎がまさか好きになるわけがない、

そう思って油断をしていた。思い返してみれば、その兆候はちょこちょこあったのだが。

誤った道を選んだことを悔いた。傷ついた。だけど、あの慎が人を好きになった。


なかなか無いことだ。


それに親友だし、慎のことは好きだ。

今傷ついたとしても、自分は新しい恋を見つければそちらに移ることができる。

でも慎は今回を逃したら、次がいつになるか分からない。


お人よし?バカみたい?それでもいい。


慎は、かけがえのない友達。和泉は恋の相手。二人が好きだから、俺は選ぶ。

俺の秘めた気持ちは背中の後ろに、隠す。

言わなければいい。それで二人は心置きなく幸せになれる。


(まこ、良かったな。後はお前自身が、一歩を踏み出せればいい)


気持ちの切り替えは難しく、その後も七輝への想いは消えてくれなかった。

だから、合コンに何度行っても『特別な女の子』は作らないし、その領域には入り込ませない。

時間をかけてでも、消化すれば済むことだ。……だったのに。



慎が死んだ。押さえ込んでいた感情が、揺れ動かないはずが無かった。

亡くなった親友が好きだった人に、想いを伝えるのは裏切りか?



(……間違いなく、裏切りだろうな)


だって、慎は文句を言うことすら出来ないのに。

こそこそするのは嫌いだ。でも今がチャンス、もう抑えておけないって心が急かす。

毎日毎日、自分と過酷に戦う日が続いた。眠りにつくまでの時間が長くなる。

今日は毎晩の寝不足がたたり、体が重くてだるかった。


それのせいにしたらだめだけど、歯止めがきかなくなった。

今まで隠していたことをついに言ってしまったんだ、俺は。卑怯な裏切り者に、成り下がった。


(ごめん、まこ。ごめん、本当にごめん――。断りも無しに、お前の大事な和泉に手を出したも同然だ。空で怒っているよな?軽蔑しているよな?化けて出て来て、殴ったっていいよ……)




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