Rem:15 『好き』のカタチ ―光の秘密―2
今日は日直の日だった。ペアになっている男子は部活生。
だから彼が黒板を消してしまい、右端の下に明日の日付と当番の名前を書いたところで、後の日誌は自分が引き受けて慎は彼を帰した。
日誌を開いて必要事項を書き込み、職員室に持って行った。
それから前の時から三日経ったので、今日は花瓶の水を取り替えようと思っていた。
教室に戻り、自分の席だった場所に置かれた花瓶の水を入れ替え、萎れた花を捨てて元に戻した。
花を持って来るのも、その手入れをするのも自分だ。
これは自分にではなく、七輝に手向ける花だから忘れたりはしない。
開きっぱなしになった窓から部活動の掛け声が聞こえ、窓辺に近寄る。
野球部がバットで球を打ち返す、いい音がした。
その隣りではサッカー部が練習、陸上部は学校の周りをマラソンしている。
彼らの様子を見ながら、下校途中に見学をしている女子生徒がたまに黄色い声を上げた。
慎は側にあった机に座り、その様子を見つめた。
(ああやって、七輝も光を応援してた)
友達だし呼び捨てにしていたから、たまにプレー中の光を呼ぶ時、彼のファンから睨まれていたけど……。
(気づいてたかな?)
でもそれでも何も言われなかったのは、やっぱり七輝がオレを彼氏として選んだことを皆が知っていたからだろう。
(七輝。君のいる空からでも、この賑わう校庭が見えてるかい?)
まだ天国には、着いていないかもしれない。死んだ後、人は四十九日間天国へ入るための旅を続けると、何かの本で読んだ。
天国への旅に疲れたら、ここを見て一休みするといい。
(今、どの辺にいるのかな)
机に後ろ手をついて空を見上げる。するとしばらく経ってから、教室のドアが開く音がした。
「和泉」
「あれ?」
現れた制服姿の生徒に、慎は驚いた。
「光、どうしたの?」
「……」
光は無言でこちらに来る。慎は窓を閉めて、机から下りた。
「部活はいいのか?」
練習が始まっている窓の外を指差そうとした途端、腕をつかまれて引っ張られた。
「え……?」
ドンとぶつかったと思ったら、光の胸だった。
「ひか……」
言葉を発しようとしたら、頭と背中に回っていた手に力が入った。明らかに、様子がおかしい。
「どうした?」
「もういい。頑張らなくていい」
掠れる声が耳に届いた。
「葬式が終わってから、お前は泣かなくなった。だけど本当はずっと元気がないだろ。さっきの授業も、様子がおかしかった」




