Rem:13 海で傷心の背中を追う10
「あれ?」
「まこは線香花火の玉が落ちないように、じっと静かに見てるのが好きなの」
「あ。分かる!落ちなかったら、なんか嬉しいよね!」
女の子たちがうんうんと頷く。そこで光が提案した。
「そこまで考えたことはなかったなー。よっしゃ!じゃあ、みんなでやらねぇ?落ちずにやれるか試してみよう!」
「ガサツな男子とか、絶対に無理だから」
「言ったなー!」
盛り上がったみんなは丸くなり、線香花火を持ってその静かな輝きを見守っていた。
『本当はね。想いが通じる直前まで私、不安だったんだよ。慎は私に優しくしてくれたけど、でもそれは誰にでもでしょう?』
やはり突如、例の七輝は現れた。丸い輪の少し後ろでしゃがみ、みんなの花火を見守っている。
『慎は自分から積極的に他人につっこまないだけで、冷たいわけじゃないから。優しくしてくれる度に、期待してもいいのかなって思いながら、自惚れかもしれないとも考えたの』
自惚れてて、正解だったのに。
『でも、良かった。妬きもちはとても悲しかったけど、慎が私と同じ気持ちでいてくれたのは泣くほど嬉しかったよ』
「おれだって……」
七輝と反対側で、はしゃぐ自分たちを見ながら慎は呟いた。
『それにしても長かったな。出会ってから付き合うまで、半年もかかるんだもん』
(……ごめん)
自分の気を引くために精一杯悪戦苦闘していた七輝の苦労なんか、全然気付かなかったから。苦笑しながら、心の中で謝罪した。
『でも楽しかった。一生のうちで最高の一日ランキングの上位として、いつまでも思い出の中に残っているんだろうなって思った』
そのままじっとしていると、思い出の光景は徐々に薄くなって行った。




