Rem:13 海で傷心の背中を追う4
カチャカチャ。台所で皿のぶつかり合う音がする。昼はバーベキューに、夜の今は夕食をラーメンとおにぎりで済ませた。
今は女の子が皿の後片付け、男組は道具を片づけたり寝る準備をしている。。もちろん、このまま寝るわけではない。
夜は、お決まりの花火をする予定。
「七輝」
テーブルを拭いたふきんを手に戻ってきた七輝を友達が呼び止める。
「何?」
「瀬谷くん、そろそろ帰って来るんじゃないかな?バケツに水を汲んで用意しておいてよ」
「分かった」
汚れたふきん洗いを友達に任せ、バケツを取りに行こうとする前に腕をつかまれた。
「チャンスだよ」
耳元で囁かれる。
「え?」
「あんたが瀬谷くんを好きで、頑張っているのは知っているけど。前よりは進歩したものの、どうも彼は鈍いみたいだから。あと一押しが、足りないんだと思うの」
「こ、ここでその話?」
「ここだから、するんじゃない。いい?男子たちが邪魔しないように、私たちが見ておくから。お出迎えついでにこの際、告白でもなんでもしちゃいなさいよ」
「えー……」
「えーじゃないの。彼はあんなにぼけっとしてるけど、顔も成績もそこそこでしょ?狙ってる女は意外とたくさんいるんだから、油断は禁物!」
「うーん……」
慎のペースを考えれば、あまり急に押し迫っていくのも……と思い、今までは手探り状態でいたのだが。
「その女たちに差をつける、いいチャンスじゃない。玉砕の心配はないわよ。今日の瀬谷くんってば、ずっと七輝を見ていたもの」
七輝の肩を押してくるっと向きを変えさせ、友達は背中を叩いた。
「ほら!つべこべ言わずに、行っておいで!」
しっしっと早く行くように促され、七輝は風呂場に向かう。慎は他の女の子とは違う形で、七輝に接してくれる。
それは嬉しいのだが、今の関係は友達前後……いや、以上か?確かにもう少し、先のステップに進みたい。
七輝はバケツに水を溜める間、鏡の前で髪型がおかしくないかチェックした。
(……慎くん)




