Rem:13 海で傷心の背中を追う2
女友達が七輝の悲鳴に振り返り、
「どうしたの?」
砂浜に上がると同時に、やはり悲鳴をあげた。
「いやー!何なのこの虫!」
砂を足にかけて虫を払い落とす彼女たちを見て、光は肩をすくめた。
「女の子は気になるみたいだな」
七輝は綺麗に虫を落としてから、こちらに走って来た。
「あー、もう!びっくりした。足に、いっぱい何かついているんだもん」
「あれ、波打ち際にいるから、海から出るときにジャンプしたらつかないよ」
「なるほど!」
光のアドバイスを聞き、七輝は手を叩いた。
さて。そんな彼女には、格好悪いところを知られたくない。
慎は光にジェスチャーで、何とか口止めを訴える。
『頼むから、七輝にだけは言うな』
光は頷きながら聞く。
(何々……?)
『情けなくておれからは言えないから、光から彼女に上手く伝えてくれ?』
(何だ。そんなことか。お安い御用さ)
光が親指を空に向けたので、慎は安心した。が。
「和泉と同じであの虫が嫌だから、まこが海に入るのを嫌がるんだよ」
(全然伝わってないから――!)
慎はがっくりと頭を下げた。
「確かにあれは、気持ち悪いもんね」
七輝は頷き、慎と同じ目線になるように砂浜に膝をついた。
「でもせっかく来たんだし、入ろうよ?あれが嫌なら光の言う通り、跳んで海から出ればいいから」
水に浸からないままでいたせいで、熱い膝に少しだけ冷えた七輝の手が触れる。
「ね?」
慎の胸は跳ね上がった。思わず、七輝を凝視してしまう。
はしゃいだ時の海の飛沫で髪の毛の先は濡れ、肌に張り付いている。
痩せすぎではなく、程よく肉付きのいい体つきだが、体のラインにめり張りがきちんとある。
胸は大きくもなく、小さくもない。
白い肌とバランスのいい体に、スカート仕様になった赤の花柄の水着が良く似合う。
反応のない慎の目の前で、七輝は手を振った。
「……慎く、えっ?」
鼻に変な感じがして、思わず手をあてると。ツツー……。
「大変!慎くん、大丈夫っ?」
慎の異変を知った光が、真っ先に大笑いした。
ビニールバッグの中から、七輝がティッシュを取り出す。
(鼻血出すなんて、どこの漫画の世界だよ……)
「ありがとう」
自分自身に呆れながら、差し出されたティッシュで鼻を押さえた。
水着なんかに興味はないと、あれほど光に宣言した手前、居心地が悪い。
「純情ボーイは、大変だな」
「光!」
からかう光を七輝が咎める。




