Rem:12 お出かけ計画3
「なー、まこ」
「何」
「あんなにきっぱり断ったのが変わったのは、やっぱり和泉のせい?」
「はい?」
「いやー、まこってさ。和泉に弱いっていうか、あいつが関わると嬉しそうだし」
光は少し声を潜めた。
「和泉のこと、好きなのか?」
「なっ……!」
慎は瞬時に、茹蛸と化した。
「ちょっと、待て」
(どこをどう繋げたらそんな結論になるんだよ?)
「確かに光と同じように、七輝だって一緒にいて楽しいし。……でもだけど、そんな対象として」
彼女と別れた後、笑顔を思い出してみたり。
ぼーっとしている時に、会話を思い出して反芻したり。
帰りの別れ道で、離れるのが実は名残惜しいとか……。
(え?あれ……、え?)
慎は頭を抱えた。
言動、仕草、どれ一つとして逃がすまいと、耳と目を懸命に働かせて。
(おれの頭は、いつの間にか七輝だらけになってる?)
「やばい。……おれ、おかしい」
(本当に……。病気だ)
慎はため息をついた。
「うわ。そうだ……。おれ、そうなのかも……」
「え?」
「いや、だから。光の言う通り、好き?……なのかも。でもわかんね。うわー……」
「……まじっすか?」
光が目をパチクリと動かす。慎が頷き、光は固まった。
「やっぱりおれ、おかしいよな……。らしくないって言うか」
「いや……。そうじゃないけどさ」
「?」
慎は机に寝たまま、目線だけを相方に向ける。
「ま、まあ、いいんじゃないか?他人に無頓着なまこにしちゃ、すごい進歩だ」
光はすぐに笑顔になって、慎の肩を元気よく叩いた。
「うん」
「お。先生が来たな。じゃな!」
廊下の磨りガラスに動く影を見つけ、他の生徒のように光は席に戻った。
この時間、先生の話は全く耳に入らなかった。
ただノートを取り、手を止めて考え事をして、ふっと気がつくとまた手を動かす……と、繰り返した。
(そっか……。おれは七輝のことが『好き』なのか)




