Rem:12 お出かけ計画2
「喜べ、まこ。お前も参加メンバーだぞ」
(やっぱり……)
百パーセントの予想的中に、慎は片手を額にあてた。
「パス」
「何で!海って言ったら、男のロマンだろ!女の子の水着がわんさかだぞ」
「興味ないし。……それに恥ずかしいから、大きな声でそういうことを言うな」
光は慎の言葉に雷に打たれたような顔をして、それから肩をつかんだ。
「まこ。本当に水着女子に興味ないのか?」
「ない」
「そりゃ、年頃の青少年にしちゃ不健康だぞ。病気じゃないのか」
「失礼だな……。光が変態なんだろ」
「何を――、お?」
シャツの襟につかみ掛かろうとした光は、たまたま廊下の様子を目にする。
「良いのがいた!おい、和泉!」
当時はまだ違うクラスで、二人のクラスの前を友達と通りすがった七輝が足を止めた。
「ちょ、こっちに来い」
手招きをされ、七輝は友達に断ってから教室に入って来た。
「あんまり大きな声で呼ばないでよ。恥ずかしいじゃない」
七輝は小走りに側へ来た。
「何?」
「海に行かないか?」
「それ、新手のナンパじゃないでしょうね……?」
「違うっつの!他の奴らも誘って、固まって行くんだよ。もちろんお前の友達も来ていいし」
「冗談よ、冗談」
七輝は笑った。
「いいわね。面白そう」
(七輝も行くのか……)
行きたくない、行かないという気持ちが僅かにぐらついた。
そんな気持ちの変化などお見通しの光は、感じの悪い笑い方をしながら慎の腕をつついてくる。
「ほらほら、まこっさん」
「……」
「慎くんも行くんでしょ?」
行かないときっぱり言った手前、言い出しにくくて黙っていると七輝が聞いた。
「おれは……」
「行かないなら、はっきり言えよぉ?」
戸惑う自分を明らかに面白がる光の言動は、意地が悪い。
「行かないの?何で?行こうよ。慎くんが来てくれたら楽しいよ!」
おねだりするような目で、慎を誘う七輝。
(ああ、もうだめだ……)
何がだめなのかまだこの時点ではよく分からなかったが、無意識に慎は頷いていた。
「やった!楽しみだね」
七輝は手を叩いて、喜んだ。
予鈴が鳴り、彼女が急いで教室を出ていき、光が満面の笑顔で言った。
「俺の勝ちだな」
「……」
何だか悔しかったが、言い返すことが出来ないのも確かだった。




