Rem:10 連絡網作戦2
「七輝……」
これは、本当に夢なのだろうか?夢にしては、記憶に思い当たることがありすぎる。
三回とも現れた七輝と一緒に見ていた光景は、慎の中の思い出と一緒だ。
見たのは、どれも身に覚えがある。
そこまで行き着いて、慎はハッとした。
(最初から、夢なんかじゃなかったのか。これは記憶だ)
魂を失っても、中に慎がいることで生きている彼女の身体。
その身体が今まで歩んできた時間の中で、覚えていること。
幻というべきか。いや――きっと記憶の具現化なのだ。
だから、回想の中に七輝の思いが入り混じる。魂を失っても、まだ彼女はここにいる。
今、彼女と過ごしてきたどんな瞬間よりも、近い場所にいる。慎と七輝は一つなのだ。
「な、つきぃ……」
階段にみっともなく倒れ伏したまま、慎は涙を流した。
踊り場の女子生徒たちが、何ごとだろうと驚いてこちらを見ている。
慎はふらふらしながら立ち上がった。その時、階下から呼ばれた。
「和泉?」
「光……」
涙を拭きながら、慎は光を見た。そして言う。
「おれ、行かなくちゃ」
「え?」
この身体が記憶を覚えていられるのは、いつまでだろう?
消えないかもしれないし、消えてしまうかもしれない。
だったら早くしないと。
七輝に会いたいから。
きっと、彼女と過ごして来た思い出の場所に行けば、今なら七輝に逢うことができる。
戸惑う光を残して、慎は階段を駆け下りた。




