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七つ色SHINE ー絆ー  作者: Mayu
28/97

Rem:9 屋上2

畳まれたブレザーの上で腕組みをし、頭を乗せている。

フェンス際、シャツのまま気持ち良さそうに寝ている姿。


(……おれ、だ)


その横にブレザー姿の少女が寄り添い、手と膝を床について寝顔を覗き込んでいる。


「まーこーとーくん」

「うん……?」


目を開けずに答える。


「起きてくれたっていいじゃん」


七輝は口を尖らせた。


「じゃないと、キスしちゃうぞ?」

「!」


驚いて、慎は瞬時に目を開けた。


「あはははっ!本気にしたぁ」


慌てた姿を見て、七輝が笑う。


(からかわれたのか……)


「寝込みなんて……。エロい、七輝。男じゃあるまいし」


慎は、あくびをしながら言った。


「違うもん。ちゃんと女の子よ」

「うん」

「ところで、私の話聞いてた?」

「うん?……んー」

「その生返事は、また聞いてなかったな?めっ」


七輝は、ぷうっと頬を膨らませた。


「ごめん。怒った?」


肘をついて上半身を起こし、七輝の顔色を伺い見る。


「別に」


彼女は立ち上がった。


「話を上の空で聞いていました。……なんてことは、初めてじゃないし。たまには聞いてくれたっていいじゃないとか、寂しいとか全然思っていませんから」


(……思ってるんだ)


慎は苦笑した。七輝はこんな子だ。本当に嫌なことは、溜めておかずにはっきりと言う。

ストレートではなく口調もそこまで怒るわけでもなく、でも上手く言い回してくれる。


微妙な厭味が入るときもあるが、溜めておいて爆発してこじれるよりは余程いい。

それにこういうときに見せる、頬を膨らませた拗ねた表情もまた可愛い。

七輝に見とれていると、あることに気がついた。


「なつっ、ちょ……」

「なあに?」


急に慌て出した慎の様子に、七輝は背けていた顔を戻した。


「スカート!中!」


慎は目を腕で隠して、指摘をする。わずかな風に煽られて、スカートが揺れる。

慎は寝転がり、七輝は立っている。彼女は広がるプリーツを見て、慎の言いたいことを悟り、スカートを押さえた。


「慎くんのエッチ!」


(ええ?)


「それは不可効力……」

「見ないでったら!」

「うわぷっ?」


弁論をする為に思わず腕を退けたら、顔に何か落ちて来て真っ暗になる。


「そのままじっとしていて」

「……はい」


言う通りに返事をし、すぐに視界は明るくなった。

七輝は座っていて、膝にブレザーをかけていた。成る程。先程慎に投げ付けたのは、この上着だろう。

別にわざとではないけど、謝った。


「ごめん」

「……見た?」

「……」


黙っていると、七輝が身を乗り出してもう一度尋ねた。


「見た?見てない?」


正直捉えたのは一瞬で、それも色が分かったくらいだがそれでも見えたうちに入るだろう。


「み、見えました……」


怒られるかもしれないと身構えたのだが、予想とは逆に七輝は笑った。


「正直だね。『見えそうで見えなかった』とか、言い訳はいろいろあるのに」

「……怒らないの?」

「君のせいじゃないでしょ?それに、素直に話してくれたから。でも、誰にも言っちゃダメだからね。……光にも」

「言わないよ」


少し顔を赤くして、慎は言った。またブレザーに頭を乗せて寝転がり、七輝が首を傾げて聞いた。


「最近いつも、ここで寝てるね。どうして?」

「ん?……気持ちいいからかな。暖かさとか、風の具合とか」


慎は一度起き上がり、もう少し広めにブレザーを畳み直してそれを叩いた。


「やってみたら、わかる」

「え?」

「寝ていいよ」




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