プロローグ ―異変と変化―
「!」
おれは絶句した。眠りから目覚めた時、世界は変わっていた。自分が自分ではなくなってしまっていた。
これを他人に話したところで、妄想めいた変なことを言っていると思うのだろうが、その当時のおれ自身も何が起きているのかさっぱりわからなかった。
思考がついていかなかったため、ただ宙に浮く人差し指が小刻みに震えていた。
まるでドラマのような経験。それがわが身に降りかかるとは想像もしていなかった。
状況にただ翻弄される私の前に、いなくなった君は再び現れ、幸せの軌跡が甦る。
君を信じて待つおれの未来に、君は再び戻ってくれるのだろうか?おれの身に起こった現象の原因とは?
愛しい、寂しい、切ない。けれど君以外を愛すことなどできはしない。
不器用で能天気なおれは、その時になって初めて、自分があまりにも色々な想いに支えられていることを知る。
気がつくのが遅くてごめんな。そしてありがとう。
これはきっと君の願いなのだろう。その想いに生きて生かされていく――。
世の中には、いろいろなタイプの人間がいる。たくさんの人と広く付き合い、それこそ両手に余るほどの友人を持つ人。器用だと思う。
反対に細く狭く、ごく一部の人と深い関係を築く人。おれは間違いなく後者だ。
血縁を除けば、本当に大事に思う人間なんて、両手どころか片手にも足るほどの数しかいない。
でもそれでいい。不服は一切ない。
元々すれ違う人にすらにこやかに愛想をふりまけるような、そんなタイプではない。
その代わり、自分の指に数えられる人は、何よりも大事にしている。
何回かの出会いと別れを繰り返し、今、側にいるのは親友の光と七輝だけになってしまったが……。
しかし、また別れの時は不意に訪れた。ある日突然だった。――七輝はおれを置いて旅立っていた。