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収穫際  作者: 夜月紅輝
2/3

収穫祭(中)

 そして宴もたけなわといった具合の時、俺はジュースを飲みすぎたせいでトイレに行きたくなっていた。


「秀、トイレの場所を教えてくれない?」


「ああ、それなら廊下を出で突き当たり近くにあるよ」


「わかった。ありがとう」


 俺は笑いすぎて声を張りすぎたせいで若干痛くなっているのどに左手でのどに手を当てながら、もう片方の手でドアノブに手をかける。

 そして、ガチャりという音ともに廊下へ出ると――――不自然なほどに暗かった。

 その暗さはスマホで明かりをつけないと遠くまで見渡せないほどで、まるで家中の電気を消したかのような感じであった。


 ――――バタンッ


「ひっ!」


 俺は自分が出てきた扉が音を立てて閉まったことに驚いた。

 まさか誰がイタズラしてるのだろうかと思ってドアノブに手をかけるが、特に問題なくドアは開き楽しそうに遊んでいる四人の姿があった。


 ドアから四人がいる位置までそれなりに距離があるので、イタズラすればすぐには戻れないので、誰がやったかはすぐにわかる。

 だが、あの様子だと気のせいのようだ。もしかしたら、この廊下の雰囲気に勝手にビビっただけかもしれない。


 俺は一度深呼吸するとスマホで照らしながら、歩いていく。

 辺りを照らしながら色々見ていくと窓の外は黒い画用紙を貼ったのごとく何も見えず、明かりを照らしても先が見えない。

 わかるのは外からザーザーと聞こえ、その明かりに反射する雨だけ。


 廊下の壁に明かりを照らすと先程まで壁についていたランプが綺麗に消えている。

 取り外したような跡もなく、もともとそこには存在していなかったように。


「うぅ......さむっ」


 俺は思わず身震いした。

 この廊下に冷房でもかかっているのかというぐらい肌寒かった。もちろん、仮装しているからかもしれないが、それでも明らかにおかしいと思えるほどの寒さであった。


 ひとまず秀の言われた通りに廊下を進んでいく。そして英語でToiletと書かれた看板を見つけると思わず安堵した。

 まるで肝試しでもやっている気分だ。


 だが、トイレの場所まで着いてしまえばこっちのもの。あとは用を済ませて戻るだけだ。

 そして俺がドアノブに手をかけて開けようとすると――――ピチョンという音が聞こえた。

 それは水が滴っている音だ。しかも、ピチョンピチョンと何回も聞こえてくる。


「......やめよう」


 俺はもはや用を足す気分も失せていて、ドアを閉めて来た道を戻っていく。

 その時、ふと思った。ここだけ異様に暗いが、他の場所はどうなっているのだろうと。

 俺は怖いもの見たさのような感覚で秀に案内された道を戻っていく。

 そして玄関が見える位置まで戻って下階を見てみるが、そこも暗かった。

 その暗さは不気味さを醸し出し、なんとなく鳥肌が立ってくるようだった。


「どうされましたか?」


「うわぁ!?」


 俺は突然背後から聞こえた声に飛び退いた。すると、そこには最初に見かけた老紳士の執事であった。

 俺は心臓が飛び出るかと思ったが、落ち着いてる執事を見ていると少しだけ気分が落ち着いてきた。


「驚かせて申し訳ありません」


「いえいえ、勝手に驚いただけですから。それよりも、ここはこんなにも暗いですが何かあったんですか?」


「あー、少しばかり前に停電してしまったのですよ。ですが、ご心配なさらずすぐに回復しますので」


「ああ、そうですか」


「それで下の階になにか御用ですかな? 何かあれば部屋まで運ばせていただきますが」


「いえいえ、この暗さが気になってきただけなので! 特に用はないです!」


 俺は執事に焦ったように言い返すとすぐに元の場所へ戻っていった。

 あんなところで、あんな暗さで歩いていたら盗みでもする気なんじゃないかと疑われてしまう。

 もちろん、そんなことはないのだが、そう思われてしまう可能性も無くはない。

 なので、俺は急いで部屋に戻る。


 そしてその部屋のドアを開けると先程の空気とは一転、暖かく賑わっている四人の姿が会った。

 すると、秀が俺に告げてくる。


「随分と長かったじゃないか。そんなに場所分からなかったのかい?」


「三十分ってお前......食いすぎて便秘になっていたな?」


「こら、香織がお菓子食べてるでしょ! 汚い言葉を使わないの」


「全然大丈夫だよ。気にしてないから」


「ま、まあ、そんな感じ」


 俺は先程のことを言おうか迷ったが、執事さんがああ言っていたのでひとまず言わないことにした。

 すると今度は蓮が「トイレ行ってくる」と言って部屋を出ていった。

 俺はその出ていったドアの方を見ていたが、蓮は俺と同じような反応はしなかった。

 その様子を見て先程は本当に停電だったと思い始めた。


 そしてテーブルに置かれた自分のジュースで乾いた喉を潤していく。

 美味い。さっきは変にビビっていたせいで喉が渇いてしまっていたから、いつもよりも美味く感じる。


 俺はちょびちょびと飲みながら、テレビゲームに夢中の三人を眺める。

 楽しそうな雰囲気だ。一人が嬉しそうで、明るい笑顔......明るい?


 俺は思わずその言葉が引っかかった。

 先程よりも冷静になった今だからわかる。この明るさは変であると。

 それは先程の執事の言葉で今は停電しているはずだ。なのに、この部屋だけ不自然に明かりがついている。

 まさかここだけ別で発電していたりするのか? まあ、この家のことだからないとは言いきれないが、それでも可能性は低いだろう。

 それなら一体なぜ......


 俺はその瞬間、えも言えぬ恐怖に襲われた。

 全身の鳥肌が立つようにゾワゾワと感じてくる。

 この家は何かおかしい。そうにも思えて仕方がない。


 ――――その瞬間、部屋の電気がバッと消えた。


「うわぁ!?」


「きゃっ!」


「ひゃあー!」


「な、なに!?」


 俺達は思わず驚きの声を上げる。

 俺の心臓は妙にバクバクと周囲に聞こえるかもしれないぐらいに、激しく音を立てる。

 すると、そんな俺の心情を梅雨知らず、蓮の声が聞こえてくる。


「あーごめんごめん。思わず消したらどういう反応するのかと思ってさ」


「あー、そういうことか」


「もう、驚かさないでよ!」


「蓮の悪い癖が出たわね」


 三人は蓮に対して様々な言葉をかけていく。しかし、俺は何も言うことが出来なかった。

 なぜなら俺だけ明らかな違和感に気づいているからだ。


 それは――――テレビ画面から一切光が漏れ出ていないことだ。


 もしこの部屋だけが別の発電で明かりを付けていたとして、蓮が意図的に部屋の明かりを消したとすれば、テレビ画面からは明るさが漏れ出ているはずだ。

 なのに、何も見えてこない。真っ暗な闇がずっと広がっているだけ。


 俺は震えそうになっている声を抑えつつ、蓮に声をかけた。


「もう十分に楽しんだろ。明かりをつけろ」


「あーそれもそうだな......ってあれ? 部屋の明かりがつかないぞ」


「蓮、そういうのはもういいから」


「違う! 本当につかないんだ!」


「!」


 俺は蓮の切羽詰まった声を聞いた。その瞬間、机に置いたスマホを手探りで探すとすぐさま明かりをつける。

 そしてドアの方へと明かりを向けるとフランケンシュタイン!......じゃなかった、蓮だ。この状況でその仮想はかなり心臓に悪いな。


「蓮、本当につかないんだな?」


「ああ、見てみろよ」


 そう言って蓮は俺の目の前で部屋のスイッチをカチカチと何度も動かしていく。

 だが、明かりがつく反応はない。


「怖いよー」


「大丈夫だから落ち着いて」


「蓮、ドアを開けてみてくれ」


「ドアを? わかった」


 蓮は俺に言われるままにドアノブに手をかけてドアを開けた。

 するとその廊下はどこまでも黒い闇に包まれていた。

 照らしてもどこも見覚えのある廊下が見えてこない。まるでこの部屋から一歩でも出れば別の場所に移ってしまうかのように。


 するとその時、運の悪いことに俺のスマホは明かりを消した。

 充電が切れたのか電源からつかない。

 そのことに俺は半分いらだち、半分怯えながら使えなくなったスマホをポケットにしまう。


「なあ、蓮。廊下の明かりがついていないんだが?」


「あれ? おかしいな? 停電してるのか?」


「そ、それはさっきからそうなっていたぞ」


「いや、それはない。俺がトイレに向かった時には(明かりは)ついていた。」


「もうどうなってるの。怖い、怖いよー」


「「「......」」」


 俺達三人は何も言えなくなっていた。

 この中で一番怖がっているのは香織だからだ。

 暗くて分からないが、恐らくしゃがんで丸くなっていたりするのだろう。その香織を紗雪が慰めて......って待てよ?


 俺はその時ある不自然さに気づく。すると同時に廊下の方から一つの明かりが近づいてきた。

 闇の中からスっと現れたのは先程俺に停電していると伝えた執事であった。

 俺は恐怖で高まる心臓のうるささを感じながら、警戒するように執事を見た。


 するとその執事は手に持ったランプをかかげると俺達に声をかける。


「申し訳ありません、坊っちゃま。それから、坊っちゃまのご友人の()()()。この度は私の不手際で停電させてしまいました」


「そう......だったんですか」


「まさかじいやがね......でも、問題ないよ。むしろハロウィンパーティー気分がより高まった気がするし」


 俺は二人の声を聞きながら、執事の言葉に止まらぬ悪寒と冷や汗をかいていた。

 額にかいた汗が頬まで伝って流れていく。肌に突き刺すような寒さを感じ、喉は乾くくせに求めるように呼吸する。


 そして俺が気づいたことに香織が気づいて告げてしまった。


「ね、ねぇ、紗雪ちゃんはどこ?」

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