収穫際(前)
ハロウィン短編三部作です。
楽しんでいただけたら何よりです
「おーい、こっちだよー!」
「おせぇぞ。もっと早く来い」
「もしかして、寝坊とかしてたんじゃない?」
「い、いやー、道が混んでてさ」
「「「図星だね(な)」」」
「全員して言わなくてもいいだろ!」
俺は香織、紗雪、蓮の声を揃えた言葉に思わず言い返す。だが、実際その通りなので何も言えない。
「そういえば、しっかりと持ってきた?」
「うん、もちろん!」
「探すのに手間かかったけどな」
「まあ、こういうのはノリが大事なんだよ、ノリが。そんじゃ、早く行こう」
時は午後六時、俺達は現在ある家に向かうために集まっている。
そしてまた、今宵の月日は十月十六日――――世間一般的にハロウィンと呼ばれる日だ。
その言葉で大体何をするか察する人もいるだろうが、そう俺達はハロウィンパーティーをやろうとしているのだ。
といっても、やることは仮装してお菓子食ったり、ゲームしたりとワイワイするだけなのだが。
まあ、それぐらいが楽しいだろう。というか、むしろそれ以外に何をするというのだろうか。
あと二ヶ月で一年が終わるというわけか一日の太陽が出る時間帯も結構短くなっている気がする。
そのためか辺りは薄暗く、街頭の光がちょっとした不気味さを醸し出す。
とはいえ、俺達は四人でもうすでにその空気を払拭するような明るさで話しているので特に気にならない。
すると、目の前に秀の後ろ姿らしきものがあった。こいつが俺達に場所を提供してくれた人物だ。
そして俺達は足早に近づいていくと声をかける。
「秀、こんな時間に一人で歩いているなんて珍しいな」
「ああ、少しね。それで四人はどこへ?」
「どこへって秀の家に決まってるじゃないか。ほら、これ案内の地図」
「あー、これか。そういえば、渡してたっけね。あ、ごめんここ少し間違ってる。ここ一つ目通りを過ぎるんじゃなくて、三つ目通りを過ぎるんだよ。そうすれば自ずと家が見えてくるから」
そう言うとあらかじめ渡していた案内図に修正の言葉を加えていく。
あの優等生の秀にも間違えることはあるんだな。というか、普通自分の家までの経路を間違えるだろうか。
すると、秀は先に行って最後の準備するからと言って走り出す。
その後ろを俺達は不思議そうに眺めていた。
それから歩き続けること十数分......
「「で、でけぇー」」
「うわー、大っきいー!」
「さすが金持ちね」
俺は一つの豪邸にやって来ていた。
目の前には三メートルぐらいの立派な鉄柵の門があり、その隙間から見える豪邸は一体何人住めるんだろうかというぐらいに大きかった。
どう例えればいいかは分からない。ただ大きい。こればっかりが感想として思い浮かぶぐらいだ。
すると、一人の老紳士風の執事がやって来た。
「お迎えに上がりました。どうぞ私についてきてください」
その老紳士は門を開けてそう言うと丁寧にお辞儀する。
俺達はその丁寧すぎる反応に若干戸惑いながらも会釈で返すと歩き出した老紳士についていく。
それから、その老紳士が玄関を開けると秀の姿がそこにはあった。
「やあ、来てくれたかい。待ってたよ」
「でかいなお前ん家。本当に坊ちゃんなんだな」
「すごいねー!」
「なんだい? 疑ってたのかい? まあ、今どきじゃこれぐらいはさすがに珍しいかもね。ともかく、話の続きは中で話そう。さあ、入って」
「「「「お邪魔しまーす」」」」
俺は中に入ると突っ込む気も失せた。
中央にそびえ立つ凄そうな女神像。両サイドから上階へと伸びるレッドカーペットの敷かれた階段。そして天井には立派で豪華なシャンデリア。
なんだか庶民と金持ちの差を遠回しにまざまざと見せつけられたような感じだ。
羨ましいというか、むしろもうおなかいっぱいでごちそうさまですといった感じだ。
俺の感覚が間違っているのか分からないが、俺には住みずらい家のように感じた。
「それじゃあ、こっちだよ。ついてきて」
秀は俺達の方を見ていくつかある部屋のうちの一つを案内していく。
その場所は二回にあり、さらに少し廊下を歩いた場所にあった。まるでホテルのような感覚であった。
そしてその部屋を開けて中に入っていくとそこは一般的なのリビングと小部屋を足したぐらいの大きさであった。
つまりは俺達五人だと十分過ぎるほどに大きいということだ。
すると、蓮が秀へとこの部屋を見て思わず尋ねる。
「この部屋を自由に使っていいってことか?」
「まあ、そうなるね」
「なんだか気が引けるわね......」
「ふいに高価なものとか割ったらどうしよう......」
「心配しなくていいよ。そういうものはここから出してあるから。今日は好きに使ってくれていい。といっても、限度はあるけどね」
「わかってるよ。そんじゃ、早速仮装しようぜ!」
俺は秀の言葉におざなりに返すと早速本題に入った。
やはりハロウィンと言えば、仮装してなんぼだ。それに早く女子陣の仮装が見たかったりもする。その気持ちは持って然るべき、だって男の子だもの。
そして、香織と紗雪の二人は別室にて着替えに行き、俺達はこの場で仮装していく。
俺はドラキュラの仮装、蓮はフランケンシュタイン、そして秀はというと......
「「なんか一人だけレベルがちげぇ......」」
「ははは、そうかな? まあ、確かに凝りすぎたかもね」
秀の格好は死神なのだが、全身を覆い尽くすような黒いフード付きのコートに、まるで本物かのような頭蓋骨の仮面に鎌。
正直、俺達ド〇キ〇ーテ組とはレベルが格段に違っていた。
初見ならば間違いなく死神と認識するだろうレベルだ。
「お待たせー!」
「どうかしら?」
「「「おー!」」」
俺達があまりのレベルの差に落ち込んでいるとふと後ろから、ガチャりとドアの開く音ともに真打二人がやってきた。
そしてその二人の仮装を見ると香織が人狼の仮装で、紗雪が魔女っ子の仮装であった。
もともと落ち着いクールな印象のある紗雪は魔女っ子という少し幼めな衣装が違った魅力を引き出しており、明るく、可愛らしい顔立ちの香織は万人の心を奪い取っていくような破壊力のある犬耳と尻尾はもはや凶器である。
しかも、狼というよりは人懐っこい大型犬という形なので、是非ともペッ......ゲフンゲフン、愛でてやりたい気分になる。あくまで気分だよ!
「二人ともよく似合ってるよ」
「そ、そっかな......」
「ありがと」
秀は恥ずかしさも見せずにサラッと言ってのける。
こういう風に簡単に言えるのは素直に凄いと思う。
俺は言葉で言ったとしても、視線で邪な心が見透かされそうで何とも......今も若干見てしまってるし。
その時、蓮は俺の肩を掴んで生暖かい目をする。まるで同士とでも言っているような目だ。
いや、一緒にするな。絶対お前より俺の方が健全だ。
「よし、全員揃ったことだし、早速遊ぼうぜ!」
「だな。俺もとりあえず人生ゲームとかSwitchとか持ってきたけど」
「まあ、まずはアナログゲームからいこうよ。僕は趣味でそういうの持ってるし」
「へぇー、何があるの?」
「とりあえず、皆で盛り上がれるのが良さそうね」
それから、俺達のハロウィンパーティーは始まった。
きっかけは俺のちょっとした呟きだったが、まさかここまで来るとは思わなかった。
それに皆も乗り気になってくれるとは思わなかったし、場所を提供してくれた秀に感謝しないとな。
俺達は様々なもので遊んだ。パーティー用アナログゲームからSwitchを使ったテレビゲームなど。
それはそれは盛り上がった。しょうもないことでも腹を抱えるほど笑ったり、楽しんだり。
こんなにも楽しい日はそうそうないというぐらいだった。




