婚約破棄され、勇者パーティに追放された『人間嫌われ』の戦士は、無生物達(伝説級武器)に溺愛され擬人化した聖剣女子たちとスローライフを始める
魔王軍との対決ももう大詰めってところだな。
魔王城への侵攻作戦の決起会が王城で行われ、オレも出席したが、明日も早いため一足先に部屋へ戻っていた。
オレ――ユーリ・ストロガノフは最終決戦に向けていままでの戦いを振り返っていた。
我ながらうまく戦えていたと思う。
前衛として、魔法使いや聖女を身を挺して守り、魔法でひるんだ相手を勇者と協力して片付けてきた。
体を張り続けた結果、レベルも95とパーティ―内で一番高い。
これは誇っていいものだと思う。
ただ、オレのスキル「九十九神」はまだ使えるようになっていない。
そもそもかなりのレアスキルでどんな能力かだれも知らないのだ。
まあ、そのスキル抜きで戦えているのだから問題はない。
オレには勇者のような伝説級の武器や、派手なスキルはないけど、それでもパーティーにはしっかり貢献できているはずだ。
そもそもオレは武器の専門家であり、この愛用の鋼の剣でも伝説の武器を持った勇者だろうが遅れはとらない。
さあ、明日も早いんだし、寝るか。
おっと、その前に鋼の剣を磨いておくとするか。
きれいにしてやるからな。明日からも頼むぞ、相棒。
剣を磨くために立ち上がると、ノックの音。
「オレだ。今から5分後に広間に来てくれ。」
勇者の声だ。言うだけ言って立ち去る。
オレを見もしない。……恥ずかしがり屋なんだろうな。きっとそうだよな。いつもそう。
☆★
オレが広間に集まった時にはみんな集まっていた。
オレは元気に声をかける。
「よう、みんなおそろいのようだな」
「……」
まあ、いつものことなんだが、こいつら人見知りがひどいんだよな。参っちゃうぜ。
「お前に言いたいことがあってな。」
勇者が苦虫を噛みつぶしたような顔でオレに話しかける。
「スキルのことなんだが」
「オレのスキルの『九十九神』の効果がわかったのか!」
「ちげえよ!」
魔法使いが今にも吐きそうに叫ぶ。
「戦士のお前にステータス鑑定魔法かけていたんだが、うぜえことにレベルだけ高いだろお前。いままでオレとのレベル差でレジストされて見えなかったんだけどよ。この前、オレのレベルが上がったからようやくお前にも鑑定魔法が効いたんだよ。死ねよ」
なぜ、魔法が効いたら死ねばならないのか。冗談きついんだよな、魔法使い。
「それでさ、お前のステータス見たたんだけどさ、隠しスキルがあってな」
「隠しスキル?そんなめずらしいのがあったのか」
魔法使いがステータス石板を全力で放り投げた。あぶな!俺じゃなかったら死んでるだろ!
それにしても隠しスキルってなんだろ、わくわくするな。
「見ろよ。見たら死ねよ。」
だからなぜ、見たら死ななければならないのか。
「……?」
「オレのスキル、『九十九神』と……」
オレは目を疑った。
「『ゴキブリ』……」
え。
「『九十九神』の効果は鑑定できなかったんだけどよ、『ゴキブリ』のほうはしっかり書いてあったぜ。読めよ、音読しろよ」
「オ・ン・ドク!」
「オ・ン・ドク!」
魔法使いの悪ふざけに、勇者と聖女が悪乗りしている。
震えながら、その文字を読む。
「『ゴキブリ』このスキルの持ち主は、生きているだけで、殺したい程人に嫌われる。SSS級のレア・ペナルティスキルである。」
なにこれ、ひどい。
勇者たちはこらえきれず笑い出した。
「ひぎゃーっはっはっは。ひっでえSSS級のレアスキルもあったもんだぜ!あー、でもオレがお前のこと生理的に嫌いなのわかってよかったよ。魔王戦の時にこっそり魔法で焼き殺しちまうかってくらい嫌いだったからよお」
「おいおい、そこまでするのか、ひでえやつだな。ゴキブリでも生きてるんだぜ。でもなんか同じ馬車にいるだけで、その日一日人生が終わったような気分だったけど、謎が解けたぜありがとうな」
「なんだか、見るだけで病気移されそうで、あなたには近寄ってませんでしたけど、理由がわかって良かったですわ。まあ、だからといって近寄りませんが」
オレはなにがなんだか、呆然としていた。
いるだけで人から嫌われるスキル。そんなものあってたまるか。
「あー、おかしい。そういえばさあ、コドモがさあ、オレ等にウンコ投げてきたときあったじゃん」
「あー、勇者パーティーにウンコ投げるなんてひどいガキもいるもんだって思ったけど」
「あのウンコは戦士にぶつけられたものだったのですね」
覚えている。この町が魔物に襲われたとき、オレ達のパーティーで体を張って討伐したときだ。みんな勝利に沸いたけど、あの子だけはウンコを投げてきた。
今まで、
オレが外でご飯食べに行くと、みんな我先に店から出て行ったのも、
魔物に襲われたところを助けた少女に、ツバをかけられたことも、
勇者と魔法使いと聖女が前に3人で座って、後ろにオレっていう馬車の座席配置も、
全部全部、オレが、殺したい程嫌われていたからだっていうのか!
この『ゴキブリ』というスキルのために……
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
オレは慟哭した。
オレはホントは気付いていたんだ。オレは嫌われているんじゃないかって。
必死で気付かないふりをしていたが、もうどうしようもない。
そうだ、イザベラ。
オレの婚約者のイザベラなら、オレをわかってくれるはずだ!
「イザベラ……」
「感謝しろよ、オレが呼んでおいたぜ、感謝して死ねよ」
魔法使いが扉を開けた。そこには意地の悪そうな悪役令嬢にしか見えないオレの婚約者がいた。
彼女はキツい見た目のせいで、意地が悪く見えるのを気にしているだけの優しい女の人なんだ。
だから、イザベラ、君さえいれば……
「さ、触らないで!」
イザベラがオレの手を払いのける、どうしてだ、イザベラ。
「あなたに触られるくらいなら子宮にゴキブリの卵を産み付けられるほうがマシよ!」
おいおい、さすがにそこまで言われちゃオレも立ち直るも何もないぜ……
「なぜだ、じゃあなぜオレと婚約なんか……」
「金よ。シンプルに金が欲しかったのよ。魔王討伐の報奨金がね!」
うおおおおおおおおおおおおおお!!!!
「それに私、もう彼じゃないといけないの」
「ケっ、このメスブタがよお!」
勇者がイザベラの尻に蹴りを入れた。
「あはん」
「勇者てめええええええええええええ!」
「モテないからってひがむなよ。このクソ野郎が!」
うおおおおお!オレは素手で勇者に殴りかかる。
勇者が光った。
聖女は勇者の攻撃力を上げ、
魔法使いはオレの防御力を下げた。
「く、きたねえぞ。仲間内のケンカで支援魔法使うとは!」
ついでに、イザベラが口から毒霧をオレに吹きかけてくる。
ブシュウウウウウウウ!
毒霧はイザベラの唾液も交じって臭かった。
「臭えええええ!」
「失礼ね!」
オレが狼狽している間に勇者は飛び上がり、必殺の一撃のモーションに入った。
それは、魔王対策にオレと練習していた技。魔力を練り込んだ斬撃技だ。
完成した時に、二人で喜び合ったと思っていたが、あれはウソだったんだな、勇者ぁ!
「雷纏一刀閃!」
ぐああああ!勇者の一撃をもろに食らってオレは沈んだ。
「形だけ、礼を伝えておく。今まで世話になった。追放だ。ユーリ」
みなが広間から出ていく。
失った。仕事も、仲間も、婚約者も――何もかも。
いや、もともとなにも持っていなかったんだ。持っていたと思っていただけなんだ。
全部全部マボロシだ。オレは地面を這いつくばるゴキブリなんだ……
――オレには何もない。どこで何をすればいいんだ。
ふらふらとした足取りで部屋に戻った。
部屋に戻っても心にぽっかり空いた穴は埋まることは無かった。
もう、鋼の剣(相棒)を持って戦うこともないのかな。
せめてきれいにしてあげよう。
剣を拭き清め、聖水をかけてやる。
勇者みたいな伝説級でなくても、オレの相棒はお前だったよ。
ありがとうな。
今までの戦いの日々を思い出す。
あれ、前が見えない。なんだよ、雨でも降ってんのか。ハハハ、城の中だしな。そんなわけないか。
くそぉ……。大粒の涙がとめどなく流れ、剣を濡らす。
――泣かないで。ユーリ。
ん?なんだ?女の子の声がする。聞き覚えのない声だな、でもどこか懐かしい。
――何で泣いてるの?寂しいの?
別にそんなんじゃない。
――ウソだ。心がそう言ってるよ、ユーリ。
別に大したことじゃない。少し人恋しいだけだ。
幻覚でも何でも、君と話せてよかった。
――ヒトに会いたいんだね、ユーリ。嫌われても、疎まれても、だれもあなたを愛してくれなくても。
でも、それでも。
たとえ一生そうだとしても、傷つくだけだとしても。
だれかに一緒にいて欲しいよ。……一人は寂しいよ。
――私が一緒にいるよ、愛してあげる。
オレが抱えた鋼の剣が光って、人の体を成していく。
オレの部屋のステータス鑑定の石板の「九十九神」部分が光を発した。
しばらくするとそこには、銀の髪を腰まで伸ばした少女。
透けるような白く透明な肌に宝石のような赤い目の、とても優しそうな少女がいた。
生まれたままの姿でオレを見つめる少女を思わず抱きしめる。
少し冷たい。
「よし、よし」
少女はオレの頭を撫でてくれた。
「そこで寝ると風邪を引くからね。ベッドに行こうね」
少女はまるで小さな子を寝かしつけるようにオレをベッドに連れて行った。
「一緒にいるからね、寂しくないからね、ユーリ。寝れるまで一緒に手をつないでいようね」
彼女の小さな手は冷たかったが次第に温まっていく。
「ユーリが私を大切にしてくれたから、私は神様になれたんだよ。ヒトから愛されなくてもずっと私たちが見守っているからね……ずっと一緒だよ。ユーリ」
オレはずっと声をあげて泣いていた。しばらくずっと抱きしめられていた。
少女の手が、体が心地よくて。
優しさに甘えて、求めてしまった。
「……いいよ。でも、名前で呼んで欲しいな」
「……ねえ、名前を教えて」
「ふふ、私はハガネ。ユーリの相棒だよ、ずっとね」
ハガネはオレの求めに答えてくれた。
☆★
朝、うなされて目が覚めた。
「ユーリ、大丈夫?」
「あ。……うん」
昨日あったことを思うと、気恥ずかしくてまっすぐハガネの顔が見えない。
「うなされてたね」
「大丈夫だよ。さて、こんなところに長居は無用だからな。出るか」
外を見ると、勇者パーティ一行は出発式の準備をしている。
出る前に、しっかりとお返しだけはしないとな。
「さて、勇者が魔王退治に行く前に、勇者退治をしないとな」
「昨日やられたんでしょう。大丈夫?」
「昨日はハガネがいなかったからな。今日はいてくれる。大丈夫だ。一緒に行こう、ハガネ」
「うん!」
二人で部屋を出た。
☆★
王城を出発した城門から少し離れた所で、3人となった勇者パーティの待ち伏せをする。
「よお」
勇者達はこちらに気づくと、魔法使いがファイアーボールで攻撃してきた。
「さっさと行けよ。そこにいると殺しちまうぞ」
「あいにくお前に、いやお前らに用があるんでな」
「なんだリベンジしに来たのか。それにだれだ、その女」
オレはハガネを持ち、構える。ハガネは瞬時にヒト型から剣へと変わった。
「オレ一人しかいないが?目でも腐ったか?勇者様」
「くそ、昨日手ひどくやったっつーのによお。さっさと片付けるか。お前ら、手を貸せ。速攻で沈めるぞ。時間の無駄だ」
ハガネから教えてもらった『九十九神』の力はとんでもないものだった。
無生物の擬人化
無生物の従属
わかりやすくいうとこれが『九十九神』の力だ。
オレは昨日とは一味違うぞ?覚えたてのスキルの威力を味わえ!
「九十九神よ、我に力を貸し、眷属を呼びよせろ!」
オレがそう叫ぶと、勇者達の武器や装備がスポンっと脱げ、まるで意思を持ったようにオレのところへ集合する。
要するに勇者達は丸腰のスッポンポンにされた。
まあ、したのはオレなんだが。
「きゃあ!」
聖女が裸が見えないように体を抑える。フン、ばかめ。
聖女のもとへ跳躍するが、体がウソみたいに軽い。
「身体が武器と一つになったみたいでしょ?」
ハガネがオレにテレパシーで伝えてくる。
「昨日本当に一つになったから、心が通じ合ったから、二人で一つみたいに動けるんだよ」
武器と心が通じた効果らしい。あっという間に聖女の側へ。ハガネで斬ると手加減できないので、素手で顔面を殴った。
つもりだったが、聖女の顔面は体から離れピンポン玉みたいに飛んで行った。
すごく力が強くなっている。
「ふふ、合体したから私の攻撃力が加算されてるんだよ!」
これしばらく手加減なんて無理だな。聖女のクビが飛んでくのを見た魔法使いはスッポンポンで逃げようとしていた。
オレはそこらへんに落ちている小石を投げ、力の調節ができずに外した。
と思ったら、ブーメランのように戻って来て魔法使いの体にドッチボール台の風穴があいた。
これも『九十九神』スキルの効果らしい。
「ク、クソ、なんだその力は」
勇者はたじろいでいる。
勇者から先ほど取り上げた聖剣を手に取った。
「なにしてるんだ、どうせその剣はオレにしか使えない」
――す、すごい。なんなの?この力は。勇者との制約すら簡単にぶち破ってしまいそうなこの力は!私が、勇者に捧げた貞操を粉みじんにしてしまうようなこのエネルギーは何?
聖剣からもハガネのように声がする。
――バルムンク様、私のような無銘の一刀が話しかけるのもおこがましいですが、いまあなた様を手にしているものこそが、我らの王、無生物を束ねるものかと。
ハガネが聖剣に話しかけている。
――そうか、それならば良かった。どの道、私はこの者の力に抗えぬ。触れられているだけで、早く一つになりたくてたまらぬ。もう、ダメだ。
聖剣の抵抗が止まった。
どうもオレにも使えるようになったみたいだが、振ってみてもしっくりこない。
やっぱりオレには長年使いこんだハガネが一番だな。相棒を優しく握る。
――ねえ、ユーリ。バルムンク様もいるのに、私でいいの?
うん。オレはお前がいいんだ。
――ありがとう、ユーリ。
斬りかかろうとしたその瞬間、勇者はすっぱだかのまま、逃げ出しているところだった。
オレは、追いかけるか迷った。でも……
――追わないの?
うん。あいつもオレを殺さなかったし、あいつはオレを名前で呼んでくれたから。
――そう。……いいと思うよ。
そろそろ王城の連中が気付くころだな。
ハガネ、聖剣たち抱えて持っていくのを手伝って。
――ん?動けって言えば、自分で動くよ、みんな。っていうか、私戻るね。
ハガネが少女に戻った。ハガネはオレの顔を覗き込むと
「ユーリ。いい顔になったね」
「そうかな」
「うん。すごくかっこいい」
ハガネは、素直でとてもかわいい。
この子とだったら、どこへでも行けそうな気がするな。
オレ達はどこともなく走り出した。
擬人化ハーレムしたいなって思って書きました。
楽しんでもらえたら嬉しいです。
連載版はじめました!読んでくれたらうれしいです!




