密室
「うざいんだけど!」
リオの声が、耳をつんざいた。
やはりトイレの中にいるらしい。ただし女子用ではなく、男子用の方に。
嫌な予感がする。
すぐさま中に入ると、男子高校生の集団が視界に飛び込んできた。
人数は五~六人ほど。全員が制服姿で、髪を茶色く染めている。
少年の群れは輪になって、リオを取り囲んでいた。
「あんたなんかに興味ないって、何回も言ってんじゃん」
リオは初めて会った時のような、きつい声を発している。大層ご立腹の様子だ。
こいつらに捕まり、無理やり連れ込まれてしまったのだろうか?
……だろうか、なんて悠長なことを考えている場合ではない。
それ以外にこの状況を説明出来るはずがない。
俺は一歩近付き、ガキどもに声をかけた。
「お前ら何やってんだ」
一斉に全員がこちらを振り向く。
リオはほっと安堵したような顔を見せ、「中元さん!」と叫んだ。
同時に、少年達がざわつき始める。
「……中元?」
「すっげ。マジシャン中元じゃん」
「おー本物だ。ケツバットの人だ」
「つかリオの知り合いなん?」
少年達の関心は俺に移ったらしく、リオを包囲する輪が崩れている。
すると今がチャンスとばかりに、隙間からリオが飛び出してきた。
俺の後ろに素早く隠れ、「ごめん、名前言わないほうがよかったね」と小声で謝ってきた。
「……二人はどういう関係よ?」
「おっさんと女子高生で仲良さそうなら、あれしかなくねえ?」
「エンコーか」
「ありえねー! 一発退学じゃねこれ」
少年達は口元に下卑た笑いを浮かべ、スマホをかざしている。
パシャパシャと撮影音が繰り返され、俺とリオのツーショットを写真に収めていく。
「あー隠れんなよリオ」
「問題ねーよ、俺の位置だと二人とも写ってっから」
「おっ、いいじゃんいいじゃん」
こいつらが何をしたいのかは、なんとなくわかる。
俺は紅茶をリオに持たせると、「お前は何も悪くない」と言って前に出た。
俺と対峙するように、リーダー格と思わしき少年も歩み出て来る。
長身長髪で、俺より頭一つ大きい小僧だ。百八十センチ以上あるだろう。
顔立ちは甘めに整っていて、若手俳優よりもアイドル風だ。
少しだけ着崩したブレザーの制服が、嫌味なくらい似合っている。
「そんなちんけな写真で脅すつもりか? その程度で捕まるほど理不尽な国じゃないだろ」
「んじゃこれ今すぐネットに上げていい? リオと密着してるのが撮れたんだけど」
「……それは」
「やっぱ困るんじゃねーか。いきんじゃねーよ」
長身の少年は、嗜虐的な笑みを見せた。
背後でリオが囁く。
「あいつがあたしに告ってきた男子。サッカー部の藤本。顔はいいけど中身はこの通りだよ」
声は震えていた。ごめん、あたしのせいで、とも続けられる。
「俺らさぁ、別におっさんを脅迫しようとかは思ってねーから。黙って出てってくんない? その間に全部終わるから」
「何をするつもりだ?」
「さー。それはリオの頑張りによるんじゃねーの。あいつのテクとやる気次第で、内容は変わるだろうし?」
ゲラゲラゲラ、と一斉に笑い声が広がる。
藤本は仲間達と目配せをし、おかしくておかしくてしょうがないといった様子で笑っている。
「俺らすっげえ溜まってんだよね。どうせエンコー女なら何やらせたって一緒じゃね? おっさんもリオで遊んでんだから俺らの同類っしょ。堅いこと言ってねーでさあ、」
最後まで聞く必要はない。これ以上は耳が汚れる。
【勇者ケイスケはMPを295消費。神聖剣スキルを発動。攻撃力が350%アップ】
【霊体、悪魔、アンデッドに対して特攻状態となります】
右手に光の刃を発生させ、ガキどもの間をすり抜ける。
一瞬で全てが終わった。
藤本が得意気にかざしていたスマホは細切れに切断され、断面から白い煙を上げている。
他の連中が持っていたものも、同様に刻んである。
「言っておくが、その気になればお前ら自身も裁断出来るんだ。わかったらさっさと帰れ」
ブレザーの集団は、面白いように同じ顔をしていた。顎がガクリと落ちて、唖然とした表情だ。
だが次の瞬間、俺も同じ顔にさせられた。
「なんだ今の? 光剣に見えたな。まさかてめー神聖剣使えんのか」
藤本は、あまりにも的確な推理を見せつけたのだ。
いくらなんでも一介の男子高校生にしては、事情を知りすぎている。
俺は剣を構えながら、すり足で後退した。
「お前、何者だ?」
「そっちこそどうなってんだよ。ただのインチキ手品師じゃねーのか」
急ぎ、藤本のステータス鑑定を試みる。
【名 前】アギル
【レベル】65
【クラス】召喚冒険者・男子高校生
【H P】2200
【M P】1200
【攻 撃】1500
【防 御】1300
【敏 捷】1700
【魔 攻】1000
【魔 防】1000
【スキル】言語理解 夜目 土魔法
【備 考】ホブゴブリンの戦士。日本の男子高校生、藤本康介の身分と姿を奪い取っている。低級な偽装であるため、鑑定をごまかせない。
「……あ?」
予想外の結果に、我が目を疑う。
なんだって?
こいつがゴブリン?
「そうかそうか。おっさん勇者だったか。ただの人間じゃねェなら……殺していいよな?」
藤本、いやアギルは粘っこい笑みを口元に貼りつけながら、仲間に指示を送った。
「人避けがいるわ。入り口に消音と認識阻害系の結界張っとけ」
「嗅覚阻害はいるか?」
「んー。やっとくか。腹切るかもしんねーしな」
現代の高校生の口から発せられる、ファンタジーな単語の数々。
その違和感に、頭が混乱する。
認識阻害は、中級以上のモンスターが使う補助魔法だ。おそらくこのトイレは今、外からはただの壁に見えているはずだ。
消音は音が漏れないようになり、嗅覚阻害も文字通りの性能。
これらは全て、冒険者が増援を呼べないよう妨害し、ダンジョン内で孤立させるための呪文だ。
地下に巣を作るタイプの魔物が、好んで使用する傾向にある。
そう、主にゴブリンなどが。
「どうするよ? ここ、今から三時間は隔離空間だぜ?」
アギルは愉快そうに唇を歪めた。
「だからなんだ?」
「わっかんねえかなあ。おっさんはもう、叫んでも泣いても無駄ってことよ。例え骨を折られようが、腹をかっさばかれて内蔵を抜かれようが、誰も気付いてくれない。助けてくれない。お前の悲鳴は届かねえ……キヒ、キヒヒ、ゲハハハハハハハハア!」
アギルは雄叫びを上げながら、飛びかかってきた。口上の割に、身のこなしはさほどでもない。
半歩横にずれるだけで、楽々と攻撃をかわせた。
やつの右腕は滑稽に宙を切っている。簡単に掴み、ひねりあげることが出来た。
関節とは逆方向に曲げ、骨を砕く。
「がっぎゃあ!」
痛みに悶えるアギルの顔に、「解呪」と呟きながら触れた。
すると見目麗しい少年の風貌はかき消え、醜い小鬼が正体を現す。
緑色の肌に、尖った耳と鼻。シワだらけの矮人といった外見で、身長は俺より低くなっている。
「ひょっとしてお前ら、全員こんなだったりするのか?」
俺は制服の集団に、一斉に解呪をぶつける。
予感は的中。
どいつもこいつも、薄汚い雄ゴブリンだ。
「……あ……あ……」
リオは声にならない声を漏らし、ずるずると崩れ落ちていた。
ぺたんとヘたり込み、体を震わせている。
この少女は窮地に追い込まれると、意外に小心者なのを忘れていた。
「リオ、しばらく目閉じてろ」
相手が人間でないならば、一切手心を加える必要はない。
それは即ち、これから残虐極まりない光景が始まるということだ。
とても戦闘訓練を受けていない少女に見せられるものではない。
俺はリオが目をつむったのを確認すると、自分自身に解呪をかけた。
デバフが解除され、本来の筋力と耐久力が戻ってくる。
「お前を抱えたままでは動き辛いな」
俺はまず、アギルを邪魔にならないよう隔離することにした。
四肢を切断し、片っ端から個室の中に放り投げる。もちろん、アギル本体もだ。
ゴブリンは回復系の魔法を使えない。これで当分は無害だろう。
残った五匹に目を向ける。
どうやら同胞の受けた仕打ちに、怒り心頭といった様子である。
「ふざけんじゃねえぞ! 地球にてめーみたいなのがいるなんて聞いてねえ!」
中でも一際激しい怒りを見せるゴブリンが、俺の腹を殴りつけてきた。
以前よりさらに硬度の増している俺の腹筋に、素手で打撃を加えたのだ。
これではコンクリートにリンゴを思い切り叩きつけるのと、そう変わらない。
単なる自爆行為でしかない。
「いってえ!」
拳を抑えて悶絶するゴブリンを、一刀両断にする。
リオを人質に取られては面倒だ。早く終わらせよう。
俺は間髪入れずに踏み込み、流れ作業で残党狩りを始める。
狭い空間でゴブリンを仕留めるのは慣れている。
かつては日課だったのだ。
「助け……!」
出口に向かった一体は、魔法の矢でアキレス腱を撃ち抜く。転んだ背中に飛び乗って、脊髄を切断。
身動きが取れなくなった死体を、別のゴブリンに投げつける。
足元に転がる敵は、転倒の元だ。さっさと投擲するに限る。
「ぐぎゃ!」
直撃を受けたゴブリンが、仰向けにひっくり返る。
もつれた敵集団に、まとめて剣を突き立てる。
息絶えたゴブリンどもを、一つ一つ魔法で焼いていく。
火事の恐れはない。実体を持たない魔力の炎は、目標以外の物体を燃やしはしない。
面倒な作業だが、証拠を残す訳にはいかない。
時間をかけて行なう。
「さて」
五匹消した。
仕上げに、アギルを放り込んだ個室に向かう。手足を失った、惨めな小鬼の元へと。
「どうしてお前だけを生かしたかわかるか?」
「尋問用だろ」
「話が早いな」
俺はアギルの頭を右手で掴み、持ち上げる。
「なぜゴブリンがここにいる? どうやって来た?」
「無理だね。知らねえもんは知らねえ」
「雇い主でも庇ってるのか? 下等種族にしちゃ見上げた根性だな」
「ちげーよ」
ゴブリンの口にはそぐわない、日本の若者言葉でアギルは言う。
「俺ら、記憶に制限かかってるからな。自分でもなんでここにいるかわかんねーんだよ。誰かとんでもなく強くて偉いやつに送り込まれたのも、大事な記憶を消されたのも覚えてる。でもそれだけだっつーの。残念だったな、勇者様」
アギルの腹に蹴りを入れる。
「ぎぎゃあ!」
ゴブリンの精神力など、大したものではない。
痛めつければすぐに事実を吐く。
「知らねえ! 本当に知らねえ! もう殺せよ! なんにも知らねーんだから!」
「もっと舌の滑りをよくしたら、手足を再生させてやってもいいが」
「知らねーんだよおおおお! 俺も喋りてーんだよ! でもわかんねーんだよ! 畜生が! こっちだってじれったいんだよおお! 話せるものなら話してえよ! 助かりてえよ!」
「本物の藤本康介はどうしてる? これもわからないのか?」
「俺が知るわけねえだろ! 気がつきゃ人間の姿に変身出来るようになってただけだ!」
アギルを握る手に力を込め、みしみしと頭蓋骨を締め上げる。
「あぎゃあ! 痛い痛い痛い痛い! 知らねえ! ほんとになんにもわかんねえ!」
「いつ頃から藤本の身分を手に入れた?」
「去年からだ! 痛えって!」
「まだまだ潜伏してるゴブリンはいるのか?」
「そう聞いてるけど、誰がそうなのかは俺も把握してねーよ!」
「嘘はついてなさそうだな」
「……ひぎ……ぎっ……ここまで話したんだ……等価交換だろ……俺を治療しろや、ゲス勇者……」
俺は切り落としたアギルの手足を燃やしながら、言う。
「俺には内縁の妻がいた。ゴブリンのせいで、人生を奪われた女でな。俺はあいつと出会って以来、目についたゴブリンは片っ端から殺している。ゴブリンの魂は救いようがない。生まれついての悪だ。だから命を奪ってやるのが一番の治療なんだ。そういうわけで、お前にも死んで貰う」
「……は……?」
「次はもうちょい上等な生き物に生まれ変われよ。まあ、簡単だろうけどな。ウジだろうがゴキブリだろうが、お前らよりは位が高いんだから、何かに生まれ変わった時点で前世よりはマシだ」
「嫌だ! 嫌だあああああ! 殺すな! 殺すな殺すな殺すな殺すな! それが勇者のすることかよ! ふざけんじゃねえ! これなら早いとこ殺された方がマシだったじゃねえか! 喋り損だ!」
「じゃあな」
べき、と首の骨を折ると、アギルは動かなくなった。
死体は、魔法で焼いた。
俺は個室を出て、リオに声をかけた。
「もう目開けていいぞ」
手洗い場に向かい、蛇口をひねる。
切断と同時に肉を焼く光剣を用いたため、返り血などない。
だがそれでも、汚れ仕事をしたという実感がある。
たっぷりと液体石鹸を使い、念入りに手を洗う。
ハンカチで手を拭き、リオに近付く。
「帰るか」
「……あいつらのこと、殺したの?」
「ああ。人間じゃないからな。入れ替わった時期を考えると、藤本はお前にちょっかいを出してきた時にはもう、中身が別物だったようだな」
立てるか? と手を差し出す。
リオは弱々しく握り返してきたが、中々立ち上がろうとしない。
「……ごめん、足に力入らない。腰抜けちゃったみたいで」
「そりゃ不味いな」
恐怖心で足腰が立たなくなったのだから、ダメージを負ったのは精神だ。
肉体を癒やす回復魔法で、治せるものではない。
どうすればいいのだろうか?
カウンセラーに見せるのが一番なのだろうが、突然ゴブリンの集団に襲われましたと告白した場合、心の傷ではなく幻覚を疑われる気がする。
俺はしゃがみ込み、視線の高さをリオと同じにする。
「もう化物はいないんだ。何も心配は要らない」
「……わかってるんだけど」
でも力入らなくて、とリオは自分でも困っているような顔をしている。
カクカクと震えた膝を、「あれ? なんで?」と言いながらバシバシと叩いていた。
「ちょっとここで休んでくか。どうせしばらくは人が入ってこないだろうし」
「……ん」
いくらなんでも便所の床に座りっぱなしはどうかと思ったので、そっとリオを抱き上げる。
いわゆるお姫様抱っこだ。
「あ」
真っ赤になっているリオに、強化付与を施す。
今の俺の腕力だとどこかを握り潰しかねないので、必要不可欠な措置なのだ。
俺は強すぎる体を、リオは弱すぎる体を持て余している。
ままならないものである。
個室の扉を開け、便器の蓋を下ろす。その上に、リオを座らせる。
「……あいつらってなんなの」
「モンスターだ。この世界の住人じゃない」
俺はリオから少し体を離して、顔をそらした。
アギル達との会話は聞かれていたのだ。いくら亜人相手とはいえ、無慈悲な殺戮そのものだった。
リオはきっと、俺にも恐怖心を抱いていることだろう。
「なんでそんなのが学校に紛れ込んでたの? 中元さんの使う不思議な力と、関係あるの」
「わからない。だが無関係ではないかもしれない」
もうこの子とは、以前のような関係に戻れないかもしれないな、と思う。
そりゃあ初めて会った時も暴力を見せつけたが、殺しまではやらなかった。
何事にも限度というものがある。
強い男が好きな女はいくらでもいるが、残酷な男を好きな女は滅多にいない。
「……さっきの中元さん、怖かった」
「だろうな」
よくあることだ。
魔物にさらわれた少女を助け出すと、怪物を見るような目で見られる。
化物を倒すたび、化物に近付いていく。
強さと人間らしさは、両立しないのである。
「引いたか?」
この質問、喫茶店ではリオの方がしてきたんだったな、と内心おかしくなる。
笑うような場面ではないはずなのに、自然と口の端が緩む。
俺はもうおかしくなっているのかもしれない。
「……割と」
リオの返事も、あの時のやり取りを逆にしたものだった。
「でもそれ以上に、格好いいって思ったよ」
「気を使わなくても構わないぞ」
「おべっかなんかじゃないもん……」
リオの声は、今にも泣き出しそうになっていた。
「あたしのために頑張ってくれたんだよ。嫌いになるわけないじゃん……」
「手足をぶった切って焼いたんだぜ。鬼より鬼らしいと思うけどな」
「……怖いけど、好き……」
「ああ?」
「好き……」
リオは両手を伸ばして、泣きじゃくっている。
「……ぎゅってして欲しい……」
小鬼をなぶり殺した俺を、好きだと言ってくれるリオ。
脳裏に、エルザと出会った時の場面が蘇る。
薄暗い鍾乳洞。目の前でゴブリンを殺したというのに、俺を受け入れてくれたエルザ。
俺の中で、二人の姿が重なる。
長くて黒い髪も、寂しげな瞳も、細身の体も。本当によく似ている。
気が付くと、俺は便器の上に座り込んでいた。
向かい合う形で、リオを抱き締める。
体が勝手に動いていた。
「……すっごい怖いけど……好きだよ……どっちの気持ちの方が大きいのか、自分でもわかんない……」
リオの頭を撫でる。烏の濡羽色の髪が、指の間を流れ落ちる。
さらさらとした感触に、理性が遠のきそうになる。
まさに魔性。女の髪は、男を惑わせる。
【中元圭介は戦闘に勝利した!】
【EXPを6000獲得しました】
【スキルポイントを300獲得しました】
【斎藤理緒の好感度が9999上昇しました】
【斎藤理緒の好感度が上限を突破しました】
「……それ気持ちいい。自分の指で触るのと、全然違う」
リオは目を閉じ、か細く息を吐いている。
ただ髪を弄んでいるだけなのに、顔が火照り始めている。
【斎藤理緒の好感度は、合意なしの性交渉が途中で合意ありになるレベルに到達しました】
【実行に移しますか?】
【実行した場合、一定の確率で子供を作ることが出来ます】
【産まれた子供は両親のステータス傾向と一部のスキルを引き継ぎ、装備、アイテムの共有も可能となります】
【また子供に対してはクラスの譲渡も可能となります】
リオは俺の胸に顔を擦り寄せると、「見て、ちゃんと足動く」と囁いた。
しなやかな足が、俺の背中に絡みついてくる。
「……直ったみたい。くっついたおかげで、安心したんだと思う」
「ならよかった。外出るか?」
「んーん」
リオは小さく首を横に振った。言い方も仕草も、いつもより子供っぽい。
「足使えるようになったから、色んなこと出来るよ」
【斎藤理緒の性的興奮が99%に到達しました】
リオの目は潤んでいた。
耳まで赤く染まり、呼吸が早くなっている。
「最後まで、したい……」
ねだる声は、童女と娼婦の中間。
相反する二つの音色を使いこなして、俺の体を求めてくる。
「駄目……?」




