表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: タカハシ ヒロ
第九章 護国の剣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

290/291

発掘、激レアさん


 ムーンガールの冠番組、正式名称『月面旅行』は、毎週月曜深夜に放送されることとなった。

 記念すべき第一回は一時間スペシャルで行なわれ、メンバーの自己紹介にあてられるらしい。


 が、そういった概要はどうでもいいのだ。

 重要なのは、どんな女の子が揃ったかである。

 今日は初顔合わせ兼、打ち合わせ。俺にとっても向こうにとっても、探り合いとなる一日だ。


「「「よろしくお願いしまーす!」」」


 ドヤドヤと楽屋に押しかける、総勢三十名ものアイドル達。おっさんの俺にはもはや見わけもつかないが、全員が厳しいオーディションを勝ち抜いた精鋭だと聞かされている。

 とはいえ握手券を売りにしたグループなので、歌やダンスの技能を審査されたわけではあるまい。

 ルックスと愛想の良さ、あとは健康状態をチェックした程度だろう。


 ……スキル重視のグループの方が、戦闘向きのスキルを持ってそうなんだけどな。


 けれどそういう「本物」の人材は、バラエティ番組なんぞに出ないのである。

 出所の怪しい芸人が気軽に近付けるレベルとなると、このあたりが限界なのだ。

 俺はあまり期待しないまま、ステータス鑑定に移った。


「私、前々から中元さんのファンでぇー」


 媚びた声で営業トークを仕掛けてくるリーダー、桜木桃香(さくらぎももか)。スキルもステータスもボロボロで、戦闘はおろか、芸能界を生き残れるかどうかも怪しい。

 次。


「黒澤プロデューサーと仲いいってほんとですかぁ?」


 グループトップの長身、鈴木美紀(すずきみき)。……なんと、保有スキルは「枕営業」!

 俺を見る目が肉食獣なのが心臓に悪い。

 こいつもダメ、次。


「自分は、早く踊りたいさー」


 ――沖縄訛り?

 独特のイントネーションに思わず顔を上げると、日焼けした女の子と目が合った。

 ……どこかで見たような顔だ。だが、思い出せない。

 

「君……」

「や、やっぱり標準語で話した方がいいですか? 地方の子は、方言出した方がキャラが立つって言われたから」

「いや、そのままでいい。それより君――格闘技の経験でもあるのか?」

「なんでわかったさー!?」


 戦場暮らしが長かったせいだろう。物腰や筋肉の付き方で、なんとなく感じ取れるのだ。

 この子は当たりかもしれない。

 俺は期待を込めた声でたずねる。


「名前は?」

「……具志堅陽子(ぐしけんようこ)


 この子の持ちネタなのか?

 そこかしこでクスクスと笑い声が漏れる中、褐色の少女は恥ずかしそうに俯いた。


「はは。そういうボクサーいたよね。で、本名はなんていうんだい?」

「これ、本名さー」

「え」

「親が再婚したら、苗字が具志堅に代わって。それでこうなっちゃって」


 どういう確率だよそれ?

 だが、覚えやすい名前というのはある意味最強の武器かもしれない。タレント活動をする上では有利に働くはずだ。


「なるほどね。……ステータス・オープン」

「?」


【名 前】具志堅陽子(ぐしけんようこ) 

【レベル】2

【クラス】女子中学生

【H P】125

【M P】170

【攻 撃】125

【防 御】125

【敏 捷】130

【魔 攻】200

【魔 防】200

【スキル】琉球空手 ユタ

【備 考】幼少期より空手の鍛錬を積んできた少女。沖縄系タレントの復興が目標。



「ユタ?」


 無意識に発した声に、陽子は反応した。


「なんでわかったさー?」

「……なんかそれっぽいなと思って」

「へえー?」


 苦しい言い訳だったが、「それがわかるってことは、中元さんも霊感みたいなのがあるのかも」と納得しているようだった。

 陽子が言うには、ユタというのは沖縄の民間霊媒師――いわゆるシャーマンを指す言葉らしい。


「うちの家系は、お婆ちゃんも曾お婆ちゃんもユタさー。お母さんだけなれなかったけど」


 どうりで魔力が高いわけだ。

 おそらく彼女の一族は、「ガチ」のシャーマンなのだろう。

 おまけに身体能力も一流だし、それに……。


 上から下まで、舐めるように陽子を観察する。

 沖縄出身らしく、本土の人間より彫りの深い顔立ちをしていて、表情には南国的な明るさがある。

 ぱっりちと大きな目。真っ赤な唇。肩のところで切り揃えられた茶色の髪、それより少し淡いブラウンの肌。


 身長は一五〇センチ程度だろうが、出るところはしっかり出ているように見受ける。おそらくCカップ前後で、味はソルト系だろう。スポーツ少女は汗の味と相場が決まっている。クロエ含む複数の元気っ娘がそんな感じだったし……いや今は味などどうでもいい、それは後で確かめるべきことであって。


 要するにこの子は。

 能力・容姿ともに申し分のない、激レア人材というわけだ。

 握手券で無理やりCDを売り抜くようなグループにはもったいない、本物の逸材――


「陽子っていったね」

「は、はい」


 ガチガチに緊張する南国美少女に、そっと耳打ちをする。


「二人きりで話したいことがある。打ち合わせが終わったら、スタジオに残っててくれるかな」

「……?」


 俺は何事もなかったかのように、残りの面々の能力鑑定を行った。

 当たり人材は、他には見つからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーバーラップ文庫様より、第三巻発売中!
今回もたっぷりと加筆修正を行い、書下ろし短編は二本収録! そしてフィリアのあのシーンにも挿絵が……!?
↓の表紙画像をクリックでサイトに飛びます。
i358673
― 新着の感想 ―
[一言] 個人的には主人公が力は現代兵器で代用とかでのが現代兵器は基本弾薬系で使い捨てとかで特にミサイルとかが補充とか相当にでだろで、自衛隊が来て米軍とかも協力してもある程度以上続くとだろで、日本は島…
[一言] 「私、前々から中元さんのファンでぇー」  媚びた声で営業トークを仕掛けてくるリーダー、桜木桃香さくらぎももか。スキルもステータスもボロボロで、戦闘はおろか、芸能界を生き残れるかどうかも…
[良い点] 赤裸々に少年勇者の心情を表現している点。 [気になる点] 続き。 [一言] ここまで一気読みでした。 作品は完結してませんが、他作品に無い主人公の壊れっぷりが十二分に描写されていて、満足感…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ