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 仕方ない、ショック療法でいくとするか。

 俺はベッドに歩み寄り、真乃ちゃんの隣に腰を下ろした。

 すると一瞬でフィリアの眼光が鋭くなったのだから笑えない。


「そういえば誰なんです、この小娘は」


 小娘呼びか。

 フィリアは基本、自分より若い女には敵愾心まんまんである。


「この子は真乃ちゃんっていうんだ。なんとまだ十四歳だ」


 よろしくお願いします、と真乃ちゃんは小さく頭を下げる。

 一方フィリアは、大人気なくガンを飛ばしていた。


「ケイ君はモテるから仕方ないけど、私という本命がありながら若い娘とじゃれつくのは、どうかと思うの」

「四十五にもなってそのポンコツ具合もどうかと思うぞ……いいからさっさと元に戻れや」


 言うや否や、俺は真乃ちゃんの体を抱き寄せ――


「!」


 おもむろに、唇に吸い付いた。

 フィリアに見せつけるかのように。

 いや「ように」じゃなくて、まさに見せつけるために。


 平成生まれの口内に昭和生まれの舌をねじ込み、じゅるじゅると音を立てて唾液をすする。


「あ゛ーーーーーーーーーーーー!!!」


 フィリアはまるでガチョウが絞め殺されてる時のような、きったねえ声で喚いていた。

 うむ、いい悲鳴である。

 ちょっとは目が覚めたか?


 ちらりと視線を向けてみると、悪魔憑きとしか言いようのない顔で髪を振り乱しているのが見えた。

 どんどん比喩が悪化していくのは俺としても心苦しいので、さっさと正気に戻ってほしいのだが。


 やれやれ。もう少し強い刺激が必要なようだ。

 俺は情報収集という崇高な目的のため、心を鬼にして真乃ちゃんの乳を揉み始めた。

 十四歳の膨らみかけっぱいはなんとも頼りない手応えで、服の上からではあまり揉んでいる気分になれない。

 

 そういうわけで、襟ぐりから腕を突っ込んで、直に揉んでみることにした。

 

「あ、あああ……あああ……勇者殿は私の……」


 フィリアはいよいよ元の口調を取り戻し、青ざめた顔で口をパクパクさせている。

 やはり行き遅れ女の眼前で若い女とイチャつくのは、効果絶大なようだ。

 これで本題に入ることができるな、と真乃ちゃんを離そうとした瞬間、フィリアがずい、と顔を近付けてきた。


 なんだ? 文句の一言でも言いに来たのか?

 まさか真乃ちゃんに危害を加えたりしないだろうな、と視線で牽制をしていると、


「私の……」


 にゅるり、と生温かいものが口の中に入り込んできた。

 フィリアの舌だった。


「――!」


 何考えてんだこいつ!?

 いくら独占欲が強いからって、他の女の子とキスしてる時に割り込んでくるか!?

 口の中で舌が渋滞起こしてんじゃん!


「んむぐ……っ!?」


 フィリアは凄まじい勢いで俺の中に潜り込むと、ぐいぐいと真乃ちゃんの舌を押し出し始めた。

 どうやら俺の唇を独り占めしたいようだが、真乃ちゃんも負けてはいない。パワーではフィリアに劣るがが、速さと唾液の量で勝る真乃ちゃんは、滑るような動きでフィリアの攻撃を回避していく。

 それはさながら、公道で軽自動車と大型トラックが追い抜き合戦を始めたかのよう。


 真乃ちゃんは舌でドリフトをかまし、果敢にコーナーを攻める。

 それを追うフィリアは、パワフルな蛇行運転で俺の歯を舐め取っていく。

 

 こいつら、ベロで煽り運転してやがる……!

 

 頼むから俺を巻き込まないでほしいのに、一々ねろねろと俺の舌も撫でていくせいで、口の中がどんどん二人の味で満たされていく。

 真乃ちゃんの舌はまさに未成熟な少女といった感じで、十四歳の甘みがぎっしり詰まっている。

 対するフィリアは熟れに熟れた女の味で、濃厚な雌の風味を惜しげもなくまき散らしている。

 

 女二人分の唾液が口の端から溢れ、顎を伝ってぽたりぽたりとシーツに落ちていった。

 もはやオイル漏れだ。

 車体に負担がかかり過ぎているのだ。


 さっさと逮捕されろ。指名手配されろ。


 俺の中の理性は全力で二人を拒絶しているが、体の方は「どっちの舌もうめえ!」と大喜びなので抵抗することができなかった。哀れな道路役を務めることしかできなかった。


 その後も真乃ちゃんとフィリアは壮絶なレースを繰り広げ、俺の口内を五周ほど回ったところで両者同時に酸欠に陥り、崩れ落ちるようにして口を離した。


 馬鹿じゃねえの。


 息苦しくなるまでやるなよ……どんだけ意地っ張りなんだ。

 俺は唇にかかる二本の橋を指で切りながら、フィリアの肩を揺すった。


「おい、おい。怪しい異世界人について聞きたいんだけど」

「……小娘の分際で……ああもちょこまかと動き回るとは……」


 私、負けませんから、弱々しい声で呟く真乃ちゃん。

 どうやら二人にしかわからない、戦いの極致というものがあるらしい。


「だから俺の話聞けって。な?」

「次は乳房を使ったご奉仕対決といきましょうか! 果たして日本の小娘がどこまで私と渡り合えるでしょうね!?」

「それは後で絶対やってほしいけど、今はもっと大事なことがあるだろ?」


 俺はフィリアの体を抱き起すと、じっと目を見てたずねた。


「異世界人が地球人をレベリングする目的ってなんだ?」

「……」


 フィリアはやっと俺の質問に関心を向けたらしく、少し考え込んでから答えた。


「おそらく成長率のテストでしょう」

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