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異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: タカハシ ヒロ
第八章 光営業

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闇を照らす光×2

 

 だがこのまま無策で会場入りしたら、俺の芸能生命が終わりかねない。

 権藤はともかく、他の出席者まで口止めするのは難しいだろうし。

 なんせ社会のダニどもが集まるパーティーなのだ。俺が参加したネタを使って、ゆすりをかけてくるのは十分ありえる。


 となると俺は、会場中の人間を脅して回らなきゃならないんだろうか?

 ……不可能ではないが、確実性がない上に面倒だ。

 その場で撮影した映像をSNSに上げられたりしたら、一発でアウトだしな。


 何か手っ取り早い対抗策はないものかな……とあれこれ考え込んでいると、ちょいちょいと袖を引っ張られる感覚があった。

 リオだった。


「今の電話、何? なんか不穏な雰囲気だったけど」


 いけない、俺としたことが。

 こいつの前で電話に出てしまったせいで、要らぬ心配をかけてしまったようだ。

 俺は優しくリオの髪を撫で、「大丈夫だ」と声をかけてやった。


「権藤だよ。ちょっと厄介なネタを持ち込んできたが、大した内容じゃない」

「うげっ。あいつまだ中元さんに絡んでるの?」

「まあなんだ、謎の腐れ縁でな」

「……まさか脅されてたりする?」

「いや、今回の権藤は協力者なんだ」

「どういうこと?」

「簡単に言うと、今のあいつは内通者だ」

「ふうん。刑事ドラマみたいなことやってるね」


 確かに。

 ヤクザのタレコミでか弱い少女を救い出すなんて、まるで刑事ドラマのプロットだ。


「――ん?」


 刑事?

 その単語が脳裏をよぎった瞬間、あるアイディアが思い浮かんだ。

 そうとも。闇の営業を光の行為に変える手段が、たった一つだけあるではないか。


 俺はさっそくスマホを操作し、一人の女性に電話をかけた。

 

『……どうしました』

「もしもし、おまわりさん?」


 杉谷さんの腹心の部下――早坂恵、二十五歳。

 彼女の身分は、警察官である。

 

「一つ手を貸してくれませんか。あんたの力が必要なんだ」

『自首したいのですか? いいでしょう、すぐ迎えに行きます。どうせ未成年とみだらな行為に及んだとかそんなところでしょう?』

「違う、今回未成年とみだらな行為に及びそうなのは俺じゃない。ヤクザだ」

『む?』

「知り合いのヤクザからタレコミがあった。このままいくと、今週の土曜日に女子中学生が性接待をさせられる。実の父親が、暴力団の集会で娘を売ろうとしてるんだ」

『……確かな筋の情報なのですか』

「間違いなく」

 

 電話の向こうで、息を呑む気配があった。


『なぜ私を頼るのです。貴方ならば単独で暴力団を壊滅させることもできるでしょう』


 それはな。

 俺が一人でヤクザのパーティーに参加したら闇営業だけど、私服警官と一緒に潜り込んだら囮捜査になるからだよ。

 警察の潜入捜査に協力していた功労者、というポジションに収まれば、仮に映像が流出してもノーダメージだ。

 それどころか俺の株が上がりまくるんじゃないか?


 ……なんて汚い本音は隠したまま、俺は正義感溢れる口調で告げる。


「俺がヤクザを倒したら、ただの私闘だ。あいつらは法で裁かなきゃいけない。だから警察官である貴方の助力が要るんです」

『どうして私なんですか。杉谷調査官と共に向かえばいいでしょうに』


 お前正気かそれ。

 杉谷さんって無駄にガタイいいし眼光鋭いし、それでいて陽性のオーラを放つ俳優顔で、全く裏社会の人間には見えないだろ。

 あんなの連れてったら私服刑事か何かと思われて、一発で警戒されるわ。

 頭の固い公務員はそんなこともわかんねえのか? という失礼な本音もやはり覆い隠しておく。


「貴方じゃなきゃ駄目なんだ」

『……へっ!? な、なぜ……?』

「性被害を受けそうになってる少女を助けに行くんだぞ。女性警官が居た方がいいに決まってる」

『それは確かに……そうですね』

「男が相手だと、怖がって話をできない状態かもしれない。貴方の力が要るんだ」

『……いいでしょう。杉谷調査官にもかけあって、正式に潜入捜査として動けるよう手配をしておきます』

「助かるよ。恩に着る」

『少し、見直しました』

「え?」

『貴方はただ女好きなわけではなかったのですね。ではまた日を改めて』


 なんだか後半は妙な空気になってしまったが、悪い手応えではなかった。

 上手くいったと見ていいのだろうか?


「やれやれ……じゃ、次行くか」


 そうして俺はもう一人の女性警官、加藤美咲氏にも全く同じ内容の電話をかけたのだった。

 さきほどと似たようなやり取りの末にいい雰囲気になり、杉谷さんの部下二名とフラグを立てるという外道行為をかました末、電話を切り上げる。


「っかしいな、なんか加藤さんに至ってはこの潜入捜査が終わったらデートしましょうって流れになっちまったわ。あ、そういやこの人ってリオの母さんと名前同じじゃね? いやー、面白い偶然もあるもんだな」

「サイテー! でもその容赦ない鬼畜ぶりがあたしの心をくすぐる……!」


 俺はふくれ面のリオの頭をポンポンと叩きながら、土曜日に向けてプランを練り上げる。

 あとは本番を待つだけだ。

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