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異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: タカハシ ヒロ
第八章 光営業

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闇営業と枕営業が交わる時


 リオの家はまだ修理が終わっていないので、今も俺のマンションに居候している。

 感覚としては押しかけ女房に近い。

 綾子ちゃんと一緒に夕飯を作ってくれるし、風呂に入ると背中を流したり舐めたりしてくれる。

 本人曰く、「あたしのことは喋る垢すりだと思ってコキ使っていいよ」とのこと。


 当然、着替えなんかも俺の傍で行なうわけだが……。

 

「何? ジロジロ見ちゃって。女子高生の着替えがそんなに面白い?」


 視線に気付いたらしく、リオは挑発的な笑みを浮かべると、その場でくるりとターンをしてみせた。

 ひらりとスカートが翻り、水色のパンツがちらりと顔を覗かせる。


 もはや日課となった、登校前の一場面。

 でも今日は一ヵ所だけいつもと違うところがある。


 リオの服装が厚ぼったいブレザーではなく、半袖シャツなのだ。

 

「いや……夏服になったんだなと思って」

「今日から衣替えだもん」


 出会った時からずっと冬服だったので、なんだか新鮮な気分だ。

 ワイシャツの下からうっすらと透けるブラジャーを見ていると、甘酸っぱい学生生活を思い出さずにはいられない。


 女子高生の透けブラで初夏の始まりを知る、爽やかな朝。


 ……それのどこが爽やかなんだ? お前もいよいよ犯罪者思考が板についてきたな? 

 などとセルフ突っ込みを脳内で繰り返していると、スマホがブルブルと震え出した。


 咄嗟に画面を覗き込んでみる。

 どうやらメールではなく通話が来ているようだ。


「……またか」


 これで何度目だよ、とぼやきながら電話に出る。

 どうせまたあの件であろう。


 俺はここ一週間ほど、とある人物から執拗な誘惑を受けていた。

 ちなみに艶っぽい方向ではなく、仁義なき方向からの誘惑である。


「もしもし」

『おう俺だ。頼むよ、次こそは顔出してくれ。軽い芸を見せるだけでいいんだ、ギャラなら300万出す』


 相手は知り合いのヤクザ――権藤崇だ。

 なんでも芸能人を連れてくると箔が付くとかで、やたらと「うちのパーティーに出てみないか?」と誘いをかけてくるのだ。

 当たり前だが反社会的集団と関わることになるし、金を受け取ったら税務署が把握できない収入になるし、色んな意味で闇営業になってしまう。


 ああいや、闇営業ってのは事務所を通さずに金を貰うことらしいから、無所属の俺ならどこに営業しても闇営業にならないのか?

 ……ってそんな屁理屈はどうでもいい。有名人でありながらヤクザとお友達な時点で、芸能界追放クラスの不祥事である。


 やはりこの男とは縁を切った方がいいのかもしれない。

 元々ろくでもない輩だし、ここらが潮時だろう……とドライなことを考えていると、ウェットな声で権藤は言った。


『芸能事務所に話をつけて、アイドルに酌をさせることになってんだ。どうだい、興味出てきたんじゃねえか?』

「前も聞いたなそれ」

『向こうの社長は、別に何をしても構わないと言ってるみたいだぜ。本番もOKだってよ。ほら、これがその枕アイドルちゃんだ』


 言いながら権藤は、一枚の写真を送ってきた。

 おかっぱ頭の少女がビキニ姿で四つん這いになっている、過激な画像である。

 グラビアアイドルなのだろうか?


 ……けしからん。

 肌のハリが尋常ではないし、後ろめたいほどあどけなさを残している。

 十八歳未満どころか、十六歳未満だったりしないかこれ?


「この子ってかなり若いだろ?」

『察しの通り、まだ十四歳。現役JCってやつだな。JKじゃねえから俺の守備範囲外だが、旦那はこういうの好きだろ?』

「ま、まあ義務教育も終わってないのに妊娠準備だけ完了しちゃってごめんなさい、みたいな体を見てるとざわつく感覚があるけど、俺には理性がある。女子中学生にかぶりつくほど鬼畜じゃねえよ……!」

『そういう援交おじさん目線の描写がすらすら出てくる時点で、旦那は淫行の才能があると思うぜ』

「黙れ! 自分でも気にしてるんだ!」


 つーか向こうの社長は好きにしていいとか言ってるそうだけど、肝心のこの子自身は納得してるのか? 悪い事務所に騙されてるパターンじゃないのかそれ?

 とたずねてみると、


『あー? ガキ本人は泣きながら拒否してるらしいが、どうでもよくねえかそんなの』

 

 実に暴力団らしい答えが返ってきた。


「嫌がる女の子を、無理矢理ヤクザのパーティーに連れてくるのか……!?」

『このガキの事務所はな、よくねえ場所から金を借りてたんだ。骨までしゃぶり倒された末、うちの組に売られてきた。所属タレントはほとんどが枕をやらされてる。こいつはまだ中学生なのもあって、そういうのは未経験らしいが、時間の問題じゃねえかな? どうせいつか脂ぎったプロデューサーに抱かれるんだし、そうなる前に旦那が優しく初体験を済ませてやるのが人情ってもんじゃねえかな』

「ふざけるな……見損なったぞ権藤! 元々見損なってたが、さらに見損なった!」

『俺に怒ったってこのガキは助からねえよ。なんせ親も枕営業に許可を出してんだからな』

「どういう意味だ?」

『例の社長さんってのは、こいつの父親なのさ。この娘は父親が経営する芸能事務所に所属してるんだ。我が子を売る親ってのはどういう神経してんだろうな』

「……は?」

『こいつの父親は褒められた経歴じゃねえ。元はジュニアアイドルの際どいDVDを作って、細々と商売してた男だ。子供の裸で飯を食ってたんだよ。でもよ、そういうのって児童ポルノだのなんだのでうるさくなってきただろ? いつかその道で食えなくなるのはわかりきってた。だからバブル状態だったグループアイドルビジネスに参入したらしくてな。所属タレントを普通の歌って踊るアイドルに鞍替えさせて、それなりに景気のいい時期もあったようだが……いかんせん、バブルが弾けちまった。メジャーどころのグループで不祥事が相次いで、イメージが悪くなっちまったからな。今じゃアイドルを名乗ってたグループがダンスユニットを自称する始末だろ? 弱小事務所のマイナーアイドルなんて、やってけねえに決まってる』

「なんでそんなに詳しいんだお前。ドルヲタなのか?」

『おいおい、ヤクザと芸能界は切っても切れない仲だろ。俺らと興行は腐れ縁だぞ? まあとにかく、ボンクラ社長は借金漬けになり、ついに自分の娘すらアイドルデビューさせる羽目になっちまった。昼の世界じゃグラビアアイドル、夜の世界じゃ枕アイドルとしてな』


 ひでえ話もあったもんである。

 こんなの……助けに行くしかないじゃないか。

 

『妙なことを考えるんじゃないぜ。旦那が暴力で解決してはいおしまい、とはいかねえ。これは金の問題なんだ。親父の借金をなんとかしない限り、どのみち真っ当な生き方はできねえよ』

「俺がその子を父親からもヤクザからも救い出すさ。言えよ、その親子は今どこに居るんだ?」

『俺にもわかんねえ。もう何日も父親が車に乗せて連れ回してるって話だ。本番前に逃げられたら困るだろうからな』

「……父親に監禁されてるってわけか」

『そういうこと。とりあえずパーティー会場にやってくるのは確かなんだから、正義の味方やりたいならそこで待ち伏せするしかないんじゃねえか?』


 俺の力を身に染みて理解している権藤が、くだらない嘘をつくとは思えない。多分、この話は事実だ。

 実の親に売られそうになっている少女は実在する。

 それをわざわざ俺に伝えてきた狙いは――


「俺と取引したいんだろ、権藤。哀れな少女を助けようと思ったら、俺はヤクザの集会に出るしかない。するとお前はテレビタレントを連れてきた組員として、株が上がる。見返りとしてお前は女の子を助けるための便宜を図ってくれる。大体こんなところじゃないか」

『御名答。互いに悪くない条件だろ? 旦那は気持ちよくヒーローがやれて、俺は立場をよくできるんだ』

「癪だけど今回は組んでやるよ。でもこれが仕込みだったりしたら暴れまわるからな」

『俺は長生きしたいんだ、旦那を騙したりはしねえさ。んじゃ商談成立でいいな? 土曜日の夕方、車で迎えに行くからスケジュールは開けといてくれ。会場に着いたらなんか芸を披露してくれるだけでいい。それが済んだら可哀想なJCの救出作戦といこうじゃねえか』

 

 そこで電話は切られた。

 ……やむを得ない事情があるとはいえ、俺は闇社会に営業をかけるはめになってしまったようだ。

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