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異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: タカハシ ヒロ
第七章 スパイ大作戦

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闇のトーク


『話はつきましたよ』


 大槻教授を説得し終えた俺は、杉谷さんの携帯に連絡を入れた。よほど待ち詫びていたらしく、返事はものの数秒で返って来た。


『それで教授はなんて言ってるんです?』

『ゴブリンなんかより俺を調べる方が楽しそうだから協力してくれるそうですよ。今は俺の血液や毛髪を調べ回すのに夢中です』

『よくやってくれた。やはり中元さんは私の信じた通りの男だった』


 やれやれ、これで一件落着か。

 危ない研究は打ち切りにできたし、綾子ちゃんを嫁にもらう許可を親御さんから頂けたし、直属の上司に恩を作ることもできたわけだ。


 何もかも上手くいき過ぎて、この世をば我が世とぞ思うって感じだぜ……とほくそ笑んでいると、杉谷さんがら新しいメッセージが届いた。


『ところで一ついいですかな』

『なんです?』

『大槻教授の研究を握り潰す以上、代替案を早急に用意しなければならない。無人兵器を上回る性能の戦力が量産可能(・・・・)だと、上層部に証明する必要があるのです。さもなくば私の首が飛びます』

『んじゃ、俺が偉い人達の前で身体能力を見せつければいいんですかね? これからは俺が国防を担うんでよろしく的な』

『そうではありません。貴方一代の強さでは国防にならないのです。中元さんが百年二百年と生きてくれるならば国家安泰でしょうが、それは無理でしょう。我々は中元さんを量産したいのです』

『俺のクローンでも作りたいんですか?』

『もっと人道的な手法があるでしょう』


 人道的に俺を量産する。

 それはつまり――


『中元さん。今すぐ子供を作ってくれませんか?』


 ……そうくるよな。


『貴方が侍らせている女性のうち、誰か一人を孕ませるだけでいいのです。あとは赤子の体質を検査させて頂ければ、何もかも丸く収まります』

『それはちょっと……』

『なんなら同居女性を全員孕ませて頂いても結構。むしろその方が好都合だ。出産費用も養育費も全てこちらで負担します』

『こういうのは授かりものですし、急に用意しろと言われましても』

『これはすでに貴方一人の問題ではないのです。国家の命運がかかっている。貴方に子供ができなかった場合、複数の役人が職を失います。これまで中元さんに費やした税金で、病院が二つは建つんですよ』

『いや、だから急に子作りしろと言われても』

『いっそ帰り際、うちの早坂達を抱いては如何か? 色よい返事を期待しております』


 好き放題まくし立てると、杉谷さんは返事を寄こさなくなってしまった。

 ……俺にどうしろって言うんだ。



 そこから先はよく覚えていない。

 頭の中が真っ白なままパトカーに乗り込み、エリンと共にマンションに帰って来たところまでは覚えているのだが、ところどころ記憶が曖昧だ。

 気が付くとソファに座り、天井を見上げていたのである。


 ぼんやりとした頭で時計を見ると、時刻は午後四時を示していた。

 綾子ちゃんの気配がないので、外出ついでに食材の買い出しでもしているのかもしれない。

 他の連中は……わからない。


「……子作り、か」


 杉谷さんは――公安は――いや日本政府は――俺の戦闘力が子供に遺伝することを期待している。

 なればこそ、国民の血税が俺に注ぎ込まれているのだ。


 なので俺は、ひたすら子作りに励まなければならない。

 税金えっち。冒涜的な響きである。


「……拒否する権利はなさそうなんだよなぁ」


 わかってる。

 それはわかってるのだが、どうにもならない事情がある。


 だって俺の戦闘力って、遺伝子に由来するものじゃないし。

 後天的なレベルアップで強くなった、言わば努力型の勇者であるため、生まれた子供が俺並に強くなる保証などない。

 一部のスキルは子供に遺伝するようだが、それでも化物じみた身体能力は期待できまい。

 モンスターを倒してレベリングをしない限り、二代目チート勇者にはなれないはずだ。

 

 万が一俺が誰かを妊娠させちまったら……平凡な身体能力の子供が生まれ、「話が違うじゃないか」と大騒ぎになることだろう。

 杉谷さんは左遷され、俺の立場も怪しくなるに違いない。

 

 かといってこのままズルズルと子作りを後回しにしていると、色々な人や組織を裏切ることになってしまう。

 仮にも税金が動いている以上、無責任な振る舞いは許されないのだ。

 

 一体どうしたものかな……とため息をついていると、尻ポケットのスマホが鳴った。

 反射的に取り出し、画面を覗き見る。

 時刻は午後四時半。こんな中途半端な時間帯に誰だろうと思えば、よりによって権藤からの電話だった。

 あのJK大好きヤクザ、今度はどんな面倒を押し付けてくる気だ……?


「なんの用だ? どっかの組と抗争でもしてんのか?」

『おう中元の旦那! 今親父と飲んでんだが、よかったら顔出さねぇか?』


 権藤の声はいつになく明るい調子である。おそらく酒が入っているせいだろう。


「お前の言う親父って、父親じゃなくてヤクザの親分って意味だろ」

『よくわかるな! なあ旦那も来いよ。うちの親父は大のJC好きなんだ。ワシはJCをママにするために生まれてきた男じゃけえのぉ、が口癖のすげえ御仁でよ。きっと旦那とは趣味が合うと思うぜ』

「悪いけど切るわ……今ちょっと考えごとしててさ」

『待ってくれ! ここは俺の顔を立てると思って、どうか一つ! 芸能人を連れてくると箔がつくんだよ、頼むって。もちろんタダとは言わねえ、JKを三~四人買えるぐらいのギャラを出す』

「またあとでな」


 これ以上反社会的な会話を続けたくないので、俺は早々に通話を切り上げた。

 女子中高生マニアのヤクザが集まる飲み会なんて、絶対行きたくねえし。有名芸人が特殊性癖グループに闇営業とか、シャレにならねえだろうが。


 ……つーか番組司会者の身分を持ちながら、暴力団組員と交流のある俺って中々闇の深い存在なのかもな……。

 芸能界は裏社会と繋がりがあるらしいという黒い噂を、まさか自分自身が体現することになろうとは。

 

 俺の交友関係が世間に露呈したら確実に不味いことになるので、やっぱり国家権力とのコネは維持しておいた方が良さそうだ。マスコミ周りも抑えてくれそうだし。

 となると杉谷さんに依頼されたミッションを、さっさとこなさなければならないわけだが。

 ……わけだが……。


 一体、誰を妊娠させれば……!


 そうやって一人で悶々していると、背後に人の気配を感じた。

明日発売のコミック電撃大王8月号より、コミカライズ連載スタートとなっております!

書店でお見かけした方はぜひ漫画版もチェックしてみて下さい!

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