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異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: タカハシ ヒロ
第七章 スパイ大作戦

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*父の日記念番外編:アンジェリカの贈り物

父の日記念の番外編です。同時に四本投下されるので、残り三本もお楽しみ下さい。

また、あとがきにお報せがあります。


 午前七時。

 ベッドから這い出た俺は、大あくびをかましながらトイレに向かった。

 自分で言うのもなんだが、この段階ではまだ脳が働いていない。


 便座を上げ、排便の解放感に身を委ねた瞬間――ようやく頭に血が回り始め、我が身に危機が迫っていることを思い出す。


 今日は六月十六日。

 父の日である。


 母の日と比べるとイマイチ存在感のない祝日とされているが、我が家では真逆と言っていい。

 同居女性の大半がファザコン属性を持っているので、クリスマス顔負けの盛り上がりを見せているのだ。


 無論、アンジェリカ達が無難な贈り物を寄こしてくるとは思えない。

「私のヴァージンをプレゼント♪」くらいは覚悟しておいた方がいいだろう。

 

 つまり父の日という大義名分をかざして、美少女達がガンガン誘惑してくる理性耐久レースが始まろうとしているのである。


「……俺、大丈夫かな」


 うすら寒いものを感じながら寝室に戻ると、さっそく第一の刺客と遭遇した。

 なにやらベッドの中で、人間大の塊が蠢いているのが見える。

 本人は隠れているつもりなのかもしれないが、毛布からはみ出た金髪頭で何もかもバレバレだ。

 

「アンジェか」

 

 昨日の添い寝当番は綾子ちゃんだったはずなので、用を足している間にポジションが入れ替わったらしい。

 

「あっ、毛布めくっちゃ駄目ですよ!? まだ準備できてないんですから!」

「……大人用紙おむつが見えるんだけど、なんの準備してんの?」

「サプライズプレゼントですー。見たらめっ! ですよ」

「哺乳瓶も見えるんだけど、マジで何やってんの????」


 ばさりと毛布をはぎ取ると、ゆったりとした寝間着に身を包んだアンジェリカが四つん這いになっているのが見えた。

 無数のベビー用品も確認できる。

 ガラガラによだれかけ……まさかこれは父の日ギフトのつもりなんだろうか?


「対象年齢を三十二歳くらい間違えてないか?」

「もう。間違えてないですってば」


 開き直ったらしく、アンジェリカはくるりとこちらに向き直った。

 そのまま女の子座りをし、慈愛に満ちた表情で両手を広げる。


「本当は準備万端になってから見せるつもりだったんですけど、しょうがないですね。さ、こっち来ていいですよ」

「……胸に飛び込めっていうのか?」

「はい! お父さんは今から、私の赤ちゃんになるんです」

「……なんで?」

「父の日のプレゼントに決まってるじゃないですか。私からの贈り物は『母性』です』


 なるほど。

 アンジェリカは父親的な存在に甘えるのが好きだが、それと同じくらい甘やかすのも好きなバブみ系女子。

 将来の夢は俺をワンオペ育児すること、と言ってはばからない壊れた性癖の持ち主なので、自分も楽しめるプレゼントを用意したわけだ。


 けどなあ。

 おっさんが素直に十六歳の少女にバブバブできるほど、日本は終わってないんだよなあ。


「俺をなんだと思ってんだ? そりゃあ包容力のある女は嫌いじゃないが、朝からこれはちょっとな……」

「あら。けい君は夜の方が甘えんぼさんになれるの?」

「け、けい君だと!?」


 馬鹿な。

 確かに俺は幼少時代、おふくろからそんな風に呼ばれていたが……一体どこでそれを知った?

 アンジェリカに子供時代の思い出なんて語った覚えがない。

 となると自力で「その領域」に辿り着いたことになるが……。


 気が付くと俺は、吸い寄せられるようにしてアンジェリカの胸に飛び込んでいた。

 日本終了のお報せだった。


「ママはね、いーっぱいお勉強したんですよ。けい君のパソコンで」

「……何を?」

「おねショタという概念を」

「ネットサーフィンしたのか?」

「ううん、『給与明細』って書かれたフォルダの中に詰まってた、Hな動画や画像で学びました」

 

 畜生。

 何度フォルダの名前を変えても、異様な執念で掘り当てやがる。

 まるで勝手に息子の部屋に入ってエロ本を探し出す母親だ……ってこんなところにもママみ成分が!?

 この振る舞いさえも母性によるものなのか!?


 俺は一人で錯乱状態に陥りながら、アンジェリカのバストに頬ずりを繰り返していた。

 胸元の緩いパジャマを着ているせいか、豊かな乳房の感触をたっぷりと感じることができる。

 

 ばるんばるん。

 いや、「たぱんたぱん」だろうか。

 瑞々しさと弾力を合わせ持った、魔性の膨らみ。

 甘く柔らかな女の子の匂い。


 これがいつも俺を狂わせるんだ、俺のせいじゃないんだ、とモゴモゴ言い訳を繰り返していると、口の中に何か柔らかいものが差し込まれた。


 哺乳瓶だった。


「いっぱい飲んで下さいねー。ママのお手製ミルクですよー」

「バブー! アンジェママのミルクいっぱい飲む!」

「えへへ。けい君がちゃんと赤ちゃんになってくれて、ママ嬉しい……」

「ママァ……アンジェママァ……」

「このままママの子宮に帰って、赤ちゃん部屋おじさんになろうね。子供部屋おじさんなんか目じゃないくらい堕落しようね。ママの子宮で、ずーっと二世帯住宅やろうね……」

「うん!」


 すっかり乳児の心を取り戻した俺は、勢いよく哺乳瓶の中身を吸い上げた。


「わあ。けい君ってば上手にミルク飲めてまちゅねー。えらいえらいでちゅねー」

「んまんまんまんま! ママのおっぱいんまんまんまんま……ん……おいアンジェ、これ普通の牛乳だろ?」

「え? あ、はい。確かにそれは市販の牛乳ですけど」

「――なんで粉ミルクを使わなかった?」

「!」


 せっかく赤ちゃんになりきってたのにこれじゃ台無しだろうが、と俺はアンジェリカから身を離す。


「ちょっと正座しろ、お前は赤ちゃんのなんたるかを全然わかってない」

「は、はい!」


 アンジェリカは大人しく姿勢を正した。


「いいか? 百歩譲って母乳が出ないのは仕方ない。そもそもお前出産してねえし。だから俺はそこを怒ってるわけじゃない。……わかるよな? よりによって市販の紙パック牛乳を使った、雑さ加減に呆れてるんだ。これじゃ全然気分が出ないだろうが!」

「……詰めが甘かったと思います」

「一人の大人として言わせてもらうが、こういうところで手を抜くのは駄目だ。いつか痛い目に遭うぞ」

「赤ちゃんプレイの心構えを説くのが、大人の意見なんですか?」

「そうだ」


 俺は力強く言い切る。


「心の母子手帳に聞いてみろ。お前はまだママになりきれていない」

「……そう、みたいです。私、悪いママでした……」


 途端にしゅんとなるアンジェリカ。

 少し言い過ぎただろうか?

 そろそろフォローを入れてやらないとな、と俺はアンジェリカの頭を撫でる。


「でもまあ、中々楽しかったかな。ありがとなアンジェ。お前のおかげで元気出たよ」

「……ほんとですか?」

「ああ。最高のプレゼントだったよ」

「えへへっ」


 楽しんでくれたなら私も満足です、とアンジェリカは照れくさそうに笑う。


 やれやれ、危ないところだったぜ。

 途中で我に返ってイチャモンをつけていなければ、とてつもなくアブノーマルな形でアンジェリカの処女を奪っていただろう。


 ……こんなイベントがあと何回も続くのか、今日は。

 俺は理性はどこまで耐えられるのだろうか……?

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一位のヒロインは続編が公開される予定となっておりますので、ぜひご参加下さい。


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