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連続孕ませ宣言

 

 俺以外の全員が、「「「重婚……!?」」」と台詞をハモらせて硬直する。

 

「……それじゃあ君は、二人の女子高生と籍を入れようっていうのか? う、うちの娘でJKハーレムを作ろうというのか!? 二十一世紀の日本で!」

「他に方法がない」

「こんなケダモノと話ができるか! 帰るぞ綾子!」

「綾子ちゃんは俺の味方だよな?」


 大槻教授は綾子ちゃんの右手を引き、強引に部屋を出ようとする。

 対する俺は綾子ちゃんの左手を握り、その場に留まらせようと足を踏ん張る。

 一人の少女を挟んで、二人の男が睨み合う。



【大槻綾子の性的興奮が70%に到達しました】

【同意の上で性交渉が可能な数値です。実行に移しますか?】

【実行した場合、一定の確率で子供を作ることが出来ます】

【生まれた子供は両親のステータス傾向と一部のスキルを引き継ぎ、装備、アイテムの共有も可能となります】

【また子供に対してはクラスの譲渡も可能となります】



「……綾子? そのもじもじした動きはなんだ?」 

「どうやら俺とあんたに取り合いをされるってシチュが、綾子ちゃんを興奮させちまったらしいぞ」

「貴様はどこまで娘を侮辱すれば……」

「というかな。俺と口論する前に、肝心の綾子ちゃんの気持ちを確認するべきだとは思わないか?」

「……確かにその通りだ」


 と大槻教授は頷く。


「どうなんだ綾子。お前はこれでもまだ、中元くんの女になりたいのか? この男はお前の国籍を変えたあげく、別の少女とも籍を入れようとしてるんだぞ! 中世じゃあるまいし……!」


 綾子ちゃんは楚々とした仕草で首を傾げると、花のような笑みを浮かべて言った。


「……大丈夫だよお父さん。私以外の女が不審な死を遂げれば、ちゃんと一夫一妻に修正できるから」


 その言葉を聞いた瞬間、大槻教授は膝から崩れ落ちる。


「……綾子……お前はどこまで……」

「親御さんの前で言いたくはないが、綾子ちゃんっていつもこんな感じだぞ? どの女の子ともほがらかに接してるけど、目が笑ってない。獲物を前にした蛇の目で会話してるんだ」

「……」

「いい加減認めようぜ大槻教授。この子は並みの男じゃ手に負えない。俺くらい頑丈で無神経な輩じゃなければ、旦那なんて務まらねーんだよ。任せてくれ、綾子ちゃんは俺が必ず更生させてみせる」

「……更生? ……一体どうやって? 具体的なプランがあるのか? 実父の私でさえこの子の再教育には市失敗したんだぞ!」

「ぶっちゃけ毎年孕ませれば悪いことする暇もなくなると思う」

「鬼畜すぎやしないかね!?」

「孫の顔が見たくはないのか?」

「……孫」

「綾子ちゃんそっくりな少年とボール遊びをしたり、幼少期の綾子ちゃんそのものな女の子に服を買い与えるところを想像してみてくれ」

「……ちっちゃい頃の、綾子……綾子そっくりの、孫……」

「それが毎年増えてくんだ。ちっこい綾子ちゃんの集団が、『おじいちゃん大好きー』と言いながらあんたを取り囲む様をイメージしてみよう」

「中元くん似の孫が混じってたら嫌だな」

「俺如きの遺伝子が綾子ちゃんに勝てるわけがないだろう!? どうせ全員綾子顔になる! イメージするんだ!」

「……綾子が、いっぱい……」


 ――あの子を、お願いします。貴方の手でまともな子にしてやって下さい。


 消え入りそうな声で告げる大槻教授に、先ほどまでの威厳は残されていなかった。

 



 マンションを出た俺達は、真っ直ぐにパトカーへと戻った。

 なお、アンジェリカにはお留守番を命じてある。

 ここから先は敵地に潜入することになるので、人数は少ない方がいいと考えたのだ。

 ……婦警さん連中に鼻の下を伸ばしているところを、これ以上見られたくなかったというのもある。

 オープンに嫉妬を見せるアンジェリカが一緒だと、面倒なことになってしまうのだ。


「話は付きましたか」


 事務的な口調で質問してくる早坂さんに、「ばっちりです」と答える。


「色々あって、大槻教授の娘さんと結婚することになりました。これで俺と教授は身内です。喜んで協力してくれるでしょう」

「そうですか、ご結婚を……えっ? 結婚!? は?」


 騒然とする車内の女性陣とは対照的に、俺・杉谷さん・大槻教授のおっさんトリオは無言で後部座席に乗り込む。

 先客としてエリンが座っているため、またもシートベルト不足に陥ってしまった。


「その少女はどうするんだ? ベルトが足りていないようだが」


 年頃の娘を持つ父親なせいか、大槻教授は心配そうな目でエリンを見つめている。

 俺は「案ずるな」と目で制止し、エリンを抱きしめた。


「これで大丈夫です」

「対面座位にしか見えないのだが?」

「発進してくれ、早坂さん」

「この男に綾子を任せていいのか……? しかし、多少ネジがハズレていなければ綾子の相手など務まらないのもまた事実……ぐう……っ」

 

 懊悩する教授を尻目に、不可視の車はゆっくりと駐車場を抜ける。


「さてこっからが本題なわけだが――お義父さん、貴方に頼みたいことがある」

「何かね」

「ゴブリンの脳を弄り回す研究から手を引いてもらいたい。元々今日はこれを頼み込むためにあんたを連れてきたんだ」


 大槻教授は不機嫌そうな顔で言う。


「そんなことだろうとは思っていた。やはり公安の息がかかっていたのか」

「娘婿のお願いなら聞いてくれますよね? お義父さん」

「その呼び方はやめろ。お前はまだ正式に綾子と入籍したわけじゃない」

「大槻教授、研究を中止してもらいたい」

「何故だ?」

「暴走の恐れがある上に、完成品は日本国内で試験運用するんだろ? しかも納品先は米軍らしいじゃないか。外国を強くするためにそこまでリスクを負う意味があるのか? 綾子ちゃんが毎年安心して孫を産めるような社会を守りましょうよ」

「毎年十代の少女が出産する社会は守る価値があるのか……? しかし、なるほどな。そこの公安調査官の入れ知恵か」


 大槻教授は壮絶な目つきで杉谷さんを睨みつけた。その鋭い眼差しは、綾子ちゃんが時折見せる邪悪な眼光と通じるものがある。やはり親子なのだ。


「私とてこの研究の危険性は承知している。そして出した結論はこうだ。――リスクは承知の上でも、やるしかない。知ってるかね中元くん。ドローンとAI、両方の分野で我が国は後れを取っている。米国やイスラエルはまだしも、中露にさえ劣る始末だ。真に国防を憂うならば私の研究が持続されるべきではないかな。たとえ完成品の行き先が他国だとしても、国内の技術者がノウハウを積むことに意義があると思うが」

「……そうなんですか?」


 杉谷さんに目を向けると、難しい顔で唸っているのが見えた。この反応からすると事実なのだろう。

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