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異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: タカハシ ヒロ
第七章 スパイ大作戦

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サイコパス


 取調室は狭苦しい空間だった。


 広さは精々六畳ほどで、窓は天井付近に備え付けられている。

 そして部屋の真ん中には、机が二つ向かい合う形で並んでいた。それらを取り囲むように、パイプ椅子が四脚。


 ここに三名の警察官と被疑者である俺が入るので、キャパとしてはかなりギリギリだ。

 

 ちなみに、電気スタンドはない。昔の刑事ドラマではよく見かけたものだが。

 机の上にちょこんとあれが載ってて、武闘派警官がヤクザを殴るのに使ったりしてたんだよな。

 ……ってそういうトラブルを予防するために置かなくなったのか。

 俺がガキの頃から取り調べ室での暴力が問題視されてたしな。


 今時の警察は被疑者の人権にも配慮してるんだなーと感心していると、一番年かさの警官が口を開いた。


「まあ楽にして」


 と椅子を引き、座るよう促してくる。入り口から最も遠い席を選んだのは、少しでも逃亡の確率を下げるためか。

 ……窓の位置もそうだけど、何重にも被疑者の脱走を警戒している。

 自分は疑われているのだな、と節々から伝わってくる。

 

 これで「楽に」なんてできるわけないだろうに。


 ため息を吐きながら椅子に座ると、流れるような速さで腰縄の先端をパイプ椅子に繋がれた。

 続いて一番若い警官が席に着き、机の上のノートパソコンをパカリと開く。

 俺の供述はあれに記録されるらしい。


 最後に、残る二名の警官が俺と対面する位置に座り、いよいよ取り調べの開始だが――さてどうしたものか。


 ええっと、俺は東京拘置所に潜り込まなきゃいけないんだよな? そこに杉谷さんが捕まってるんだし。

 つまりここで無罪と思われたら不味いわけだ。

 外の婦警さん達が色々手はずしてるっぽいから何もしなくても拘置所行きになるのかもしれないが、念のためヤベー性犯罪者のフリをしておこう。


 そうやって普通の被疑者とは真逆の思考を繰り広げていると、強面の警官が威圧的な口調でたずねてきた。


「なんであんなもん作った?」


 人相の悪い男だ。

 年齢は三人いる警官の中ではちょうど真ん中で、四十代半ばといったところ。権藤と並んだらどっちがヤクザなのかわからなくなりそうな顔をしている。

 ずっと犯罪者を相手していると、雰囲気がそちらに引きずられるのかもしれない。


 まあ、異世界で盗賊やモンスターと対峙していた身からすると、現代日本の公務員なんて怖くもなんともないんだけど。

 なので俺は、普段と全く変わらない声色で答える。


「女の子の体に興味があったからです」

「……意外と普通の動機だな。作ったもんに対して常識的というか」


 え、マジで?

 このままじゃ道端で下半身を見せつける変なオジサン程度で済まされるのか?

 そういうのって「もうやるんじゃねえぞ、今日は帰れ」とかで許されそうだし、ちょっと良くない流れだ。


 考えろ考えろ。

 どうすれば拘置所にブチ込まれて当然の、猟奇性犯罪者に見える……?

 俺はない頭を必死に使って、あらん限りの変質者ワードを絞り出す。


「はあ。わかってないなおまわりさん。女の子の体に興味があるって言っても、おっぱいやお尻じゃないぜ? 俺は子宮にしか興味ねえんだよ。あれこそが俺の帰るべき場所なんだ。実家なんだ」

「ほ、ほう? だから子宮〇叩き券なんてもん作らせたのか」

「当たり前だろ。俺は年端もいかない女の子の子〇口をノックして無理やり扉をこじ開けて、愛を訪問販売するのが好きなんだ。性のセールスマンなんだ」


 両手を広げ、まるで何かの政治演説のようにまくし立てる。


「……こいつはキてるな……どんだけの闇を抱えてるんだよ……ふざけんじゃねえぞ変態野郎! 子宮回帰願望があるなら、自分の母ちゃんに甘えろや! なんであどけない少女に手を付ける!?」

「年下の女の子は、全員ママだろう? 公務員やってるとそんなこともわからなくなるのか? 大体、年上の女に甘えても何も面白くねーし。いいか? お姉さんは逆に甘やかすべきなんだよ。オムツや縞パン穿かせて童女扱いするんだ。そっちの方が滾るって、なんでわっかんねえかなあ? 年下には甘える、年上は甘やかす。これが正しい女の愛で方なんだ」


 後半は本音が漏れただけな気がするけど、とりあえず真正の性犯罪者には見えているはずだ。


「……これはちょっと……ゲンさんには荷が重い相手でしょう。変わりますよ」


 と、最年長の警官が申し出る。こちらの男は優しげな顔立ちで、いかにもマイホームパパといった感じの風貌だ。

 多分、本来の予定ではさきほどの強面警官が憎まれ役を担当し、こちらの穏やかな方が仏役を務めるはずだったのだろう。

 そうすれば被疑者は優しい方の警官に心を許し、ペラペラと自供をするからだ。

 取り調べの基本的なテクニックと言える。


 が、予想以上に俺が猟奇的な変態と判明したため、急遽プランを変更したのだろう。ベテランが一人で負担を引き受けるという、対サイコパス仕様のプランに。


「中元さん、私はこの世界に入って長い。目を見ればどういう人間なのか大体わかるつもりだ」

「俺はどんな風に見えてるんです?」

「……貴方、過去に人を殺したことがあるでしょう」


 取調室がしんと静まり返る。


「まさかいつもテレビでお見かけする明るいお兄さんが、筋金入りの異常者だったなんてねぇ……」


 言いながら、仏役の警官はポケットから小さなビニール袋を取り出した。

 上にチャックが付いた、ナイロン製の袋。中には押収された〇〇叩き券と、黒いチリ毛が入っている。

 毛?


「え、なんスかこのチリ毛」

「見たところ人間の陰毛だね。これは子〇口叩き券と乳首叩き券の間に挟まっていたものだ。きっとこの券を作った少女の毛だろう? 貴方にこんな性癖があるとは思わなかったが。……ところでこの毛の持ち主は、まだ生きてるのかな?」


 どうやらこっちのおまわりさんは、俺のことを快楽殺人鬼(シリアルキラー)か何かと思っているらしい。

 さすがに連続少女殺人を疑われるのはしんどいので、ここは否定させて頂こう。

 

「いやいやおまわりさん、俺少女殺しはやったことないですよ」

「少女殺し『は』?」

「大体これ、俺の陰毛ですもん。何かの拍子に入り込んじゃったんでしょう」

「なぜ自分の毛だと言い切れるんだい?」

「だって綾子ちゃんのアンダーヘアーはもうちょっと薄くて柔らかそうな毛質だし、リオは何日も前に俺が剃っちゃったから抜けるわけがないし、クロエのはよく見ると純粋な日本人より少しだけ茶色がかった黒だし、アンジェリカのは金色だし、フィリアのは銀色だし、エリンは最初から生えてないし。こんなに黒くてしっかりしたチリ毛なら、俺のしかありえない」

「一体何人の少女の陰毛を把握しているのかね? しかも外国人も混じってないか?」

 

 これは国際犯罪の線も出てきましたな、と警官達が頷く。

 

「金の陰毛はともかく、銀? 自然界にはありえない色合いだろう。ひょっとして下の毛を染めさせてるのか? なんの目的で?」


 別に染めさせてるわけじゃないんだが、とりあえず変質者っぽい動機をでっち上げて拘置所行きの確率を上げておこう。


「金の陰毛、銀の陰毛、ちょっと茶色がかった陰毛。これって金銀銅でしょ? 俺、女の子の陰毛でオリンピックのメダルを再現してるんですよ。ほら今って五輪ムードですし?」

「せ、精神鑑定を受けた方がいいんじゃないかあんた……!」


 唖然とする警官達は、すぐさま俺を拘置所に送り込むことを決めたのだった。

 よし、無事に杉谷さんの元へ潜入できるようだ。


 ……人として大切なものをごっそり失った手応えがあるけど、杉谷さんを救出すればあとで全部もみ消してくれるんだろうし、必要な代償だったと思うことにしよう。

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