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少女、僕、雇い主、それと  作者: 博多鉄郎
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ある夜の出来事

僕はその前日に家族が皆殺しにされる夢を見た。両親に、このままではみんな死んでしまう。と訴えたが、両親は子供の戯言だと思って相手にしてくれなかった。年の離れた兄、最上剣は僕のいうことを真面目な顔をして聞いてくれた。

「その犯人たちはいつ頃この家に来るんだい?」

「わかんない。でもよるずっと遅くに来るの。拳銃とナイフをもってこの家に来るの。お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも、僕も、このままだとみんな殺されちゃうんだよ。」

 幼き日の僕は剣に必死に訴えた。

「そうか、じゃあ今日はお兄ちゃんと一緒に寝よっか。」

 その日は兄と一緒に寝た。思えばこの予知夢が僕が初めて見た予知夢だったかも知れない。当時の僕は自分の見た夢のリアルさに怯えて昼間から一日中震えていたと思う。

「三国、怖がることはないよ。運悪く、悪い夢をみただけさ。俺も時々悪夢をみることがあるよ。でも、悪夢はこれからよいことが起きる前兆ともいわれてるんだ。だから、これから三国にはいいことが起こるよ、きっと。」

夜に剣が一緒になって寝ていてくれたからか、ベッドの中にいるとそのまますやすや寝てしまった。

 僕も剣も寝静まった真夜中。僕らは階段の下のほうから聞こえるうめき声で目が覚めた。 

 そのとき、僕と剣は二階で寝ていて、両親は一階で寝ていた。

 僕が目が覚めるより前に剣は目が覚めていたようだった。僕はベッドに寝たまま上半身を起こした剣を見た。

「剣、やっぱりきたんだよ……やっぱり殺しに来たんだよ……」

「静かに。三国はここに居て。」

「待ってよ、剣。」

 僕の兄、最上剣は僕の声を無視して一階の方へ下りて行ってしまった。

 僕は剣のことを心配しながらも、自分の隠れる場所を探した。でも、周りに僕が隠れられるようなスペースはなかった。代わりに僕は二階の窓を開けておいた。いざというときに剣と僕が外へ脱出できるように……。

 下から怒鳴り声が聞こえた。何か食器が割れる音も。そのうち階段を駆け上がってくる足音が響いてきた。僕は戦慄した。

 黒い人影が僕の部屋に侵入した。

 月明りに照らされて見えた顔は剣のものだった。口と左腕から血を出している。

 剣は急いで部屋のドアを閉め、鍵をかけた。

 直後、ドアのほうからドアを壊そうとする音が聞こえてきた。

「剣、大丈夫……?」

 剣の息は荒かった。眼の中の恐怖で瞳孔は開ききっている。剣が僕の方へよってきて、僕のことを抱きしめた。


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