最後の恋 5
「ええ、今日はここら辺にしときますか。このミッドウェーの会戦はでますから覚えといてください。それでは解散」
はぁ〜。
先生が授業を終えると一気に脱力の煮汁が漏れ(もれ)だした。そして僕も漏れ(もれ)た人の一人だ。かなり厳しかった。
そして、僕はノートを片付け始めた。さっさと帰るために。
だが、僕の机の下からにょきっと美春が頭を出した。
「ふふふ、逃がさないよ。一樹。昼食の時は時間がなくてほとんど聞けなかったけど、今回はそんなこといかないんだからね!さあ、すっかりはいてもらおうか!?彼女といて何を感じたのか!?彼女の声を聞いたときどう思ったのか?そして、彼女に声をかけようとしたときにその胸の高鳴りを私に聞かせておく…………ぐえ!」
僕は妄想が昂ぶって(たかぶって)爆撃をし続けてる乙女機、別名化けキノコを踏みつけて、光に言った。
「悪い、光。今日はつかれているから先に帰るわ。最近、つきあいが悪くてごめんな?まああとで埋め合わせをするから」
それに光はシアノバクテリアのような鷹揚さの中に光をきらりとした笑みを見せていった。
「ああ、別に良いよ。一樹があの東堂院に興味を持った、それだけで十分興味深いしな。競争が激しいと思うけど、がんばれよ」
「別にそんなんじゃないけどな」
そう、ぽつりと言ったら、美春がキツネのようにめざとく言葉を拾った。
「そんなんじゃないって……………。じゃあ、どうなの?好きなんじゃないの?」
プレッシャーを感じさせるような真剣さで美春は僕の前にずずっと寄った。僕はそれに横に流されるように美春の体から斜めの方向に向いて言い訳するように言った。
「いや、だから。ちょっといいな、と思っただけでまだ恋をしたか確定的なことは言えない。まだ、僕は彼女のことなんて全然知らないし、これが恋とは思うのは早急だと思うから、……………だから、まだ好きな人として見れないんだよ」
しかし、美春は自分の視界を埋めるように、前のみに進み続けた。
「いや!そういうちょっとした良い、こそが恋!そのちょっとだけあれば十分なの!しかも、私たちはもう受験の年だし、行動をするなら今のうちにするしかない!だから今こそ行動すべきよ!一樹!」
「うん、まあ…………そうかもね」
猪突猛進してくるカブトムシに僕は曖昧に受け流した。その灰色のうなずきをしたまま、薄くのばしながら僕はその場から離れた。